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尊敬語・謙譲語と日本語の定型的な言い回し
日本語はそのルールや規則以外にも、「詫びさび」や「奥ゆかしさ」「謙遜」といった独特の暗黙の了解のようなものが存在します。その複雑さから、日本語は世界の中でも困難な言語のうちのひとつと言っても過言ではないでしょう。
尊敬表現と謙遜表現
【例】
・(尊)ご怜息様⇔(謙)愚息
・(尊)貴社⇔(謙)弊社
・(尊)能文⇔(謙)拙文
シーン別の定型の言い回し
【例】
・つまらないもの(お口汚し)ですが (贈り物を渡すとき)
・不束者ですが (自分の子供などに使う)
「つまらないもの」としつつ実際は吟味して選んでいるし、「ふつつかな娘ですが…」と言いながら自分の子に対して本心ではないことが多いです。そんな言い回しのひとつに「お気遣いなく」という言葉があります。今回はこの「お気遣いなく」というセリフについてその意味や使い方をご紹介していきます。
「お気遣いなく」の意味
き‐づかい〔‐づかひ〕【気遣い】の意味
出典:デジタル大辞泉(小学館)
1 あれこれと気をつかうこと。心づかい。「どうぞお気遣いなく」
2 よくないことが起こるおそれ。懸念。「情報が漏れる気遣いはない」https://dictionary.goo.ne.jp/jn/52813/meaning/m0u/%E6%B0%97%E9%81%A3%E3%81%84/
「お気遣いなく」の使い方とポイント
お願いする時
そのため、この時の「お気遣いなく」は、拒絶や断りの意はなく「ありがとうございます」と同等レベルの返しと言えます。「ありがとうございます。これ以上のお気遣いは結構ですよ」といった、相手を思いやる気持ちを短く凝縮した一言です。
先回りしすぎてお茶の準備を始めた段階でこう言ってしまうと、厚かましい印象がありますので、お茶を出された時や聞かれた時など相手からアクションがあったときが、使うタイミングでしょう。
断る意味での使い方
「いりません」や「送らなくてよいです」などはっきりと断ってしまうと、言われたほうは厳しく拒絶された印象を受けます。「結構です」「大丈夫です」などのあいまいな断り文句と同様、「お気遣いなく」もそのような使われ方をします。回りくどく鬱陶しく感じる方もいるかでしょうが、友人や親しい知人を除いては、自然と使えるようにしておきましょう。
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「お気遣いなく」は目上に失礼な言い方?
・良いお年を(お迎えください)
・お大事に(なさってください)
などのような言葉があります。
「気遣いをする」がもともとの語となりますので、目上にも使える敬語表現にするためには
・「お気遣いなさらないでください」
・「お気遣いないようお願いします」
などが文章では最適です。文頭に「どうぞ」などの言葉を付けると、より柔らかな表現になります。
「お気遣いなく」の類義語と使い分け
お構いなく
断るときの使い方として「お気遣いなく」にかぶせて使うことで協調することも可能です。「お気遣いなく、本当にお構いなく」まで言われれば相手も引くことができるでしょうから、歓迎が熱烈すぎて困ったときは同時使用も効果的です。
迎え入れる側が謙遜する表現として「お構いもしませんで」というのも定型です。
お気になさらず
【例】
・「こないだは急な発注でごめんね」⇒「どうかお気になさらないでください」
・「面倒な仕事だけどよろしく」⇒「問題ありませんので、どうぞお気になさらずに」
結構です
「結構です」はYESかNOかわかりにくいため、あまり使わないほうが良いとする意見もありますが、前後の文脈や態度などで大抵は判断ができるでしょう。手を前に出したり、首を振るなどのジェスチャーを交えてあげると、わかりやすく丁寧です。
シーン別「お気遣いなく」の使い方と例文
お祝い
「ありがとうございます、どうかお気遣いなく」程度の返答にとどめておきます。相手が本気であれば、後日日程などの打診がありますし、社交辞令であればあなたの「お気遣いなく」を聞いて安心して引いたと考えてください。
お祝いとしてプレゼントなどを渡された場合は、断るのは失礼ですので「お気遣いなく」よりは「お気遣いいただいてしまってすみません、ありがとうございます」などありがたく感じている形に変換しましょう。
お返し
お祝いに食事会などの際、「今日はありがとう、今度お返しするね」などの会話があった時に「ほんとに?ありがとう」と返してしまうと、相手は「お返ししなくては」と考えてしまいます。相手に気を遣わせたくなければ「お気遣いなく、そのうちにね」など、「お返しはなくてもかまわない」くらいのニュアンスを含んだ返答がスマートです。
お礼・礼状
いつも行くたびにいろいろなものを用意されて申し訳ない、ということであれば「次回はどうぞお構いなく」などやんわりと添える程度にしておきましょう。
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お土産
お中元・お歳暮
お中元やお歳暮は「気遣い」というよりも「お世話になりました」という意味合いですので遠慮のし過ぎは逆効果です。
お茶
しかし、それを当たり前とするのは失礼ですので、一言「お気遣いなく」というだけでお茶を出すよう指示した人、そして実際に淹れてくれた人の労を労うことができます。「ありがとうございます」「すみません」と言う人も多いですが、より日本的な奥ゆかしい表現ですのでぜひ使ってみてください。
差し入れ
取引先から「差し入れ」といただくときは、相手があなた(あなたの会社)のことに親しみを持ってくれている証拠です。「喜んでほしい」という気持ちから行う人が多いので、畏まって遠慮しすぎるよりは、素直にうれしい気持ちを出したほうが喜ばれるでしょう。
あなたがその集団をまとめる立場(店長や部長など)であった場合は、「お気遣いありがとうございます、みんな喜んでいます」と丁寧にお礼を伝えましょう。
メール・手紙の「お気遣いなく」の書き方と例文
【例】
・「どうぞお気遣いなさらないよう お願い申し上げます」
・「くれぐれもお気遣いなさいませんよう お願い申し上げます」
・「どうかお気になさらないでください」
・「お気に留められませんようお願い申し上げます」
「お気遣いなく」を使ってスマートに感謝を伝えましょう
言葉も大切ですが、まずは相手に感謝が伝わるよう、自分なりの「お気遣いなく」の使い方を確立できると良いでしょう。