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「ずっと」の敬語表現に使える言葉は?
副詞「ずっと」はよく使われる言葉ですが、4つの意味が存在しています。1つ目は「他と比べてかけ離れている」で、「ずっと大きい・ずっと先」といった形で使用されます。2つ目は「同じ状況が長く続いている」で、「ずっと考える」などの形で使います。
3つ目は「ある範囲内に残す所なく動作を及ぼす」で、「書類にずっと目を通す」などの形で用います。4つ目は「躊躇わずに・滞らずに動作する」で、「最後の飴をずっと取る」などの使い方ができます。「ずっと」は、どちらかと言えば「話し言葉」になるため、口頭で使うことが多いとされています。
いくつかの意味を持つ話し言葉「ずっと」ですが、敬語表現にするとどういった形になるのでしょうか。話し言葉であり、敬語表現でもない「ずっと」を敬語表現にするとどうなるのか、書き言葉にするならどういった表現を用いれば良いかなどを確認しておきましょう。
永きに渡り
「永き」の部分は、「長き」でも問題ありません。また、長い期間と書く「長期」という言葉を用いても良いです。「永き・長き」は時間的な長さを表しており、その時間的な長さの程度が大きいことを意味します。よって、「永き・長き」と「長期」は同じことを表していることになります。
「渡り」というのは「渡る」を連用形にしたもので、この言葉にはいくつかの意味が存在していますが、ここで使う「渡る」には「年月が経つ」の意味が込められています。「永き・長き・長期」は「時間的な長さの程度が大きい(長い時間)」を表しているので、「年月が経つ」の「渡り」と組み合わせると、「長い時間が経つ(経っている)」の意味になります。
敬語表現にする時には「永きに渡り行ってきました」など、敬語としての意味を持つ言葉と結び付けます。意味としては、「ずっと」が持つ「同じ状況が長く続いている」の意味と同義です。
長らく
「永らく」の漢字でも、問題はありません。「永きに渡り」と同じ意味で、「長い時間が経っていること」を表しています。敬語表現にする時も「永きに渡り」と同じように、敬語としての意味を持つ言葉と結び付けて使います。
長々と
「長々と」は「永々と」とは書きません。「長々」と書くことが正しいとされます。意味は「長らく・永らく」と同様ですが、「永きに渡り」や「長らく・永らく」の方が経過している時間が多い印象を受けます。その印象になる理由は、「長々」は数時間程度のことを表す時にも使用されるのに対し、「長らく・永らく・永きに渡り」は年単位のことを表す時に使用することが多いからです。
延々と
「延々と」は「続く」の意味とよく似ており、イメージとしては「続ける状態で時を経過していく」ような感じです。上記の敬語表現として使える言葉たちと同じく、「ずっと」が持つ意味「同じ状況が長く続いている」と同義として扱えますが、「延々と」は「事物」の様子を表すことを含む強い印象を持ちます。
「長々と」は、どちらかと言えば「時間」のことを表している印象が強いです。一方の「延々と」はどちらかと言えば「事物」のことを表している印象が強く、「何かが長い時間存在する」ことを含んだ表現をする時に用いられることが多いとされます。
たとえば、「長々と話している」では「長い時間が経過している」意味合いが主体になり、「延々と話している」では「話が終わらない」意味合いが主体となっている印象を受けます。
常に
「常に」は「いつも」と同義で、「ずっと」の「同じ状況が長く続いている」の意味と似たことを表す言葉です。「時間の経過」を表す意味も含みますが、印象としては「時間の経過の中で消えずに存在するもの」が主体です。簡単に言えば、「時間」よりは「その時間に関係したもの」が意味の主体になります。
たとえば、「長々と行っていた」は「行う時間が多い」意味の印象が強くなり、「常に行っていた」では「行うことが存在し続けた」意味が強いです。つまり「常に」は、「時間が経過する」ことを示す中で「時間の経過の中にある行動・様子などを主体として伝える」時に使います。
意味だけで見れば、使い方は「ずっと」と同じと言えます。しかしながら、「ずっと」は話し言葉です。話し言葉を文面、特にビジネスシーンでの文面で使うことは避けたいため、改まった場での文面には、書き言葉として使える「常に」を「ずっと」の代わりとして使いましょう。
継続して
「継続して」の「継続」は、「継ぎ続く」と書くように「あることが長い時間存在している」ことを表しています。多くは「行動・様子」に対して使用される言葉です。意味としては「常に」とよく似ているため、「ずっと」の言い換えにも使えます。また、「常に」と同様に書き言葉としても使用可能です。
以前から
「以前から」は、「ずっと」が持つ「他と比べてかけ離れている」の意味と似た表現です。「時間」の意味を含むために「あることが長い時間存在している」と同じ意味だと思われやすいのですが、「以前から」は「他と比べてかけ離れている」の意味と似ます。そう言える理由は、「以前」は「今という時から離れた位置にある時」だからです。
「あることが長い時間存在している」の意味では「時間の途切れ」がありませんが、「他と比べてかけ離れている」には「かけ離れる」とあるため、「時間の途切れ」があります。「その時・行動・様子などが存在し続ける(長々)」なのか、「今と離れた時間(以前)」を表すのかの違いです。
「以前から」はビジネスシーンでも問題なく使えるほどの言葉ですが、少し堅い感じを軽くしても良いのであれば「前々から」でも良いでしょう。ただし「前々から」は話し言葉の印象があるため、使用時には気を付ける必要があります。
はるかに
「はるかに」は、「ずっと」の「他と比べてかけ離れている」と同じ意味を持ちます。「はるか」は「遠いところ」を意味するため、「以前から」と同様に「今と離れた時間」を表す時にも使えますが、「今いる位置から見て遠くにある位置」を表す時にも用いることができます。
隅から隅まで
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「隅から隅まで」は、「ずっと」が持つ「ある範囲内に残す所なく動作を及ぼす」の意味と同義です。「隅」というのは「空間内の端」のことで、四角い箱があるとすれば、四角の輪郭が出ている部分が「隅(または、端・枠など)」と言います。一般的には「端」の中でも「角」を表す時に「隅」を使うことが多いです。
「隅から隅まで」は言い方を換えれば「角から角まで」であり、簡単に言えば「全体的に」の意味です。「隅から隅まで」は「くまなく」といった言葉に言い換えることもでき、これは漢字にすると「隈なく」になります。意味は、「隅から隅まで」と同じです。
躊躇わずに
「ずっと」が持つ意味の中では、一般的にはあまり用いられない印象のある「躊躇わずに・滞らずに動作をする」と同義になります。意味に含まれる言葉そのままの表現です。
「ずっと」を敬語表現にする時の使い方!
「ずっと」を敬語表現にする時の使い方を見ておきましょう。
敬語の種類
敬語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語があります。丁重語と呼ばれる超敬語もありますが、一般的には尊敬語・謙譲語・丁重語の3種類を用います。
「ずっと」を含め、これまでにお伝えしてきた敬語に使える言葉たちは、いずれも「単体で敬語表現としての意味を持たない」ものばかりでした。そのため、敬語表現にする時には「敬語表現としての意味を持つ言葉を結び付ける」必要があります。
たとえば、尊敬語であれば「する」に尊敬の意を込めた言い方「られる・される・なさる」などを使って「ずっと勉強をなさっている」という敬語表現を作ります。謙譲語であれば「している」の謙った言い方「しております」を使って「ずっと勉強をしておりました」という敬語表現を作ることができます。丁寧語の場合は、「ずっと勉強をしていました」などの形になります。
使い方
まず、「ずっと」は話し言葉の印象が強いため、口頭で使い、文面では使わないようにすると良いでしょう。口頭というのは、会話のことです。声を出して伝える時に向く言葉が話し言葉であり、改まった(きちんとした)印象が高くないものが多いため、ビジネスシーンのような改まった場ではあまり使わない方が良いと言えます。
書き言葉は、文面でも使える言葉のことを言います。書き言葉は改まった印象があるものが多く、ビジネスシーンなどの改まった場で使用しても問題ありません。「ずっと」の書き言葉として適しているのは、「常に」と「継続して」です。
「他と比べてかけ離れている」の意味で「ずっと」を使いたい時には、「はるかに」や「段違い」になどを使うと良いでしょう。また、ここでご紹介した「ずっと」を敬語表現にする時に使える言葉にとらわれることなく、その状況に合わせた言葉を用いることも大事です。
メールではどう使えば良い?
話し言葉とされる「ずっと」の使用は避け、書き言葉としても使える「常に・継続して」などを用いましょう。
ビジネスシーンではどう使う?
「ずっと」は敬語表現とは言えない・改まった印象のない言葉なので、敬語表現を要するビジネスシーンでの使用は適していないと言えます。「ずっと」と結び付ける言葉が敬語表現としての意味を持っていたり、伝える内容の中に敬語表現が含まれていれば「ずっと」を使っても問題はありませんが、使用回数は少ない方が良いでしょう。
「ずっと」を敬語表現にした際の例文!
「ずっと」には4つの意味が存在しますが、一般的に「躊躇わず・滞らずに動作する」の意味ではあまり使用されません。そのため、「躊躇わず・滞らずに動作する」の意味で「ずっと」を使うと、伝えたい意味で伝わらない可能性もあります。
例文に使う意味から「躊躇わず・滞らずに動作する」は省き、一般的に使われることが多い「他と比べてかけ離れている」と「同じ状況が長く続いている」の意味を使った例文をご紹介していきます。
意味「他と比べてかけ離れている」の例文
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「今よりずっと以前の話」という例文では、「時間」的な「かけ離れている」を表しています。「今の時」と「今よりかなり前の時(以前)」を比べて、その2つがかけ離れた位置にあるということです。
「開発当初は今の型よりもずっと大きい型でした」という例文にした場合は、「サイズ」的な「かけ離れている」を表しています。比べているのは「現状の製品サイズ」と「開発当初の製品サイズ」で、現状サイズよりも開発当初サイズの方がとても大きかったことを示した例文です。
「当社の工場はここからずっと先にあります」という例文にした場合は、「距離」的な「かけ離れている」を表しています。「会社の位置」と「工場」の位置を比べており、一本道だけども工場は会社から遠くのところにあることをイメージした例文です。
意味「同じ状況が長く続いている」
例文としては、「ずっと考えております・ずっと作業を行っています・ずっと雨が降っています」などがあります。これら例文で「同じ状況」に当てはまるのは、「考えること・作業をすること・雨が降ること」になります。それらが存在する時間が長いことを意味した例文です。
「ずっと」を別の敬語表現にできる?その例!
別の表現もあります。それぞれ敬語表現としての意味を持つ言葉を結び付ける必要がありますが、表現のらレパートリーを増やすためにも確認しておきましょう。
他と比べてかけ離れている
「ずっと大きい」の形で使う場合は、「ずっと」の部分を「とても・はるかに・格段に・段違いに」などの言い換えることができます。「ずっと以前の話」の形で使用する際は「昔の・遠い日の・はるか以前の」などに言い換え可能で、「ずっと先にある」の形の場合は「ここから離れた先・大分離れたところ」などに言い換えても良いでしょう。
同じ状況が長く続く
「ずっと考えている」の場合は「◯◯の間中考えている・朝から晩まで考えている」などに言い換えることができ、「ずっと家にいた」の使い方をした場合は「その間は」などを状況に応じて使えます。
ある範囲内に残す所なく動作を及ぼす
「広い図書館をずっと探しまわる」では、「隅から隅まで・くまなく」の言葉を代わりに使えます。「街中をずっと見まわる」であれば「全体的に」などの言い換えも用いることができます。
躊躇わず・滞らずに動作をする
動作内容にもよりますが、「足を止めずに・手を止めずに・遠慮せずに」などに言い換えることができるでしょう。
ビジネス上では「ずっと」を敬語表現にすることも必要!
「ずっと」や同義となる言葉たちの中には、敬語表現としての意味を持つ言葉はありません。そのため、いずれの言葉にしても「敬語表現としての意味を持つ言葉を結び付ける・含めて使う」必要があります。「ずっと」はビジネスシーンにおいて使えないことはありませんが、話し言葉の印象が強いため、文面で「ずっと」の意味を伝えたい時は「常に」などの言い換えを用いた敬語表現を使うと良いです。