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普段の生活で私たちは「持つ」という行為をします。それはものだけでなく、興味などの気持ちであったり様々です。でも、この「持つ」という言葉、敬語は大丈夫ですか。今回はこの「持つ」についてご紹介します。では早速見ていきましょう。
「持つ」の敬語表現
まずは「持つ」の敬語表現を見ていきます。ここでは敬語の基本の尊敬語、謙譲語、丁寧語の3つをご紹介していますのでしっかり見てください。
尊敬語
「持つ」の尊敬語は「お持ちになる」もしくは「持たれる」です。尊敬語は相手や第三者の行為や状態などについてその人を立てて述べるものです。例えば、「社長が本をお持ちになる」の場合ですと、社長という相手を立てていることになります。
では立てる相手は誰でもいいのでしょうか。一般的に目上の人が立てる相手になりますが、目上の人を立てない場合もあります。それは「うち」と「ソト」の関係により、社外の人に対しては「社長が本をお持ちします」のように社長の行動に対しては尊敬語を使わなくなりますので注意してください。
当たり前のことですが自分の行為などを立てるということはしません。「私が本をお持ちになる」とは言わないです。自分の行為についてはへりくだって言いますので謙譲語を使います。
謙譲語
「持つ」の謙譲語は「お〜する」のかたちを使う「お持ちする」です。謙譲語には2種類ありますが、「お持ちする」は謙譲語Ⅰにあたります。これは自分の行為などが向かう相手を立てる表現です。「先生のカバンをお持ちする」の場合だと自分の「カバンを持つ」という行為は相手に向かってする行為です。ですからいくら自分がする行為だからといってハンカチを持つことを「私はハンカチをお持ちする」とは言いません。
丁寧語
「持つ」の丁寧語は「持ちます」です。丁寧語は文章を丁寧に表現する役割があり「です」、「ます」を使います。丁寧語は自分の行為や相手の行為にも使えますし、「私がお持ちします」のように他の敬語と組み合わせて使うことができます。
「持つ」の敬語での使い方
ここまで「持つ」という言葉の敬語表現をご説明しましたが、「持つ」は敬語表現になると通常の意味だけでなく、新たな意味も加わってきます。ここではそれらを紹介しつつ、使い方についても説明していきます。
敬語の種類
「持つ」という言葉はどのように使われているのでしょうか。
例文:「恐れ入りますが、当日は筆記用具をお持ちになってください」
「部長、書類を会議室までお持ちします。」
例文のように様ざまな場面で使われますが、その意味に注目すると単に「持つ」ということだけではないことがわかります。
尊敬語:お持ちになる
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「傘をお持ちになってください」を単に敬語を使わない表現に直すと「傘を持ってください」ですが、これは本来言いたいことではないです。「傘を持ってきてください」が本来言いたかったことです。「お持ちになる」には「持ってくる」という意味が加わっています。
また、「当館の案内図はお持ちになりますか」などのように使うこともあります。これも「案内図を持つ」という意味ではありません。「案内図を持っていく」という意味で使われています。以上のように「お持ちになる」は本来の「持つ」という意味に加え「持って来る」と「持って行く」の意味でも使われます。
謙譲語:お持ちする
謙譲語の「お持ちする」も「持つ」の意味に加え「持って来る」と「持って行く」の意味を含んでいます。「資料を会議室までお持ちします。」は「資料を会議室まで持って行きます。」という意味です。また「お茶をお持ちします」は「お茶を持ってきます。」という意味です。
以上のように、「持つ」を敬語にした場合本来の意味より上記2つの意味を表していることが多いです。それでは実際のシーンでこれらがどのように使われているか見ていきましょう。
使い方
それでは、「持つ」の敬語表現が実際どのように使われているのか見ていきましょう。尊敬語と謙譲語ではそれぞれ使い方が変わってくるため特に注意して見てください。
尊敬語の場合
上記でご紹介しましたが、尊敬語の「お持ちになる」は持ってくるという意味合いも含んでいます。ですから相手に何かを持って来て欲しいときにも使います。よく銀行などから「印鑑とご本人様確認書類をお持ちになってください。」と言われることがあります。これは印鑑とご本人様確認書類を持ってきてくださいということを「持つ」の尊敬語を使って表しています。
また、このようにお願いをするときは「恐れ入りますが」などのクッション言葉と合わせて使うことが多いです。クッション言葉とは相手とのコミュニケーションを円滑にするための前置きのようなもので、他にも「よろしければ」や「差し支えなければ」などがあります。
謙譲語の場合
謙譲語「お持ちする」の場合は相手に対する気遣いなどに使われることがあります。「先生、カバンをお持ちします。」のように自分の「持つ」という行為が相手のことを気遣っているのがわかります。気遣いの表現をするときは「よろしければ」などのクッション言葉と一緒に使うと、柔らかい表現になってコミュニケーションが円滑になります。また、後ほど説明しますが「お持ちしますか」のように間違った使い方には注意してください。
メールでの使い方
例文:「この度は当セミナーへのお申し込み、誠にありがとうございます。〜中略〜。なお、当日は筆記用具が必要ですので、お手数ですがお持ちになってください。」
「持つ」をメールで使う場面として相手に単純な意味の「持つ」ことをお願いすることはあまり考えられませんので、何かを持ってきてもらうことをお願いするのが多いです。また、相手にお願いする文章なので「お手数ですが」などのクッション言葉を一緒に使うことも意識しましょう。
「持つ」を敬語表現するときの例文
「持つ」はカバンなどのモノ以外にも興味などの目に見えないものにも使います。ここでは様ざまなモノを例文として挙げていますので確認していきましょう。
興味を持つ
・「先生が新しい分野の本に興味をお持ちになっていらっしゃる。」
・「私もその本に興味を持っています。」
責任を持つ
・「先生は仕事に責任をお持ちになっていらっしゃる。」
・「その件については私が責任を持ちます。」
志を持つ
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・「あの方は立派な志をお持ちになっていらしゃる。」
・「私の友人も同じ志を持っています。」
「持つ」の別の敬語表現例
「持つ」は敬語表現になると、その意味が少し変わってくる場合がありました。ですので類似の表現は多いです。下記に様ざまな意味の「持つ」に似た表現をあげました。ぜひ見てください。
持参する
「持ってくる」の敬語表現です。「筆記用具をご持参になってください」などのように、相手に何かを持ってきてほしいときなどに使います。「ご持参いたします」と間違った敬語表現を使っている人がいますが正しくは「持参いたします」が正しい謙譲語です。
ところで、「持参」という言葉は「持って参る」のように謙譲語で使う「参る」という言葉が入っているため、相手の動作に使うのは間違いだという方もいます。しかし文化庁の見解では「持参」の「参る」は謙譲語としての働きはしていないとされ、使用しても問題ないとされています。それでも気になる方は「お持ちください」を使うこともできますのでこちらを使ってください。
間違った表現
日々の生活で間違って使ってしまいそうな表現を挙げました。みなさんも知らないうちに使っているかもしれません。一度確認して見てください。
お持ちしますかの使い方
よく持って行くかどうかを相手に聞く際に「その書類をお持ちしますか。」と言う人がいますが、それは間違いです。これだと「私が持って行きましょうか」の意味になってしまいます。なんとなく正しいような気もしますが、本来は「お持ちになりますか」という表現が正しいです。
なぜこの場合「お持ちしますか」がいけないのかというと動作をするのが自分だからです。「お持ちします」は謙譲語なのでこの場合自分の動作を表しています。ですから「お持ちしますか」と聞けば自分の動作に対する質問なので「持って行きますか」という意味になります。
正しくは、持って行く動作をするのは相手なので尊敬語の「お持ちになる」を使います。「お持ちになりますか」と聞けば相手の動作を聞くことになり意味が伝わります。
お持ちしてください
例えば「雨が降るかもしれないので傘をお持ちしてください」という例文ですが、一見正しいように見えます。これは「持つ」の前に「お」が付き、かつ文末に「ください」を使っているため正しい敬語だと感覚的に思ってしまうからです。
しかし、よく見てみると「お持ちする」という謙譲語が使われていることに気づきます。謙譲語は自分の行為などが向かう相手を立てる表現ですから、こちらは相手の動作に謙譲語を使った間違った敬語表現です。この場合相手の「持つ」という動作を尊敬語にしますので、正しくは「お持ちになってください」と表現します。
お持ちになられる
これは尊敬語が二つ重なった「二重敬語」です。二重敬語とは一つの言葉に同じ種類の敬語を2つ使うことです。この場合だと「お持ちになる」と「られる」の2つの尊敬語が組み合わさっています。正しくは「お持ちになる」もしくは「持たれる」です。このパターンは他の言葉でもよく間違って使われているので注意してください。
お持ちいたしますは正しい?
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「お持ちいたします」は謙譲語の「お持ちする」と同じく謙譲語の「いたす」が合わさっています。それゆえ二重敬語ではないかと思われている方もいますが、「お持ちいたします」は二重敬語ではなく正しい敬語です。
謙譲語Ⅱとは
謙譲語Ⅱとは自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもので、「いたす」は「する」の謙譲語Ⅱです。他には行く、来るの謙譲語の「参る」や言うの謙譲語の「申す」なども謙譲語Ⅱとして認識されています。例えば「明日は京都へ参ります」と言ったときは自分の行為を改まった言い方にしています。決して自分の行為が向かう先の京都を立てている訳ではありません。
同じ謙譲語でも謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱは違う種類の敬語と言えますので「お持ちいたします」は二重敬語ではなく正しい敬語表現だと言えます。
どんどん使っていこう!
今回は「持つ」の敬語表現についてご紹介しましたがいかがでしたか。今までと違って敬語表現をしたときに本来の「持つ」の意味に加えて他の意味合いを表すようになったりと少し特殊でした。また、間違いの例文も最初は違和感を感じなかった方も多かったのではないでしょうか。ですがこの記事に書いてあることを理解したあなたはきっと大丈夫です。普段の生活でもどんどん「持つ」の敬語表現を使っていけるでしょう。もしまだわからないことがあればもう一度読み返して見てください。この記事がみなさんのお役に立てることを願っています。