[allpage_toc]
敬語「耳に入れる」の意味は?
敬語の表現では耳に接頭語の「お」をつけて「お耳に入れる」とし、謙譲の敬語表現として用います。「耳に入れる」を丁寧な敬語の形にした「お耳に入れる」がそもそも「知らせる」謙譲の形の敬語です。
お耳に入れるは、「正式な話の前に、知らせたい情報」を目上の人に伝える場合に使います。多く「あまり良くない話」に用いられます。また「自分の利益のために、相手に情報を開示し思うとおりに動かす」という、テレビ時代劇の影響でついてしまったイメージもあるため、なかなか使いづらい表現になっています。
知らせる
目上の人に「お耳に入れたいことがあります」を用いる場合には、クッション言葉として「すでにお聞きおよびでしょうが」を前に組み合わせると、とても聞きやすく、かつ話の内容に注意を引くことができます。
耳に入るはまた別な慣用句
「耳に入る」は偶然、聞こえてきたことに用いられます。耳に入るは、「聞く」の尊敬の敬語になり、「お耳に入っているかと存じますが」と言うように、耳に入れたい事情を説明する前座的な役割をし、話に耳を傾かせる働きもします。
耳に入るは「聞きおよぶ」と言うニュアンスが強く、同じく自然に聞いたことを表す「耳にする」とはまた別な表現です。「耳に入る」は「噂が耳に入る」「悪い所業が耳に入る」など、ネガティブな情報を聞くときに使われることが多い慣用句です。
敬語「耳に入れる」の使い方
敬語の種類
また、「言う」や「聞かせる」の謙譲の敬語表現にも使用できます。「言う」は尊敬語で「おっしゃる」、謙譲語では「申す」「申し上げる」が一般的です。しかし「お耳に入れる」も同じように「言う」の謙譲の敬語表現として用いることができます。
使い方
使う場合には「耳に入る」と混同しないよう注意が必要です。耳に入るは「(噂などが)偶然に聞こえる」というように、よくないことが聞こえてくる、知らされるという場合に使われます。
「耳に入れる」は「言う」の謙譲の敬語表現ですが、同じく謙譲の敬語表である、申し上げるが公衆の面前で言うことを表すなら、耳に入れるは「内々の事情を(こっそり)知らせる」とまた「耳打ちする」といったニュアンスがあるため、適当な場面で使うことが好ましいです。
ビジネスでの使い方
メールで同じニュアンスを使いたいのであれば、「お知らせがございます」や「ご報告がございます」の方がしっくりときます。
内々の情報を、上司に知らせたい場合には、「お知らせしたいことがございます」と言っても間違いではないですが、「お耳に入れたいことがあります」とすると、さらに相手の注意を引く効果も期待できます。耳に入れるは「こっそりと」「秘密裏に」と言う印象もあるため、相手の気を引く手段としては、最大限に力を発揮してくれるでしょう。
耳に入れるは「姑息」と取られることも
耳に入れるは正式な謙譲の敬語表現ですが、主に時代劇の悪代官と悪商人の闇取引の場面で使われた影響でこのような黒いイメージがついてしまいました。本来は「姑息な手段」と言う意味はありませんが、ついてしまった言葉のイメージはなかなか払拭できません。
そのためたとえ必要な情報を、上司の耳に入れる場合にも「お耳に入れる」は使わない方が無難でしょう。その場合には「お伝えしたいことがございます」「お知らせしたいことがございます」などの他の敬語の表現を用います。
敬語「耳に入れる」の例文
また耳に入れるは、「悪いことを伝える前振り」とイメージがあります。本来はそのような意味はありませんが、深刻な顔で、「ちょっとお耳に入れたいことが」と切り出すと、相手も「嫌なニュースか」と身構えてしまいますので、使う際には注意しましょう。
しかし耳に入れるは「話に注意を引く」「深く耳を傾ける」という作用もあります。上司にぜひとも聞いてほしい話がある場合には、あえて使ってみてもいいでしょう。
「耳に入れる」の例文
・「お耳に入れておきたいことがございます。少しお時間よろしいですか」
[no_toc]
耳に入るとの混同を避けましょう
耳に入れたい情報の前座的を狙い、話に注意を引くための使い方でしょうが、その場合には「もうお聞きおよびでしょうが、お耳に入れたいことがございます」や「すでにお聞きになっているでしょうが、お耳に入れたいことがございます」と、耳に入るの言い換えである「聞きおよぶ」を用いて、話に注意を引きましょう。
「耳に入る」は偶然に聞くことを意味し、「耳に入れる」は「知らせる」と言う意味です。似ていますが、意味は違います。この二つの「耳」に関する慣用句の使い方を混同しないように注意しましょう。
「耳に入る」の例文
・「誰がお耳に入れたのですか?」
・その情報はすでに耳に入っております。
「耳に入れる」の別の敬語表現
お知らせする
伝える
この場合の報告とは、知らせ告げることを表し、状況や結果を述べることを言い、連絡は、関係の人に情報を伝えることを表します。報告は、目下が目上に経過や結果を知らせることで、義務になります。連絡は簡単な情報を関係に伝えることで、自分の考察や憶測は入りません。報告が、部下から上司へという形に対し、連絡は誰でも発信源、受信側になります。
また取引先などの「ソト」に使う場合には、同じ意味の敬語表現「申し伝える」を使います。
耳に入れるは、耳を傾けてもらうこと
もともと悪い意味はなかったはずですが、時代劇などで、悪役が密談する際に使われていた言葉なので、このようなイメージについてしまいました。また同じイメージで、自分の利益になるように情報を相手に伝えると言った黒いイメージもあります。
これらのことから「耳に入れる」と言う表現は、正式な敬語であるにもかかわらずあまり用いられません。そのためあえてこの慣用句を使うよりもストレートに「お伝えしたいことがあります」や「お知らせしたいことがあります」と伝えた方が、スマートです。
しかし耳に入れるは古くからある言葉で、控えめな印象の奥ゆかしい言葉です。できれば上手に活用したい言葉です。