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「接する」の敬語表現
「接する」という言葉は「人にあったり、人と付き合うこと」や「二つのものが間を置かないで隣り合うこと」などを意味する言葉です。この言葉を敬語で使うときには、最初にあげた「人にあったり、人と付き合うこと」という意味で使います。それでは、この「接する」という言葉は、敬語ではどのように表現するのが正しいのでしょうか。
尊敬語で表現すると
尊敬語で「人と接すること」を表現するには、「お近づきになられる」という表現をします。「近づく」とは「ある人が意図的に誰かと親しくなること」を意味する言葉です。この言葉に敬語の丁寧語にあたる「お」という言葉と、「なる」の尊敬語「なられる」をつけて、「お近づきになられる」という表現をします。
丁寧語で表現すると
丁寧語で「接する」を表現すると「接します」という表現になります。尊敬語のときのように、「お」をつけて、「お接します」とは言いません。丁寧語は「単に丁寧な言葉遣い」であるため、「接する」の「する」を、丁寧語の「します」に置き換えるだけで、敬語の表現になります。
「接する」の敬語での使い方
それでは、敬語で「接する」という言葉を使うときの、使い方について詳しくみていきましょう。
敬語の種類
「接する」という言葉の敬語での表現について詳しくみていく前に、敬語の種類についておさらいしておきましょう。敬語の種類についておさえておくことで、「接する」という言葉の敬語での使い方についても、理解しやすくなります。
丁寧語
丁寧語は敬語の中でももっともよく使われる言葉遣いです。丁寧語は「誰にでも失礼なく使える単に丁寧な言葉遣い」のことで、「ですます調」や「美化語(お茶の「お」やご馳走の「ご」など、言葉に付いてその言葉を丁寧にする言葉)」などがその例に挙げられます。
丁寧語は「単に丁寧な言葉遣い」であるので、日常生活でもかしこまった場面でも使うことができますが、目上の人に対して使う場合には敬意が足りない言葉遣いでもあります。したがって、目上の人に対して敬語を使う場合には、丁寧語を基本的に使いつつ、必要に応じて次項から説明する「謙譲語」や「尊敬語」を使うべきであるといえます。
謙譲語
謙譲語は「自分や自分に関係すること、もの、人、動作について、あえてへりくだっていう言葉遣いのこと」です。「存ずる」や「いただく」といった言葉が、謙譲語の例に挙げられます。謙譲語は「自分に関することをへりくだって(自分の立場を低く見せる)いう言葉遣い」ですので、「自分について謙遜して述べる」ときの言葉遣いであるといえます。
そのため、目下の人や同じ立場にいる人に対しては使いません。目上の人に対して自分のことを述べるときに使います。また、目上の人に関わることに対して謙譲語で表現してしまうと、「目上の人の立場を低くみている」という意味になりますので大変失礼です。謙譲語は「自分に関係することに使う言葉遣い」と覚えておきましょう。
尊敬語
尊敬語は「目上の人や目上の人に関する人や物、こと、動作に対して使う言葉遣い」のことです。「お思いになる」や「お納めになる」などの言葉が尊敬語の例に挙げられます。この言葉も謙譲語と同じように、目下の人や同じ立場にいる人に対しては使いません。「自分のことについて述べる謙譲語」とちょうど逆の使い方をする言葉遣いであるといえるでしょう。
敬語での「接する」の使い方
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敬語の種類についておさえたところで、「接する」の敬語での使い方について考えてみましょう。まず、丁寧語では「接する」は「接します」という表現になります。これは、上記でも説明したように、丁寧語がその言葉を「単に丁寧にした言葉遣い」であるからです。
特殊なのは、自分について謙遜していう言葉遣いである「謙譲語」と、目上の人について語るときの言葉遣いである「尊敬語」です。どちらの言葉遣いでも、「思う」という言葉が尊敬語では「お思いになる」になったり、謙譲語では「存ずる」と表されるように、言葉によっては別の言い回しになる言葉遣いです。
しかし、「接する」には、謙譲語でも尊敬語でもそのような別の言い回しはありません。それでは、それぞれどのように「接する」という言葉を表現するのか、詳しくみていきましょう。
謙譲語で「接する」という言葉を使うときは
謙譲語で「接する」という言葉を使うときには、「懇意にさせていただく」や「親しくさせていただく」といった表現にします。
「懇意にさせていただく」の「懇意」とは「好意的に接してもらうこと」や「遠慮のなく、親しくすること」などを意味する言葉です。それに、「してもらう」の謙譲語である「させていただく」をつけて、「遠慮なく親しくさせてもらっている」という意味の言葉になります。「親しくさせていただく」と同じ意味であるといえるでしょう。
ここでポイントなのが、謙譲語では「相手から親しくしてもいいよ、といわれている」というような言い回しをするところです。謙譲語は自分について謙遜していう言葉遣いなので、「こちらが親しくしている」という言い方はしません。
また、シンプルに「接してもらった」と言いたい場合には、「もらう」の謙譲語の「いただく」を使って、「接していただいた」と表現することもできます。
尊敬語での「接する」の使い方
尊敬語で「接する」という言葉を使うときには、「お近づきになられる」や「ご懇意になさる」といった表現になります。「敬語での「接する」の使い方」の項の冒頭でお話ししたように、「人と接すること」に対する尊敬語の表現がないため、尊敬語で表現する場合には、「人と接すること」を意味する別の言葉を使って表現する必要があるといえます。
シンプルに、「接してもらった」と尊敬語で言いたい場合には、「もらう」の尊敬語の「くださる」を使って、「接してくださった」と表現するのが良いといえるでしょう。
メールでの使い方
メールで「接する」という言葉を使う場合にも、上記にあげたような敬語の表現を使えば、間違いないといえます。ただし、丁寧語以外の表現は「接すること」という意味を含むものの、「接すること」と全く同じ意味を持つ言葉ではないことに注意が必要です。
例えば、謙譲語の「懇意にさせていただく」や、尊敬語の「ご懇意になさる」は、「人と接すること」という意味を含んだ言葉ではありますが、「親しく、遠慮なく接する」という意味も含まれています。
このように、丁寧語以外の表現では「接する」という意味以外の意味も含んだ表現になることにも気をつけて、その時々にあわせて丁寧語の「接します」を使うなど、工夫をすることが必要であるといえます。
「接する」を敬語表現するときの例文
実際に「接する」という言葉を敬語で使うときには、どのように使うのでしょうか。この項では「接する」の敬語の表現を使ったいくつかの文章を紹介します。文章を読んで、「接する」の敬語の表現を使うときのコツを掴みましょう。
いつもご懇意にしていただいております
「いつも遠慮なく親しくさせてもらっています」という意味の謙譲語の表現です。上記でも書いたように、「懇意」という言葉は「人と単に接すること」と同じ意味の言葉ではないのに注意しましょう。手紙などでよく使われる文章であるといえます。
親しくさせていただいてます
「親しくさせてもらってます」という謙譲語の文章です。謙譲語の表現なので「こちらが親しくしてる」という表現ではなく、「相手の方から親しくしてもいいよ、と許可されていて親しくしてもらっている」というニュアンスのある言い方になっています。
お近づきになられた
「目上の方が誰かと親しくなった、親しくされた」という意味の尊敬語の文章です。新聞などで高貴な身分の方の話題のときなどには、たまに見受けることがある文章ですが、普段はあまり使わない文章、表現であるといえるでしょう。
接してくださる
「接する」を尊敬語で表した表現です。「目上の人から接してもらった」という意味の文章です。このように、丁寧語の「接します」という言葉の「します」の部分を、「くださる」や「いただく」にすることで、シンプルな謙譲語の表現や尊敬語の表現を作ることもできます。
「いただく」は謙譲語で「もらう」という意味の言葉で、「くださる」も尊敬語で「もらう」という意味を持つ言葉です。
特別親しくしてくれている/くれた訳ではないけど、接してもらったというときには、「接してくださる」や「接していただいた」を使うと良いでしょう。
「接する」の別の敬語表現例
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「接する」という言葉は、敬語ではどのような言葉に置き換えることができるのでしょうか。この項では「接する」と似た意味を持つ、別の敬語の表現についてご紹介します。他の表現も知って、その時々にあった表現を使えるようになりましょう。
懇意にする
「懇意にする」は「遠慮なく親しくする」という意味の言葉です。「接する」という言葉の意味の他に、その「接し方や接する様子」も含む言葉ではありますが、この言葉も「人と接すること」を意味する言葉であるといえます。
親密にする
「親密にする」は「親しく、仲良くしていること」を意味する言葉です。この言葉も「懇意にする」と同じように、「接する」という言葉の意味より、さらに「接し方やその様子」についても表現する言葉ですが、「人と接すること」を意味するという点で、「接する」と似た意味を持つ言葉であるといえるでしょう。
「接する」と「交わる」の敬語の違い
「接する」という言葉と似ている言葉に、「交わる」という言葉がありますが、この「交わる」という言葉と、「接する」という言葉はどのような違いがあるのでしょうか。
「交わる」の意味と「接する」の意味
「交わる」とは「行きあうこと」や「関わること」を意味する言葉です。これに対して、「接する」は「二つのことが間を置かず隣り合うこと」や、「人とあったり、付き合うこと」を意味する言葉です。こうしてみると、二つの言葉の意味にはそう違いがないように感じられます。
「交わる」の方が深い関わり方!
言葉の意味としてはさほど違いの見られない、「交わる」という言葉と「接する」という言葉ですが、それぞれの漢字を使った熟語を見てみると、その言葉のニュアンスに違いが見られることが分かります。
「接する」の「接」が使われる熟語には、「接待」や「接客」、「応接」などの言葉があります。これに対し「交わる」の「交」が使われる熟語には、「交流」や「交渉」、「交友」などの言葉があります。
こうして二つの言葉に含まれる漢字を使った熟語を並べてみると、「接する」の「接」を使った「人との関わり方を表す言葉」は、「その場限りの付き合い」である雰囲気がありますが、「交わる」の「交」を使った「人との関わり方を表す言葉」は、「長期的な付き合い」である雰囲気があります。
したがって、人と関わる時の時間の長さの違いがこの二つの言葉の違いであるといえそうです。
敬語を使って上手に人と接しよう!
いかがでしたでしょうか。「接する」の敬語の表現についてご紹介してきました。「接する」という言葉は、日常生活でもビジネスのシーンでもよく使う言葉です。その時々にあった敬語の表現を使って、上手に人と接することができるようになりましょう。