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「デフォルメ」の意味と「デフォルト」との違い|まんが/美術

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デフォルメの意味

デフォルメは本来フランス語の動詞であり、名詞ではデフォルマシオンといいます。意味は「変形・歪曲させる」という意味です。その方向性について限定されることなく使われる言葉です。元々の形から変わっていればそれはデフォルメと言えます。語源はラテン語の「形をくずす」という意味の言葉です。

デフォルメとデフォルトの意味の違い

デフォルメと似た言葉でデフォルトという言葉があります。デフォルトは使われる場面によって意味が変わってくる言葉で金融業界では「債務不履行」、IT業界では「既定値」などという意味合いで使用されますが、日常的に使われる場合は「初期設定」「最初から」というような意味合いで使われます。

またデフォルトは日本人がよくやる省略言葉で「デフォ」と略されますがデフォルメは省略される事がないので、会話の中で「デフォ」と言われたらそれはデフォルトの事だと認識して間違いないです。

どっちがどっちか分からなくなったらデフォルトは「変身前」デフォルメは「変身後」という覚え方をすると意味を間違えずに認識できます。

美術・絵でのデフォルメの意味

美術分野において近代美術において用いられるようになった表現方法で「意図的に対象を変形して表現する事」という意味合いで使われるようになります。「意図的に」というのがポイントで、画家の技術不足や不器用さでバランスが崩れているだけの物はデフォルメされているとは言われません。画家が意図してそうした事が美術世界におけるデフォルメ表現です。

明確な表現方法として確立したのこそ近代美術ですが、その表現自体は古代エジプトの時代に描かれた絵画にも使われているなど歴史の古い表現方法です。

空想や想像を形にした物はデフォルメとは言わない

美術の世界では、悪魔や天使、精霊などが色々な画家によって描かれていますがこれらはデフォルメ表現とは言えません。実在する物ではなく想像上の非現実的な物は元の形から変形するというデフォルメの意味と一致しないからです。

元の形があってこそ初めて変形できるのでその点には注意する必要があります。

漫画・アニメ・イラストにおけるデフォルメの意味

ここまで本来の「デフォルメ」という言葉の意味について紹介してきました。しかし日本で生活していて普段よく耳にするデフォルメはこれとはまた違う意味を持っています。

日本では美術分野で使われてきた「変形させる」という意味合いよりさらに意味を限定し「特徴を誇張する」「対象物の外見的特徴や動作をより大袈裟に表現する事」という意味合いに絞って使われる事が多いです。さらに日本では「簡略化」という意味合いが含まれる事もあります。

外見的特徴のデフォルメ表現

外見的特徴でよくされるデフォルメとして背の高さや体型、顔パーツの比率、髪型などが該当します。

顔の大きさに対して目の大きさが大きいのは日本のキャラクターに多いデフォルメ表現です。また背が低いと言われるキャラクターは同年代と一緒に立っても本当に低く描かれたりするのもデフォルメ表現と言えます。コミカルなシーンをよりコミカルにするために、わざと顔のパーツを簡略化して描くのも一種のデフォルメと言えます。

また動物などのキャラクターをデフォルメする場合、その動物の一番の特徴を意識して描かれている事が多いです。

動作のデフォルメ表現

動作ですと涙を流すシーンなどは典型的なデフォルメ表現です。

波のように流れ続ける涙や目の大きさと変わらないくらい大きな涙の大粒、泣きだす直前の目の下に溜まった涙など、その方法は作品やキャラクター、シーンによって異なりますが実際の大きさのままでは見づらくなるこれらの動作も、より大きく分かりやすく描く事で「泣いている」「泣きだそうとしている」という事をより伝わりやすくするデフォルメ表現です。

またそれ以外にも身体を早く動かしている事を表現するのに、その部位が分身したかのように描かれるのもや渦巻きのように描かれるのも、動作のデフォルメと言えます。本当に分身しているわけでも渦巻きになっているわけでもないのですが、見ている人に「早く動いている」という印象を与える事ができます。

デフォルメと思われがちなデフォルメでないもの

ではデフォルメ表現と思われがちなものを少し紹介しておきます。

一つは「感情」です。キャラクターのバックや目に炎を描く表現方法があります。強い意志を示したりするのに使われる表現方法で一見するとこれもデフォルメ表現のようですが、感情には元々の形がないのでこれはデフォルメ表現ではないです。

先程動作で紹介した涙も感情表現の一つではありますが、これは「涙」という形があるのでデフォルメ表現と言えます。この違いには注意する必要があります。

同じ理由で「性格」も誇張表現はされますがデフォルメとは言えません。また想像上の物はデフォルメされているとは言えない点は美術分野で使われる場合と共通です。

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人型キャラクターはデフォルメ?

ここまで読んでいただくと一つの疑問が浮かぶはずです。ずばり「人型のキャラクター」はどうなるのか、という疑問です。

現実にその人物がいてそれをそのまま描いているわけではないのでこれまで説明させていただいたものを読んでいただいていると、デフォルメではないと答える人も多いはずです。

しかし正解はデフォルメ表現です。確かにそのキャラクターそのままの人がいるキャラクターは極一部です。ですがそれらのキャラクターも全ては「人間」を出発点として描かれています。人間には色々な特徴があり、その特徴を「変形」させて色々なキャラクターは作られています。ですので人型のキャラクターは全てデフォルメキャラと言えます。

日本で生まれたデフォルメのデフォルメ

さらに日本では元々デフォルメされて描かれているキャラクターなどを参考にさらにデフォルメし、2、3頭身のキャラクターとして描き、小さくて可愛い印象を与えようとする表現として「スーパーデフォルメ(SD)」という言葉も生まれました。

スーパーデフォルメは単純なイラストとしてだけでなくグッズ化する際に大きさを一定に収めるために使用されたりもしており、普段生活していても身近に存在する物になっています。また日本では特にサブカルチャー分野においてデフォルメ=スーパーデフォルメという場合もあります。

日本とアメリカでは「デフォルメ」の度合いが違う

アメリカのアニメでもデフォルメは本来の意味である「誇張する」という点においてよく用いられています。

日本のアニメに比べてアメリカのアニメではその特徴をより強調する事に主眼を置いてデフォルメされており、またそこには日本独自のデフォルメである「萌え」な要素はあまりないです。その特徴がより伝わるのであれば頭身を崩しても、人の形を成していなくてもアメリカでは受け入れられるのでそういうキャラクターが多いです。

それぞれの国の価値観が混ざる事なくある程度発展してからグローバル化が進んだのでこのような違いが生まれています。

英語圏ではさらに違う意味に

美術的な表現としての意味の変化だけでなく英語圏で使われるデフォルメ、(英語発音だとディフォームといいます)とはさらに違う意味を持っている事があります。

悪い意味で「元々の形から変わってしまった」「形が損なわれた」などという時に使われる事があります。戦争映画などで戦場で負傷してしまった兵士を表現するのに使われたりします。英語圏の特に実写映画などでこれらの表現が出てきた時には注意が必要です。

デフォルメの意味を正しく使い分けよう

デフォルメという言葉は日常でも使われる程に浸透しています。ですがその意味の幅は広く、使われる場面によっては違う意味を持っている事があります。似た発音の言葉もあり混乱してしまいがちですが意味や発音に気を付けて正しく使い分ける事でより明確に相手に意図を伝える事ができ、また相手の意図を汲み取る事ができます。
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