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「トリップ」の意味と使い方
本来は短い旅行を意味する「トリップ」ですが、いろいろな分野での用語としても使われています。その意味や使い方について、ひとつひとつ見てみましょう。
インバータの「トリップ」とは
電気には、直流と交流がありますが、直流電源から交流電源に変換する装置をインバーターと呼びます。反対に、交流を直流にするのはコンバーターです。
インバータの保護回路が異常を検出し、出力を遮断することがあります。これを俗に「インバータがトリップする」と言っています。インバータがトリップする原因としては、過負荷・過熱・低電圧などさまざまな要因が考えられます。
「ファムトリップ」とは
ファムトリップとは、インバウンド用語で、Familiarization Trip(ファミリアライゼーショントリップ)の略です。観光地の誘致促進を目的として、ターゲットとする国の旅行トレンドへの影響力がある人々、例えば旅行事業者やブロガー、メディアなどに現地を訪れてもらうことを意味しています。下見招待旅行、モニターツアーと呼ばれることもあります。
プロモーションの一環として行われるものですが、対象となる人々に対する情報提供のみにとどまらず、アンケートなどによる意見交換も重要なポイントです。訪日観光客の視点から要望や評価をもらうことで、押し付けではなく相手のニーズに合った観光資源やサービスを提案していく助けになります。
「フィールドトリップ」とは
フィールドトリップ(field trip)は、一般的に「遠足」と訳されますが、単なる遠足とは少し異なり、何か目的があって出かけることを意味します。
そのような意味では、社会科見学や修学旅行などは、まじめに行えばフィールドトリップと呼べるでしょう。また、子どもたちだけでなく研究者などが調査研究のために行う実地見学旅行もフィールドトリップと呼ばれます。行き先は美術館や博物館、歴史的な場所、森林、被災地など、研究の対象となる場所です。
サーマルの「トリップ」とは
サーマルとは、電気設備の中にある安全装置で、過熱を防ぐためのものです。直接の意味は「熱、温度」ですが、熱で変形する金属片が組み込まれており、電流を流し過ぎて過熱が起こると、金属が変形し接点がオンして、回路を遮断するようになっています。サーマルリレーが閉動作したとも描写されます。
最近では電子サーマルといって、流した電流で過熱を予測するようになっています。サーマルがトリップした場合には、小さなボタンを押して復帰させます。ただし、負荷の状態が同じであればまたトリップするため、原因が取り除かれたのを確認してから復帰させましょう。
「ラウンドトリップ」とは
ラウンドトリップ(round trip)の本来の意味は、往復(切符)、周遊(旅行)、回遊、一周などです。航空券用語では、往復旅行のことをラウンドトリップと呼びます。厳密に言うと、往路と復路の運賃が同じで、出発地に戻る旅程でなければラウンドトリップには当たらず、出発地と最終到着地が違う場合はオープンジョー、出発地に戻ってくるが往路と復路の運賃が異なる場合はサークルトリップと呼ばれています。
ITの世界でのラウンドトリップ
ラウンドトリップという言葉は通信やネットワーク・データ伝送の世界でもよく用いられ、通信相手に信号やデータを発信して、応答が帰ってくるまでの過程を意味します。ラウンドトリップにかかる時間のことをラウンドトリップタイム(RTT)といい、ネットワークの応答速度を示す重要な指標として用いられています。
ソフトウェア開発の世界では、同じ工程の反復により完成度を上げていくことを指す場合があります。また、複数のツールを連携させ、一方での編集が自動的に他方にも反映される方式を指してラウンドトリップということもあります。
電気や機械での「トリップ」の意味
電気や機械がトリップしたという場合、一般的には過電流などによる意図せぬ遮断を意味します。また、自動車におけるトリップメーターとは何を指すのか、その意味を見てみましょう。
発電機での「トリップ」とは
発電機がトリップするとは、保護機能が働いて回路が遮断されることを意味します。発電機のトリップに伴う原子炉のトリップ、などという言い方を耳にすることがありますが、遮断されて緊急停止したという意味です。何らかの原因で複数の発電機が一斉にトリップすると、大停電を引き起こすことがあります。
たとえば、風力発電など自然の力を取り入れた発電系統では、一時的に発電量が多くなり、需要よりも供給が大幅に上回る現象が起こり得ます。そうなると、発電機に負荷がかかることを防ぐため、保護回路が発動して複数の発電機が自動的に遮断されます。
一斉トリップが起こると、今度は発電量が足りなくなってしまうため、トリップしなかった残りの発電機に大きな負担がかかります。そのため、それら残りの発電機もトリップを起こし、大規模な停電が起こる可能性があります。
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車などでの「トリップ」とは
車には「トリップメーター」というものがついています。スピードメーターや燃料計、オドメーターなどとともに、メーターパネルについているのを見たことがあるでしょう。オドメーターとトリップメーターはよく似ていて、どちらも走行距離を表示する働きがあります。デジタルの場合「ODO」と「TRIP」を切り替えて表示するようになっているものも多いです。
オドメーターは、車が製造されてから現在に至るまで走った距離の「総合計」を表示するもので、メーターを交換しない限りリセットされることはありません。中古車売買の際に参考にされるのはこの総走行距離です。
一方、トリップメーターは随時リセットすることができます。出発時にリセットすれば、このドライブでの走行距離がわかりますし、ガソリン満タン時にリセットすれば、燃費の計算に使えます。
ネットでの「トリップ」の意味
ネット、特に匿名の電子掲示板の世界では、なりすましによる悪用防止のため、個人を特定する目的でつける暗号化された文字列のことを「トリップ」といいます。本来、パスワードによって投稿者の本人確認を行うことをキャップといいますが、その簡易版という意味で「ヒトリ用キャップ」つまり「トリップ」という用語が生まれました。
交通での「トリップ」の意味
交通における「トリップ」とは、人の移動を意味します。国土交通省が行う「パーソントリップ調査(PT調査)ではトリップを、特定の目的を持った、起点から終点への一方向の移動と定義しています。
また、このような調査では、トリップを移動の単位としても使用しています。実際にはもう少し複雑なのですが、簡略化して説明すると、家から目的地まで徒歩、バス、電車、徒歩という流れで移動した場合、合計4トリップという数え方になります。
このような調査を通して得られるデータにより、交通実態を把握したり予測したりすることが可能になり、将来の都市計画にも役立てられます。
薬での「トリップ」の意味
トリップという言葉は、麻薬や向精神性のある成分が含まれる薬を使用することで起こる、多幸感や陶酔状態を意味することもあります。
さらにここから派生して、必ずしも薬を使用していなくても、恋愛感情による陶酔状態や、芸術家などの自己陶酔状態を指してトリップということもあります。
似たような意味合いとして、非日常へ入り込むこと、例えば映画やゲーム、小説などの世界に入り込んで現実を忘れることもトリップといえます。1日現実を離れてテーマパークで遊んだり、演劇やコンサートでその世界に浸ったりすることもトリップに当たるでしょう。
歴史上、麻薬という言葉は、アヘン剤のことを指していた。アヘン剤とは、モルヒネ、ヘロイン、コデインなど、ケシの実から抽出されるアルカロイドを合成した薬剤のことである。昏迷状態を引き起こす中枢抑制薬であり、酩酊・多幸感などをもたらす一方、強力な依存性があり、身体は急速に耐性を形成する。その依存性の強さから、麻薬の製造や流通は法律で厳しく規制されている。
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%BA%BB%E8%96%AC
おいしい「トリップ」って?
フランス料理などに使われる素材にも「トリップ」があります。トリップ(Tripe)は、英語やフランス語では「家畜の臓物」という意味で、イタリア語では「トリッパ」と呼ばれます。一般的には、おもに第1から第4までの牛の胃袋を指します。日本人の呼び方でいうと「ミノ」「センマイ」「ハチノス」「ギアラ」の総称ということになります。
日本人からすると「モツ」ですが、ヨーロッパでは立派にメインを張れる素材として高く評価されています。新鮮なトリップを上手に調理すると、こってりと脂がのっており非常に美味です。
「トリップ」の意味の語源
「トリップ」は、英語のtripから来ており、字義通りには短い旅行を意味します。上に挙げたさまざまな意味と使われ方のうち、電子掲示板関係のものと内臓料理以外は、英語のトリップから派生・連想された意味であるといえるでしょう。旅行といえば、トラベルやジャーニーといった意味の似た単語もありますが、その中でトリップはどんな位置を占めているのでしょうか。
英語
英語のtripは、短期間の旅行や小旅行のほか、遠足や外出を意味する場合もある語です。そこから、今いる場面から短期間離れたところに行くことも指すようになり、非日常に入り込むことや陶酔状態も意味するようになりました。
一方、英語のトラベル(travel)は、もっと包括的な意味合いのある単語です。大きく旅・旅行全般を指しています。トリップはトラベルの一種であるといえるでしょう。趣味は旅行です、というようなときは一般的にトラベルを使います。
また、英語のジャーニー(journey)は、船旅や当てのない旅など、比較的長い期間の旅を意味します。旅行というより旅という日本語がふさわしいイメージです。
総括すると、トラベルは動詞がメインで旅行すること全般を指し、名詞のトリップとジャーニーはそれぞれ短期間と長期間の旅を意味します。
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トリップの正確な意味を知って正しく使おう
トリップという言葉のもともとの意味と、そこから派生したさまざまな分野での使われ方について理解を深めることができました。短期間の旅行を意味するトリップですが、電機や機械の予期せぬ遮断や、現実を離れて陶酔状態に陥ること、交通実態における人の移動、目的のある遠足など、いろいろな使われ方をしており、ほとんどがもともとのトリップの意味と関連しています。
生活の中で気軽に使えるものから、なかなか使う機会がないものまで、いろいろな意味を持つトリップですが、チャンスがあれば使ってみるのはいかがでしょうか。会話やプレゼンに色彩と説得力を加えてくれることでしょう。