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「食べる」の謙譲語と例文・尊敬語/丁寧語との使い分け

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「食べる」の尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分け

食べることは、生き物の基本的な行動のひとつで、私たち人間は、「食べる」と言う言葉を日常的にとてもよく使って生活しています。日本語には敬語表現があり、自分が食べる時、相手が食べる時によって、言葉は変化します。

他人に対して教養がないなぁと感じる時はどんな時かというアンケート調査では、「敬語の使い方に誤りを見つけたとき」という回答が常に上位にきていることからも、敬語の正しい使い方は社会人に強く求められていると言えるでしょう。

「食べる」の尊敬語は何だろう、謙譲語は何だろう、そもそも尊敬語と謙譲語はどう違うのかなど今さら人に聞けないなぁと延ばし延ばしにしてきた敬語の表現を今一度確認しておきましょう。

尊敬語・謙譲語・丁寧語を簡単におさらい

日本語には敬語の表現がありますが、尊敬語(そんけいご)、謙譲語(けんじょうご)、丁寧語(ていねいご)は、敬語を大きく三つに分けたときの種類です。

尊敬語は、相手を高める時に使います。動作の主体は自分ではなく話し相手で、言う→おっしゃる、見る→ご覧になる、来る→いらっしゃる、などが相当します。

謙譲語は、自分をへりくだることによって、結果的に相手を高める場合に使われます。動作の主体は自分で、言う→申し上げる、見る→拝見する、来る→参る、などが相当します。へりくだるということは、卑しめるということではありません。

丁寧語は、「です」「ます」「ございます」や、「お弁当」「お酒」「お茶」など接頭語として「お」を付ける方法でも使われます。

「食べる」の尊敬語

「食べる」の尊敬語としては、「召し上がる」「上がる」「お食べになる」「食べられる」があります。「食べる」と言う行為は生きていく上で最も大事なことの一つではありますが、その分、本能の部分と直結しているため、「食べる」と言う行為や言葉自体を恥ずかしいと感じる人が少なからずいるのも事実です。

従って、「食べる」の尊敬語の中では、「食べる」と言う言葉を使わない「召し上がる」「上がる」の方が表現が美しく、また敬意の度合いも高くなります。

「食べる」の尊敬語の例文

■冷めないうちにどうぞお召し上がりください。
■さあ、どうぞ。お口に合うかどうかわかりませんが、心をこめてご用意いたしましたので、たくさんお上がりください。
■遠足の時、担任の先生が私たちのグループに入って、いっしょにお昼をお食べになりました。
■夕食はもう食べられましたか

【注意する点】
「食べられる」は「食べることができる」という可能の表現法としても用いられるため、なるべく避けたほうが無難です。代わりに「夕食はもうお済ませになりましたか」のように使うとよいでしょう。

二重敬語には気をつけて

「食べる」に限りませんが、敬語を二重にして使われる表現には注意が必要です。「食べる」の敬語表現でよくある誤りは「お召し上がりください」です。「召し上がる」がすでに尊敬表現の敬語なので、それに丁寧な表現として「お~」をつけると、二重になります。

厳密に言えば誤りですが、一般的には許容されている範囲で、使っても非常識とまではなりません。しかし、「お召し上がりになられる」のようにさらに敬語(なられる)が加わると、くどくなりますし、敬語の使い方としても明らかな間違いになります。同じように、「お食べになられる」もNGです。

「食べる」の謙譲語

「食べる」の謙譲語は「いただく」、「頂戴(ちょうだい)する」です。しかし、辞書には、「食べる」が「賜(た)ぶ」「飲む」「食う」の謙譲語、または丁寧語であると記されています。歴史的に「食べる」はそもそも謙譲語だったものが、現代の口語表現として、さらに「いただく」「頂戴する」と言うようになりました。

「食べる」の謙譲語の例文

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■奥様の手料理をいただいたら、おいしくて感激しました。
■たい焼きは私の大好物でしたので、さっそくふたつも頂戴しました。

【注意する点】
謙譲語の「いただく」は自分が作った食べ物や、自分が買ってきた食べ物に対しては使いません。

(例1)クッキーを作ったので、どうぞ召し上がってみてください。作った時に私もひとついただいたのですが、とてもうまく焼けているんですよ。
(例2)今日のお昼は、コンビニでおにぎりを買って、それをいただきました。

このように、このふたつの例は誤りです。この場合は、謙譲語の表現を用いず、「私もひとつ食べたのですが」「おにぎりを買って、それを食べました」のように言います。ただし、食事前の「いただきます」という挨拶は同じ謙譲語でも「食べ物の命をいただきます」と言う意味なので、この限りではありません。

「よばれる」は「食べる」の謙譲語か

よく耳にする「よばれる」は、「食べる」の意味を含むことがあります。もともとは、「呼ばれる」→「招かれる」から来ており、招かれれば食べ物のおもてなしを受けることが多いことから、そのような意味を含むようになりました。

「名を呼ばれる」と違って、この場合の「呼ばれる」は、話し手が動作の主体となった謙譲語の表現になります。「およばれする」という言い方もあります。

「食す(しょくす)」は「食べる」の謙譲語?

ちまたで時々見聞きする表現に「食す(しょくす)」と言う言葉があります。話の流れから「(私が)食べる」と言う場合の謙譲語表現として使われている場合が多いのですが、ではこの言葉は本当に「食べる」の謙譲語なのでしょうか。

答はNOです。これは、「召し上がる」「着る」「統治する」の尊敬語の表現です。しかも「食す」と書いて「おす」と読みます。また文語でしか用いられないため、現代の生活の中で「食べる」と言う意味で用いるのは間違いです。

一方で、「食する(しょくする)」という表現は「食べる」と言う意味で使うことができます。ただ、辞書には「文章語的な言い方」と書かれており、謙譲語であるとは限りません。

敬語の使い方をチェックしてみよう

次の10個の文の中で、敬語の使い方に誤りがあるのは何番でしょうか。

問題

①駅前にできた評判の店のケーキはもういただかれましたか。
②デザートはもう頂戴しましたか。
③ホテルのビュッフェで、たくさんの美味しい料理をいただきました。
④新発売のカップ麺は、もう召し上がりましたか。
⑤料理が冷めないうちにいただいてください。
⑥うちの夫は意外に甘党で、毎日ドーナツを召し上がるんですよ。
⑦おたくのお子さんは、毎朝納豆をお食べになられるので健康でいらっしゃるのですね。
⑧角に新しくオープンした店の弁当、もう食べられました。
⑨海外旅行のお土産、食べさせていただきました。
⑩先輩、旅行のおみやげのお菓子です。どうぞいただいてください。

正解

適切でない敬語の表現が含まれているのは以下のとおりです。

①「いただかれましたか」は謙譲語の表現なので、相手に対しては使えません。「召し上がりましたか」「お食べになりましたか」などが正しい表現です。

②「頂戴しましたか」は謙譲語の表現なので、相手に対しては使えません。「召し上がりましたか」「お食べになりましたか」などが正しい表現です。

⑤「いただいてください」は謙譲語の表現なので、相手に対しては使えません。「お召し上がりください」「おあがりください」などが正しい表現です。

⑥「召し上がる」は尊敬語なので、身内に対しては使えません。「いただくんですよ」あるいは「食べるんですよ」が正解です。

⑦「お食べになられる」は二重敬語なので、「お食べになる」とするのが正解です

⑨「食べさせていただきました」は謙譲語の表現としては誤りです。「いただきました」が正解です。

⑩「いただく」は謙譲語の表現なので、目上の相手に使えません。「召し上がってください」が正解です。

相手は「召し上がる」、自分は「いただく」と覚えよう

日本語の敬語の使い方は、本当に難しいです。いつも使い慣れていないと、正しくて美しい言葉はとっさの時になかなか出てきません。それでも最低限、「食べる」の尊敬語は「召し上がる」、謙譲語は「いただく」と覚えておけば、大きな恥をかくこともありません。
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