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「ただいま」の敬語表現
「ただいま」を使うときはいつでしょうか。家に帰ってきた時に、家で待っているお母さんに「ただいま。」が口について出ることでしょう。家族が待つ家に戻った時に、「ただいま」を使うことが多いのではないでしょうか。
「ただいま」という言葉は「帰宅」時に使われる挨拶言葉ですので、「ただいま」は、それだけでは敬語ではありません。しかし、「ただいま」の後に言葉を足して、敬語表現とすることができます。
たとえば「ただいま帰りました。」や「ただいま調査中でございます。もう少々お待ちください。」、「ただいま電話に出ることができません。」は、敬語としてビジネスシーンでも問題の無い表現です。
今回は「ただいま」の意味や使い方、敬語表現をご紹介いたします。
意味
ここでは「ただいま」の意味について説明します。同じ「ただいま」という言葉でも、微妙に意味が変わっていますので使い方とともに確認しましょう。
いま
「ただいま」の意味として良く知られているものは「今」「現在」を強調したり、丁寧にしたりする表現です。挨拶で使われる「ただいま」や、多くの人に告知を行う時に使われる「ただいまより、入学式を行います。」などの表現がそれに当たります。
挨拶で使われる「ただいま」は、「ただいま帰りました。」「ただいま戻りました。」を省略した言葉です。外から戻った時に使う「ただいま」は、家族や親戚の間であれば、問題ありません。しかし、ビジネスシーンでは敬語で無いため、上司に対して使うとおかしなことになります。外回りから帰った時には省略せず、「ただいま帰りました。」「ただいま戻りました。」を使います。
告知で使われる「ただいま」は、「より」と組み合わせることで、丁寧な敬語表現として使うことができます。
すぐに
「いま」ではなくて、現在からすこし後を表現するために「ただいま」を使う場合があります。たとえば、訪問した会社で受付の人から「ただいま、係の者が参ります。」と言われたら、担当者がこの後来てくれるということが分かります。
「ただいま」を使わずに「いま、行きます。」と、近しい関係の間で交わされることがあるでしょう。確かに「いま、行く。」よりは丁寧な表現ですが、ビジネスシーンではふさわしくありません。敬語として使う場合は「ただいま、参ります。」「ただいま、うかがいます。」を使います。
いまから少し前
「今」から少し前を言うために「ただいま」を使う場合があります。「ただいまお帰りになりました。」であれば、少し前にその場を離れて戻っている途中であると分かりますし、敬語としても成立しています。
「いま帰りました。」はどうでしょうか。「ました」を使っているので丁寧語ではありますが、ビジネスシーンでぶっきらぼうな響きが感じられ、敬語としては不足し、失礼に感じられます。
敬語として使うには、「ただいまお帰りになりました。」「ただいまお戻りになられました。」などのように、「ただいま」を使えば、失礼さを感じることも無く、過剰な敬語にもなりません。
「ただいま」の方言での敬語表現
「ただいま」は挨拶言葉ですので、目上の人に話しかけたり、家族以外に使わなければならないことがあります。敬語として使われる場合、その表現は、地方によってさまざまです。言葉は地域や時代によって変化しますので、その地域全てでこの表現が使われるということではありませんが、下にいくつかの県で使われている表現を挙げました。
沖縄
沖縄の方言ですと、「こんにちは」が「はいさい」「はいたい」、「ようこそ」は「めんそーれ」と言った言葉が有名です。
沖縄の言葉で「ただいま」は「なま、ちゃん」で、「おかえりなさい」は「けーたんなー」です。敬語表現で「ただいま」は「なま、けーやびたん」、「おかえりなさい」は「けーいみそーち」となります。
鹿児島
鹿児島の言葉で「ただいま」は「たでま」で、「おかえりなさい」は「おかえり」、敬語表現で「おもどりなさいもんせ」です。また、沖永良部島で「今から行きます」は「なまからいちゅんど」となります。上記の沖縄の言葉とおなじ「なま」が使われます。
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京都
京都の言葉では、「ただいま」は「たやいま」「ただいま」、「おかえりなさい」は「おかえり」です。「ただいま」は京都の言葉で敬語表現にあたるものはありません。
「ただいま電話に出られません」などは、語尾が変化し、「ただいま電話にでられまへん」「ただいまお時間ございますやろうか」となります。
「たった今」を表す言葉としては「さいぜん」「さいでん」を使います。「さいぜんまでそこらにいゃはりましたけどなぁ。」のように使います。
「ただいま」の敬語での使い方
「ただいま」は挨拶言葉ですので、これ単体が敬語になることはありません。「ただいま。」「おかえり。」の挨拶が交わされる、アットホームな職場もあるでしょう。家族のような関係を、長い時間をかけて職場で作ってきたのであれば素敵なことです。しかし、「ただいま」が一般的にビジネスの場でふさわしいかというと、そうではありません。
「ただいま」は、その後に続く言葉によって、敬語として使うことができるようになります。ここでは敬語としての使い方を説明します。
敬語の種類
敬語には3つの種類があります。一つめは、相手を上げて敬意を表す「尊敬語」です。たとえば「御社の担当者様がおいでになりました。」は、相手の会社を上げることで、敬意をあらわしています。
二つめは、自分を下げて、敬意をあらわす「謙譲語」です。「弊社の担当が伺います。」は自分の会社の担当者を「下げる」ことで、相対的に相手を「上げ」ることで敬意をあらわしています。
三つめは、語尾を「です」「ます」「ございます」として、丁寧な言葉遣いで相手に敬意をあらわす「丁寧語」です。「担当者が参ります。」は「行く」を丁寧語の「参る」として、丁寧にすることで相手への敬意をあらわしています。
「ただいま」の敬語表現の使い方
「ただいま」の敬語表現ですが、「ただいま」がそれ単体では敬語になりません。「ただいま」の後に敬語を続けることで、ビジネスシーンでも違和感の無い表現にすることができます。
たとえば、帰宅の挨拶で使う「ただいま」ですが、後に省略されている「帰りました」「戻りました」を復活させれば「ただいま帰りました。」「ただいま戻りました。」と丁寧語になり、敬語として使えます。
また、「ただいま」の後に「行く」の「謙譲語」である「参る」を繋げると、「ただいま参ります。」となり、敬語として使えます。
さらに、「ただいま」の後に「帰る」の「尊敬語」である「お戻りになる」を続けると、「ただいまお戻りになられました。」となり、やはり敬語として使えます。
メールでの使い方
メールでの「ただいま」は、「今」の丁寧な表現として用いられることがほとんどです。たとえば「ご指摘の件についてはただいま確認中でございます。確認が取れ次第早急にご連絡いたしますので、お待ち下さい。」のように使います。
「ただいま」を敬語表現するときの例文
それでは「ただいま」を敬語として使ってみましょう。例文を挙げていますので、確認しましょう。
ただいま帰りました
外回りから戻り、上司や同僚が仕事をしているオフィスに戻ってきました。上司や同僚が「おかえりなさい。」「お疲れ様です。」と声をかけてくれています。家族ではありませんので「ただいま。」では何かおかしいです。社会人として、無言のまま席に着くわけにはいきませんし、こういうときには「ただいま戻りました。」と挨拶を返しましょう。
オフィス以外にも、会社帰りの自宅近くで近所の方にお会いしたとき、「あら○○さん、おかえりなさい。」のように声を掛けられた時にも使えます。小学生のように「おばちゃん、ただいま。」が通じる相手であれば問題ありませんが、大人になったのであれば「ただいま帰りました。」もしくは「こんばんは。」で挨拶を返すとスマートです。
ただいま電話に出ることができません
「今」電話に出られないことを丁寧に伝える表現です。留守番電話のメッセージに使われているので耳にしたことがある人も多いでしょう。「ただいま」+「電話に出ることができません」で、丁寧語の敬語表現です。
他にも、電話中の同僚あてに、別の取引先から電話が掛かってきたときに使える表現としては「○○はただいま別の電話に出ておりますので、申し訳ございませんが終わり次第折り返しご連絡させていただいてよろしいでしょうか。」があります。「ただいま」+「電話に出ております」で謙譲語の敬語表現です。
ただいま参上します
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今行きます、を敬語として使った表現です。「参上する」は「行く」の謙譲語で、自分を下げることで相手を上げて敬っています。上司を待たせてしまった時や、取引先に呼びつけられたときに使える敬語表現です。
ほかにも、早急に回答を求められているけれども、検証が終わっておらず回答できない場合は「ただいま検証中でございます。もう少々お待ちくださいませ。」取引先から担当者の到着について連絡があった場合には「ただいま担当の者が御社に向かっている所でございます。お時間かかって大変申し訳ございません。」のような敬語表現が使えます。
ただ今確認してまいります
今調べます、の敬語表現です。自分では判断がつかない内容をたずねられた時や、少し時間がかかるけれども調べれば回答できる内容を聞かれた時に使います。例えば「ただいま確認してまいりますので、お掛けになってお待ちいただけますか。」や「ただいま確認いたします。お時間少々頂戴しますので、確認でき次第こちらからご連絡させていただけませんでしょうか。」などがあります。
ただいまお買い上げいただいたお客様
デパートの館内放送などでたまにありますが、「ただいま子供服売り場でギフトセットをお買い上げのお客様、おことづけがございますので、お近くの係員までお声をおかけください。」のように、たった今何かをした人に対して呼びかける敬語表現です。
他に会のスタートを告げる宣言として、「ただいまより、平成30年度入学式を始めます。」のように「今からはじめる」を丁寧に表現した「ただいまより」を使うことがあります。
「ただいま」の別の敬語表現例
「ただいま」を別の言葉を使って表現します。話が長くなる場合、同じ表現をくりかえして続けるとくどくなりますので、違う表現をいくつか知っていると便利です。
今すぐに参上します
「参上します」は、目上の人のところへ行くこと、その人のところに行くことをへりくだって言う言葉です。目上の人のところに「すぐに」行きますということを強調したいので、「今すぐに参上します。」「今すぐに参ります。」が使えます。
目下調査中です
目下(もっか)はその状況が現在も続いていることを表す言葉ですので、今、その瞬間が現在も続いていることを強調しています。調査中、検討中などの「継続」を表す言葉とつながり、「目下調査中でございますので、結果が出るまでもう少々お待ちください。」のように敬語と一緒に使われます。
あいにくですが電話に出られません
電話に出ることができない、ということは、「お客様と電話で話をしたいのはもちろんなのだけれども、物理的にどうしてもできない、残念だ」ということでもあります。残念な気持ちを言い換えると「あいにくですが」「あいにくではございますが」「残念ですが」などが使えます。
例えば「あいにくですが○○は電話に出られません。会議が終わりましたら○○からお電話をさせますので、ご連絡先をお伺いできませんでしょうか。」のように敬語の中で使います。
「ただいま」の丁寧語
「ただいま」の丁寧語は、よく目にしたり耳にしたりすることが多い表現です。
ただいま休憩中です
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レストランのランチタイムとディナータイムの間や、病院の午前と午後の診療時間の間などに、看板などで目にした事のある言葉ではないでしょうか。「ただいま」のあとに「○○です。」をつなげることで、「いま○○だ」ということを丁寧に表現しています。
ほかに「ただいまマイクのテスト中です。」「ただいま試験期間中ですので職員室には入ることはできません。」「ただいま16時30分でございます。」のように丁寧語として使います。
「ただいま」と「只今」の敬語の違い
「ただいま」を漢字で書くと「只今」と書きます。しかし、挨拶をあらわす「ただいま」は基本的にひらがなで書かれます。「ただいま」も「只今」も同じ言葉をあらわしますので、敬語の違いは無いと考えられます。
「ただいま」の謙譲語
「ただいま」の謙譲語表現です。自分の行動について言う時に使います。
ただいま確認いたします
「いたす」は「する」の謙譲語です。「自分が今○○する、している」ことをへりくだることで相手をうやまう敬語表現としています。「ご予約の変更をご希望でございますか。ご希望のお時間でご対応できるか、ただいま確認いたします。お電話保留になりますがそのままお待ちください。」のように使います。
また「いる」の謙譲語「おる」を使って「ただいま部長は席をはずしております。ご伝言がございましたら承ります。」のようにも使うことができます。
「ただいま」を使いこなそう!
「ただいま」は学生の間であれば「ただいまの挨拶」の延長で使うことがほとんどでしょう。挨拶は大事です。社会人になり、ビジネスシーンでの会話になると「挨拶」でも使いますし、「挨拶」以外で使うことも激増します。
「ただいま」は「今」を強調する言葉ですが、注意が必要な点があります。それは一緒に使う言葉が「敬語」である点です。前後に繋がる言葉が敬語になるため、慣れていないとぎこちなかったり、ギクシャクしたりすることが考えられます。
言葉は使っていくうちに身につきます。正しい敬語を身につけるため、ビジネスシーンでの先輩の言葉遣いやニュース放送などにアンテナを張り、吸収して使いこなせるようにしていきましょう。