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「したためる」は敬語表現なのか
この「書くこと」の敬語表現には、「お書きになる」や「召されます」、「お書きする」、「お伝えする」などの「御(お)」をつける表現が一般的で、「食事をすること」や「部屋を整理すること」を言う場合でも「したためる」ではなく、「お召しになる」や「お片付けをする」などと「御」をつけた上で敬語表現として見合う語形に直して使われます。
物書きや作家が使う「したためる」という表現など
この「したためる」という言葉が出てくる箇所について見れば、その状況や背景では「その同じ文章内において敬語表現がなされている箇所で、『したためる』が使われていること」がわかり、昔では現在とは違い、「したためる」は敬語として使われていることがうかがえます。
しかし、「したためる」という言葉は一人称視点で描かれている小説や日記の内でも散見されるため、相手を必要としない空間において使われる「したためる」の意味合いを問う上では、敬語表現というよりも、謙譲語的な表現が強くうかがえるでしょう。
「したためる」の敬語での使い方
しかし、この「したためる」という言葉は謙譲語として使われる場合があり、その上ででは敬語の1つとして認められる場合があります。この場合は相手に対する尊敬の念に踏まえ、「自分の立場を遜らせて言う『書かせていただきました』という表現」となり、直接的な尊敬語として認められないにせよ、状況によっては敬語に分類されることがあります。
敬語の種類
どれも敬語のうちに含まれますが、それぞれの敬語の性格によってその用途が分かれ、場合や状況、話し手と聞き手の立場の違いにきちんと配慮した上で、どの敬語を使うかを決めておかなければなりません。
敬語の使い方
【一般的な敬語の使い方】
・自分のこと=わたくし、わたし(男性・女性を問わず)
・相手のこと=○○さま、こちらの方
・男性=男の方
・女性=女の方
・団体や集団=皆さま、お客さま
・自分が所属する会社=弊社(へいしゃ)、わたくしどもの会社
・先方(相手)の会社=貴社さま、御社
・同伴する人=お連れさま、お連れの方々
・勤務先=お勤め先
・住所=お住まい、おところ
・誰か(他人)=どなたさま、どちらさま
・夫=ご主人さま
・妻=奥さま
・子ども=お子さま
・行動(する)=なさる、される
この辺りの敬語の使い方はごく一般的に認められる表現で、ぜひ覚えておくことが望ましい敬語表現になります。
メールでの使い方
そのため、「メールをしたためました」という表現を敬語として表現する場合は、「メールをお送りさせていただきました」や「送付させていただきます」というように、「送る」という意味をメインにした敬語表現が望ましくなります。
「したためる」を敬語表現するときの例文
【「したためる」を敬語表現するときの例文】
・お返事をしたためさせていただきました。
・今後におきまして、わたくしの心のうちをしたためさせていただきます。
・皆さまのために、お部屋を3つ4つしたため(ご用意)させていただいております。
・現在、彼らとともに夕食をしたためて(食べて)おります。
・あの方は、非常に素直なお考えをこの小説においてしたためられました。
絵を描く場合の「したためる」の意味
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「絵をしたためる」という言い方は「文章をノートなどにストックしておく・書き移しておく」という表現と同じ意味合いで使われる場合が多く、とにかく「人が自分の主張を伝えるために書く(描く)」という行動を表す際にも、「したためる」という表現は普通に認められることになります。
手紙を書く場合の「したためる」の意味
・長い長いお手紙をしたためさせていただきました。
・あなたさまへの想いの丈を、存分にしたためています。
・いま、わたくしの心の隅々までを、このお手紙にしたためています。
・さみしさのつれづれに、手紙をしたためています。(井上陽水『心もよう』より)
このように「したためる」という言葉の意味は「書き記すこと」を全面的に意味する言葉で、特に一人称視点による書き方(日記に見られる書き方)でも相手を想定した書き方でも、どちらでも使える便利な敬語表現になります。
酒などを「したためる」という表現と意味
この場合の「したためる」の意味合いには「嗜(たしな)む」という「○○を好んで楽しむ・親しむ」などの姿勢が認められ、「食事を楽しむ」、「酒を呑むことを楽しむ」といった「そのことに慣れ親しむ」という意味合いと話し手の姿勢がうかがえます。
「したためる」の別の敬語表現例
・お書きになられる。
・お書きになられます。
・(意見や考えを)お送りいたします。
・召し上がる。
・召し上がられます。
・お召しになります。
・食事をなさる。
・お食べになります。
・ちょうだいいたします。
・ご撤去ください。
・お片付けになります。
・お片付けください。
このように「御(お)」をつける形で語尾を敬語に合わせて表現するか、またその言葉そのものを別の言い方に置き換えて表現されます。
具体的な謙譲語の意味
「謙譲」の意味は一般的に「自分の立場や姿勢を低め、さらに相手の位置を自発的に高めて敬意を表すこと」を言い、これは実際に相手と自分の立場に関係なく、話し手が自発的に行なう遜った姿勢になります。
「したためる」という敬語表現もこの謙譲語に認められ、多少なりとも「相手を尊敬する姿勢」はありますが、それよりも「自分の言い方や主張の姿勢を自発的に低めること」の意味合いが強く認められ、つまり「控えめな表現」や「謙遜」として一般的に認められます。
「したためる」の類義語や言い換えの敬語
【「したためる」の類義語や言い換えの敬語】
・表現される
・執筆なさる
・筆を執(と)る
・ペンを執る
・一筆したためる
・書きつける
・書き記(しる)す
・記録なされる
・表明される
・作文をなされる
・お食事になる
・召される
・お片付けをなさる
・しまわれる
・整えられる
・嗜(たしな)まれる
これらの言葉は全て「したためる」の根本的な意味合いにある「書く」、「食べる」、「片付ける」などの類義語にも認められます。
「したためる」という意味と正しい用例を覚えておきましょう
「したためる」という表現は日常用語として確かに使われますが、それでも一般的に使用頻度や見聞の頻度はどうかと言うと、「書く」や「食事する」という行動を示す言葉としては、あまり深く認識されていないのが現状でしょう。「『したためる』が使われる分野では使われるが、それ以外の分野ではほとんど見ない」という実際は見え隠れします。
しかし、「したためる」という表現は主に謙譲語という「敬語表現」として扱われるため、否が応でも使わなければならない機会もあるでしょう。そのときのためにもぜひ、この「したためる」という言葉の正しい意味や用例をしっかり把握しておきましょう。