「代わりと言ってはなんですが」の敬語表現・使い方と例文

あなたが海外旅行に行く時、親しい友人からお土産を頼まれることもあるでしょう。友人によっては「コレが欲しい」とお土産を指定する人もいます。しかし現地であなたがそのお土産を買おうとした時、実際には売っていなかったり高価だったりすること可能性もあります。

そのような場合、あなたは他のお土産を購入して友人に渡すでしょう。指定したお土産がないことを謝罪しながら、「代わりと言ってはなんですが」と付け加えることでしょう。

「代わりと言ってはなんですが」という言葉は、相手が求めているものを用意できなかった場合に別のものを提案する時に使う言葉です。直接相手と対面している時にも使いますし、敬語を使うべきメールや手紙などでも使われる、使用頻度が高い言葉と言っていいでしょう。

敬語に気をつけるべきビジネスの場面でも「代わりと言ってはなんですが」という言葉は使われることが多いです。ビジネスは相手と自分の交渉の末進めていくことが多いため、相手の提案に対して単に否定や却下をするだけではなく、「代わりと言ってはなんですが」とすり寄っていく姿勢が大事になります。

「代わりと言ってはなんですが」と提案を受けると「この件について深く熟考してくれている」という印象を受けます。代替案を提案するためには、相手の考えをより深く理解する必要があるためです。「代わりと言ってはなんですが」と提案できる人はビジネス面では仕事ができる人という印象を受けるといっても過言ではありません。

敬語の表現がない英語では「代わりと言ってはなんですが」はどういう風に言うのでしょうか。英語では「I will propose an alternative」で、直訳すると「代替案を提案します」という表現があります。日本語では「なんですが」というニュアンスで伝わるところが多いですが、英語ではそこが伝わりにくいのも事実です。

より敬語表現に近づけるのであれば「Can I suggest alternative proposals?」と言うこともできます。敬語で「代替案を提案しても良いですか？」と尋ねる文です。「I am ashamed to propose an alternative plan.but I will propose an alternative」と言うと日本の敬語表現により近づけることができます。

公私問わず使用する場面が多い「代わりと言ってはなんですが」という言葉ですが、敬語表現ではどのように言うのでしょうか。使用する場面によって多少の違いがあります。

相手の提案を聞いて「代わりと言ってはなんですが」と別の提案をする場合、別の表現をする必要はないでしょう。「代わりと言ってはなんですが」という言葉がすでに敬語であり、相手に不快感を与えることは少ないでしょう。シチュエーションによって遠慮がちに言ったり、強気に提案したり、同じ言葉でも含む意味合いを変えることもできます。

より丁寧な敬語表現をするのであれば「代わりと言ってはなんですが」の前に「愚案ではございますが」などをつけることもあります。

「代わりと言ってはなんですが」という敬語を使う時は、どのような理由があるにしろ相手の提案を飲むことができない時です。全てにおいて利がある提案をする時でも、提案を飲めず申し訳ないという謝罪の意味を込めて「代わりと言ってはなんですが」という言葉を使うようにしましょう。

「代わりと言ってはなんですが」はすでに敬語表現の言葉です。より相手にわかりやすく伝えるのであれば「代わりにご提案させていただきたいのですが」という敬語表現があります。「愚案ですが」「愚案ではございますが」などの敬語を頭につけるとより相手を敬う気持ちが伝わります。

相手と対面している場面では「代わりと言ってはなんですが」という言葉で相手にニュアンスを感じ取ってもらうことは可能でしょう。しかしメールなど相手の顔が見えない場面においては「代わりにご提案させていただきたいのですが」という敬語表現を用いて、相手にわかりやすい文章にすることが好ましいです。

「代わりと言ってはなんですが」を使う場面では、わかりやすい資料や物を用意しておくと良いでしょう。代わりに提案したものが、もとから提案されていたものを下回っていると判断されてしまうことを防ぐためです。もしも代替案が優れていることを相手が理解してくれた場合、関係はより深くなることは間違いないでしょう。

また親しい間柄であっても、あえて敬語で「代わりと言ってはなんですが」という言葉を使うことで特別感を表現することもできます。急に敬語になることで相手の注意を引くこともできます。特に異性から敬語を使われたらドキッとしてしまう人も少なくないでしょう。

メールで「代わりと言ってはなんですが」という言葉を使う時は、敬語を使い相手にわかりやすく伝える必要があります。特に相手から複数の提案を受けていて、それぞれに対して「代わりと言ってはなんですが」と代替案を示す時は、どの代替案がどの提案とリンクしているのかをわかりやすく伝える必要があります。

「ひとつめに提案に対して、代わりと言ってはなんですが、以下の提案をあげさせていただきます」と書くのが親切でしょう。メールでの連絡は長文になることは避けたほうが良いので、代替案とその理由を簡潔に伝えるようにしましょう。詳しい理由は添付資料などで補足するようにすると、相手にもわかりやすく伝えることができます。

ビジネスにおいて「代わりと言ってはなんですが」という言葉を使う場面は、打ち合わせやプレゼンテーションの場であることが多いです。敬語に気をつけることはもちろんのこと、相手に伝えることを目的とした言葉選びをする必要があります。

「代わりと言ってはなんですが」と提案する時に気をつけなければいけないことがあります。それは相手の提案を貶してはいけないということです。相手の提案のメリットをよく理解した上で、より良い提案が存在した時に「代わりと言ってはなんですが」と提案するようにしましょう。提案が嫌味に聞こえないように注意が必要です。

「代わりと言ってはなんですが」を使った例文を幾つか挙げてみましょう。親しい友人から敬語を使うべき相手、ビジネスの場面、メールでの使い方には違いがあることを理解しましょう。

敬語例文として6項目をご紹介します。

・「君が勧めてくれたお土産がなかったよ。代わりと言ってはなんですが、君の好きそうなお菓子があったから買ってきたよ」

・「弟が来られなくなってしまいました。代わりと言ってはなんですが、同じく観劇が好きな友人を連れて行きます」

・「希望を出されていたお部屋は入居者が決まってしまいました。代わりと言ってはなんですが、こちらのお部屋はいかがでしょうか」

・「予算的に難しい面が出てまいりました。代わりと言ってはなんですが、予算の中で考えた代替案を提案させていただきます」

・「彼に振られて消沈している気持ちわかります。代わりと言ってはなんですが、私があなたを愛します」

・「雨天のため中止になってしまいました。代わりと言ってはなんですが、屋内でできるイベントをしてはいかがでしょうか」

「代わりと言ってはなんですが」という言葉の別の敬語表現例を幾つか挙げてみましょう。敬語は相手を敬う時や自分が謙る時に使う言葉であり、使うべき時にきちんと使えないと相手に与える印象が悪くなってしまいます。逆も然りで、敬語がきちんと使える人はビジネスの場に限らず相手に良い印象を与えるでしょう。

敬語表現例として5項目ご紹介します。

・「お求めのデザインはありませんでした。代替案を述べさせていただくと、色違いのものがございます」

・「母が出席できなくなりました。代わりと言うのも憚れますが、私がお伺いします」

・「リンゴが売り切れていました。代わりと言うほどのものではありませんが、ミカンを買ってきました」

・「先生が病欠のため、代理というわけではありませんが、私が教鞭をとります」

・「昨日は欠席してすみません。埋め合わせと言ってはなんですが、来週キャンプに行きましょう」

「代わりと言ってはなんですが」と言われた人はどのような気持ちになるのでしょうか。「代わりと言ってはなんですが」は相手や周囲の人の注目を集める言葉で、特にビジネスの場面では有効なテクニックと言えます。

ビジネスにおいて自信のあるアイデアを思いついたとしましょう。次の会議で最初からそのアイデアを説明してしまうと印象が低くなることも考えられます。しかし元からある案をあげた上で「代わりと言ってはなんですが」と自分のアイデアを述べれば、そのメリットはより周囲に伝わるでしょう。

友人を驚かせて喜ばせたい時にも「代わりと言ってはなんですが」という言葉は有効です。普段敬語を使うような間柄ではない友人に「代わりと言ってはなんですが」と代替案を提案することで、驚きも喜びも大きなものになるでしょう。

プロポーズで「代わりと言ってはなんですが」という言葉を使うとサプライズを与えることができます。恋人から買ってほしいと言われたものがあるとしましょう。しかしそのものを購入できなかった旨を伝え、「代わりと言ってはなんですが」と婚約指輪を渡せば、プロポーズを受けてくれる可能性は高まるでしょう。

「代わりと言ってはなんですが」は使いこなすことで提案力を上げることができる言葉です。敬語を使うべきビジネスの場面でも、敬語を使うべき間柄ではない友人関係でも、提案する場面に遭遇することは多いでしょう。

また「代わりと言ってはなんですが」と提案するためには、すでにある案のみならず相手や現状をすべて把握する必要があります。そのため、「代わりと言ってはなんですが」という言葉を使いこなしている人は、公私に限らず現状を把握する能力に長けた人物だと言えるでしょう。そういった人物に対する評価は自然と上がっていくことは言うまでもありません。