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2017年10月06日

残業の強制は違法?派遣に残業を強制させるとどうなる?

残業を強制することは違法なのでしょうか?答えは、違法ではありません。そもそも残業には強制力があります。ただ、それは絶対的な強制力ではありません。強制できる場合と、できない場合とがあります。残業の強制力について、派遣も含めて考察しています。

残業の強制は違法?派遣に残業を強制させるとどうなる?

残業とは、時間外労働のことですが、労働基準法では1日8時間を超える労働は違法です。意外かもしれませんが、そもそも1日8時間を超える時間外労働、残業は違法なのです。しかし、それでは多くの企業が困りますので、労使間で協定を結んで、労働基準監督署に届け出ることによって、一定時間の残業が適法となります。そうした協定を、一般に36(サブロク)協定と呼びます。

皆さんも会社で働いていれば、上司から残業(時間外労働)をしてくれないかと言われることがあるはずです。しかし、デートの約束でもあれば、きっと残業するのを断りたくなるでしょう。仕事よりプライベートを優先させたいという人にとっては、憂鬱な問題です。

上司や会社による命令によって、果たして残業を強制できるのでしょうか。強制すれば違法となるのでしょうか。また、派遣社員に残業を強制するとどうなるのでしょうか。これらについてみていきましょう。

残業の強制は違法?

残業の強制は違法?派遣に残業を強制させるとどうなる?

残業についての定めがない場合

労使間で36協定が締結されてない場合には、そもそも労働者を1日8時間を超えて働かすことは違法です。従って、1日8時間を超える残業そのものが違法となり、当然、残業を強制することは違法です。ただし、仮に1日の所定就業時間が7時間であれば、1時間の残業の強制は違法とはなりません。

一方、労使間で36協定が締結され、労働基準監督署に届け出られていたとしても、ただそれだけでは労働者に残業を強制することはできません。使用者が労働者に残業するよう命令し、強制する根拠がなければ、労働者はその命令に従う義務はありません。従って、労働契約や就業規則に残業を行わせる旨が定められていない場合、労働者に残業を強制することは違法になります。

残業についての定めがある場合

労働契約や就業規則などの中に残業を行わせる旨が定められていると、使用者は労働者に残業するよう命じることができます。たとえば、労働契約書や雇用契約書であれば、「所定時間外労働および所定休日労働の有無 (○有 ・ 無)」、「業務の必要性が生じた場合、時間外勤務および休日勤務を命じることがある」などと書いて、残業があることを明示しています。

また、就業規則であれば、「業務の都合で所定就業労働時間外および所定休日に時間を指定して勤務させることがある。但し、これは労働基準法第36条に基づく協定の範囲内とする」などと書いて、残業があることを示しています。

こうした書面による残業の規定があれば、使用者は労働者に残業を命じることができます。つまり、使用者が労働者に残業を強制しても違法とはなりません。ちなみに、この使用者とは、社長や部長、課長、係長などの管理職者のことを指します。

最高裁第一小法廷平成3年11月28日判決

平成3年11月28日、日立製作所での係争に関する裁判で最高裁判所第一小法廷が以下のような判決を下しました。

「使用者が当該事業所に適用される就業規則に当該三六協定の範囲内で一定の義務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、就業規則の内容が合理的なものである限り、労働者はその定めるところに従い、定められた労働時間を超えて労働する義務を負うものと解される。」

つまり、最高裁の判断では、就業規則や雇用契約書に残業に関する規定があれば、原則として労働者は使用者の残業命令に従う義務があるということです。従って、残業規定があれば、労働者への残業の強制は違法とはならないというのが法的解釈です。ただ、最高裁の判断でも、残業を定めた就業規則が合理性を欠くほどひどいものであれば、残業は強制できないとされます。

残業強制力とは

残業の強制は違法?派遣に残業を強制させるとどうなる?

残業の強制力は絶対か?

労働(雇用)契約や就業規則に残業が規定されることで、使用者が労働者に残業を命じることができる一方、労働者はそれに従う義務があることがわかりました。では、労働者はその残業命令に絶対に従わなければならないのでしょうか。つまり、その命令の強制力は絶対的なものなのでしょうか。

最高裁判決からもわかる通り、業務上その残業が合理的なものであれば、原則として労働者は残業を強制されます。契約や規則の中で、文書によって明示されている限り、労働者は原則として残業命令を拒否できません。

しかし、あくまでも原則としてです。労働者に残業命令を拒否する正当な理由があれば、残業を強制されることは決してありません。つまり、残業命令の強制力は、絶対的なものではありません。

拒否できる正当な理由

労働者が残業命令を拒否できる正当な理由は、体調不良や通院予定がある場合、または介護、看護、育児の予定がある場合などです。こうした理由では、その事情と残業の必要性を考慮して、残業を強制されなくなります。また、妊産婦であれば、労働基準法に基づく請求により、残業自体を命じられません。他に、育児介護休業法に基づく、育児介護目的の残業制限などもあります。

一方、デートや友人と遊びに行く予定があると言って、労働者が残業命令を拒否できるのでしょうか。残念ですが、デート、友人との約束、趣味行為などのプライベートな約束や予定では、命令拒否の正当な理由にはなりません。

ただ、終業時刻間際の残業命令であれば、労働者の生活に大きな不利益を強いる可能性がありますので、その命令は絶対的なものとはなりません。労働者側に一定の配慮がなされます。しかしその場合でも、特段の予定がない時には、拒否は難しいとされます。

残業命令を拒否するとどうなる?

正当な理由がないのに残業命令を拒否すると、一体どうなるのでしょうか。その場合には、懲戒処分や賞与・昇給などの査定の対象になる可能性があります。労働者が残業命令を拒否する理由が、正当とは思えないと判断されれば、使用者は業務命令違反による就業規則上の懲戒処分、あるいは人事考課時の査定対象とする場合があるのです。

もちろん、一度くらいの残業拒否では、それほど大きな懲戒処分を科されることはありませんが、正当な理由がないのに、何度も残業拒否をすれば、懲戒解雇処分を科せられることさえあります。ただし、使用者が労働者に懲戒処分を行うためには、その旨を定めた規定が別途必要になります。

派遣に残業を強制させると?

派遣労働者が残業をするには?

派遣労働者の場合でも、労使間での36協定がなければ、残業は違法となります。派遣労働者は、派遣元(派遣会社)が労使間で36協定を結び、労働基準監督署に届け出ることによって、初めて残業ができるようになります。

そして、派遣元が派遣労働者に、派遣先で残業や休日労働の所定外労働をさせるためには、就業条件明示書などで、残業や休日労働の所定外労働がある旨を、あらかじめ明示しておかなければなりません。もし残業がないという条件で、派遣先と派遣労働契約を結んだ場合には、派遣労働者は残業をする必要はありませんし、所定労働時間内だけの労働で済みます。

派遣労働者が残業を強制された場合は?

労使間で36協定が結ばれていない場合や、残業がないという条件で派遣先と労働契約が結ばれている場合には、そもそも残業はできません。また、派遣先から残業を命じられる(正確には、残業命令は派遣元が出しますが、契約によって派遣先が残業を指示します)こともありません。仮に派遣先が残業を命じ、それを強制しようとした場合、派遣労働者はそれに従う必要はありません。

残業がある旨が明示された派遣労働契約を結んでいれば、残業には原則として強制力があります。正当な理由がない限り、派遣先の残業の指示に従わなければなりません。そして、派遣先が派遣労働者に残業をさせれば、派遣元が割増賃金(1か月60時間までは25%割増)を支払うことになります。

一方、契約に明示された目的以外の業務で残業させたり、正当な理由があるのに残業を強制したりするのは違法です。もしあれば、派遣元や労働基準局に相談することが必要です。

残業強制はパワハラになる?

残業の強制は違法?派遣に残業を強制させるとどうなる?

パワハラとは?

職場でのパワーハラスメント、パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」であると、厚生労働者のワーキンググループ報告書の中では定義づけられています。

その報告書では、職場でのパワハラとして、6つの類型が挙げられています。

①暴行・傷害(身体的な攻撃)
②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

残業に関係したパワハラですが、やはりないわけではありません。

残業強制がパワハラになる場合も

残業そのものには強制力がありますので、それに合理性がある限りは、残業を強制すること自体問題はありません。しかし、労働者の意に反して残業を強制させることができるため、パワハラ問題が生じることもあります。

使用者である上司が部下に対して、「残業をしないと首にする」「残業をしないとお前の評価が下がる」などと言って、残業を強制、強要すればパワハラと判断されます。また、「残業ができないのなら、転職を考えろ」というのもパワハラと判断される可能性が高くなります。

つまり、脅迫という精神的攻撃で残業を強要、強制するとパワハラになります。また、労働者が体調不良や育児、介護など正当な理由で残業が難しいのに、残業を無理強いするのもやはりパワハラとなります。残業は、それが合理的なものであれば強制力が生じますので、使用者はそのことを労働者に冷静に説いて残業を強制するよう心掛けるべきです。

残業強制できる場合、できない場合

残業強制力のところでも少し触れましたが、残業を強制できる場合とできない場合についてまとめてみましょう。

残業を強制できる場合

労使間に36協定があり、労働(雇用)契約や就業規則に残業のことが明記されていれば、使用者は労働者に残業を強制することができます。雇用時に労使間で契約を交わしているので、労働者は業務上必要で合理性のある残業をするよう使用者から命じられれば、それに従わなければなりません。一方、契約時間を超えた残業や違法な残業には当然従う義務はありません。

終業時刻後に、特段の予定がなく、残業をしても自己の生活にほとんど不利益を被るようなことがないと、労働者は残業を強制されます。また、デートや友人との食事などプライベートな約束を理由にして、労働者が残業命令を拒否することもできません。もし残業を拒否すれば、懲戒処分などの対象になる可能性があります。

労働者に正当な理由がない限り、使用者は労働者に対して、業務上必要で合理性のある残業を強制することができるのです。

残業強制ができない場合

一方、労働者に正当な理由があれば、使用者は労働者に残業を強制することはできません。体調不良で業務が遂行できない場合はもちろん、終業時刻後に通院の予定がある場合なども正当な理由となります。使用者側には、労働者の健康を管理する義務がありますので、健康に困難がある場合には残業を強制できません。

また、育児や保育、看病、介護など、それをしないと労働者の私生活に大きな不利益となる可能性がある場合には、使用者は労働者に残業を強制することができません。そして、勤続1年以上の妊産婦については、本人の請求があれば、労働基準法に基づき、残業を強制、命じることができません。

さらに、3歳未満の子を持つ労働者からの請求があれば、育児介護休業法に基づき、残業を強制することができません。ただし、入社1年未満や1年以内に退職予定の労働者は、対象外です。その他、小学入学前の子を持つ労働者への残業時間制限などもあります。

残業には強制力があることを知っておこう

残業の強制は違法?派遣に残業を強制させるとどうなる?

残業を適法にする36協定の有効期間は1年です。従って、毎年届け出をし直す必要があります。使用者側はそのことに注意する必要があります。うっかり届け出を忘れてしまうと、非合法な残業を労働者にさせることになります。しかし、最も重要なことは、届け出によって適法となった残業には、強制力が伴うということです。正当な理由がなければ、拒否することはできません。

派遣労働者の場合、残業なしで労働契約を結べば残業を強制されることはありませんが、残業ありで契約すれば、派遣先で強制力のある残業を命じられます。就業条件明示書に示された残業であれば、命令に従わなければなりません。残業した割増賃金は派遣元が支払いますが、正しく支払われているかの確認も必要です。

デートや友人と遊びに行く予定があれば、残業を強制されるのは苦痛ですが、それを理由に残業を拒否することはできません。一旦、残業ありの契約をした限りは、合理性のある残業強制は受け入れざるを得ません。もちろん不利益を覚悟で、残業を拒否することも可能です。ですが、責任ある社会人としては、予め残業のことも考慮して生活設計をするのが望ましいと言えます。

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