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業界の現状
教育業界とは、資格の必要な幼稚園、小学校、中学校、高校の教員といった公教育ではなく、学生向けの塾や予備校、学生や大人を対象とした資格スクールや語学スクールといった教育サービスを提供している業界のことを指します。
大手予備校の代々木ゼミナールが少子化などを理由に、全国27カ所の校舎を7カ所に削減したりしたことで、教育業界自体が縮小しているかのような印象がありますが、事業を拡大している教育施設の数は増えていたりもするのです。
多様化する社会と、IT技術の教育への活用、さらに重要視される英語教育、そして2020年を目処にした大学入試改革と、教育業界はいま市場を拡大する大きなチャンスを迎えています。
基本情報
- 市場規模:9420億円
- 労働者数:8777人
- 平均年齢:37.5歳
- 平均勤続年数:8.8年
- 平均年収:587万円
給与水準は日本の平均値よりは高いようです。教育業界に対しては、サービス残業が多く、休日出勤が多いという声もありますので、この収入が適正な額なのかどうかの判断は難しいところですが、教育費は聖域と言われ、不況下でも最も影響を受けにくい分野とされているのも事実です。
仕事内容
たとえば、人に物を教えるということはとても難しいことです。わかりやすく伝えるにはどうしたらいいのか絶えず考えなければいけませんし、答えも決して1つとは限りません。
でも、そうやってベストを尽くして人と接することは、教える側にとっても大きな発見の連続となるはずです。相手が子供であれ大人であれ、そのまま人に学ぶことにつながるでしょう。
つまり、教育業界の仕事とは、人に学びながら社会貢献ができる仕事なのです。
業界シェア上位3位
1位:ベネッセ:4441億円
2位:学研:959億円
3位:ヒューマン:690億円
2位:学研:959億円
3位:ヒューマン:690億円
平均年収上位3位
1位:ベネッセ:943万円
2位:学研:934万円
3位:ナガセ:712万円
2位:学研:934万円
3位:ナガセ:712万円
業界の動向
学習塾同士の内戦続く
学習塾大手による中小塾の買収が加速しています。
さなるは九大進学ゼミ、三島進学ゼミナールを買収し、成学社と業務提携しました。市進ホールディングスは学研ホールディングス、学究社と業務提携しています。明光ネットワークジャパンは東京医学進学会の買収し、早稲田アカデミーと個別部門での業務提携するなど、株式取得や業務提携を合わせればかなりの数になります。
予備校にも変革の波
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ナガセは四谷アカデミーを買収し、早稲田アカデミーの株式を取得しています。代々木ゼミナールはSAPIXを買収しました。河合塾は日能研と業務提携するなど、各予備校とも合併や買収を通じて、低学年層から大学受験層まで垂直に統合していく戦略を取っています。
ベネッセの成長戦略
通信教育大手のベネッセコーポレーションは、2014年の個人情報流出事件の影響から、依然として経営的に厳しい状況が続いています。
顧客情報漏洩は最大で3504万件に及びました。「進研ゼミ」の会員数は2012年には400万人程度あったのが、2015年には271万人にまで減少し、わずか3年で会員数が30%以上減っています。
大手学習塾の東京個別指導学院やアップを買収し、紙とデジタル教材を用いて、塾や家庭で個人に合わせた学習を可能にする「ベネッセタウン構想」で巻き返しを図っています。
学研の成長戦略
学研ホールディングスは桐杏学園や全教材をはじめとして、十数社の学習塾を傘下に収め、小中学生を対象としたオンライン学習サービス「学研ゼミ」をスタートさせました。
「学研ゼミ」の利用者は数カ月で1万5000人を超えるなど、好調を維持しています。
少子化にもかかわらず教育は多様化
家庭教師では、トライ、トライプラス、KATEKYO学院などが好調を維持し、資格のユーキャンも個別指導に参入しています。
2012年にはリクルートが「受験サプリ」(現スタディサプリ)で、オンライン予備校に価格破壊を仕掛けました。そのは、受験生の2人に1人が使っているとも言われるほどです。
そして、JR東日本、東急電鉄などは幼児保育サービスや学童保育に参入しました。インフラや資本力を活かして、駅周辺や沿線地域に展開しています。
ジャストシステムやDeNAは、スマートフォンやタブレットで授業が受けられるシステムを構築し、学習塾に展開するなど、教育自体は多様化の様相を見せています。
市場動向
教育業界のなかでは、英会話・語学学校市場とeラーニング市場が好調となっています。
英会話・語学学校市場
英会話・語学学校市場では、2011年に2800億円強だった売上高が、2015年には約3200億円になりました。2020年度にはセンター試験廃止などの大学入試改革で、英会話が重視されると予想されており、英会話ができる講師を多数抱える英会話学校は需要の拡大が見込まれています。
eラーニング市場
eラーニング市場では、2011年に約1400億円だった市場が、2014年に一気に急成長し、1700億円強にまで数字を伸ばしています。時間や場所を選ばずに学べるという利点に加えて、スマートフォンやタブレットが普及したこともあり、市場が拡大しました。
業界の課題
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集団指導型の崩壊
集団指導型の塾は、過去においては市場成長の原動力ともなりましたが、今の少子化の時代には今ひとつ適合しないようで、近年ではそのほとんどが個別指導型の塾に置き変わっています。
個別指導型のメリットとしては、アルバイト講師を採用することによって人件費を抑えられることにあります。人件費を正社員のような固定給にするのではなく、アルバイトのような変動費に置き換えることで、利益が出やすくなるのです。個別指導塾のなかには、数十名程度の生徒数で、十分な利益を出している塾もあるようです。
ただし、現在では、個別指導塾の成長率にも陰りが見えはじめ、今後は淘汰されていくとの見方が強まっていますが、学習塾自体に、新しい指針となるようなビジネスモデルが見つかっていないのも事実です。
大学入試改革
2020年に大学入試が大きく変わるとされており、とくに基礎学力テストなどが導入されると言われています。
今の時点で、予備校や学習塾に具体的な動きはありませんが、ここで高校生を中心とした受験教育が何かしら変わることは間違いないようです。高校生の学習時間は25年前の半分程度にまで減少し(ベネッセ調べ)、学力上位の生徒たちも、英語などにおいてグローバル化した教育を受けることができてないという問題を抱えています。
この大学入試改革は、予備校や塾にとって、大きなビジネスチャンスになるはずです。もしかしたらこの課題に柔軟に対応できるかどうかで、雌雄が決まってしまうかもしれません。
ITをどこまで活用できるか
東進衛星予備校や河合塾マナビス、代ゼミサテラインでは、通信衛星やインターネット回線を利用したオンデマンドによる映像授業サービスを提供しています。また、スタディサプリといった無料(もしくは従来の予備校よりも圧倒的に安い金額)で映像授業を受けられるサービスも登場しています。
しかし、従来からの講師が主で生徒が従となる指導スタイルからは、いまだに脱却することができていません。生徒自身が主となり、従となる講師に質問をしていけるような自立型個別指導もITの力でさらに確立していけるはずで、そう考えると、教育業界にはまだまだ金の鉱脈が眠っていると言えるのではないでしょうか。
業界の今後の将来性
教育は「人」ありき
確かに、教育業界は成熟した段階にあります。大なり小なりのM&Aが断続的に成立し、提携や合併を想定した中期計画も進行しています。
しかし、そうした状況で求められているものは、学校の成績アップや受験における合格だけではありません。まして、デジタル化すればすべて解決するということでもないのです。アナログやデジタルといった技術は最低限必要となりますが、結局のところ、個性を重視した「人間教育」が最優先となるのです。
少子化の影響を受けて、業績が伸び悩む教育機関も出はじめてはいます。しかし、だからと言って教育業界全体が深刻な不況下にあるというわけではありません。子供の人口が多かったことを理由に、とくに経営努力をしてこなかった一部の戦略なき教育機関に生徒数減少の波が襲いかかっているにすぎないのです。
市場を細分化すれば、新しい分野での教育ビジネスがたくさんはじまっています。民間学童保育は社会に合わせた変化を遂げ、都市部において幅広く受け入れられています。学習はもちろんのこと、運動から、食事、送迎までワンス有数のサービスを提供し好評を博しているのです。そして、その他にも、幼児教育、そろばん塾、スポーツ塾と教育の多様化は進んでいます。
教育業界を、幼児や習い事まで対象にすると、市場は一気に2兆円に膨れ上がります。少子化が既定路線であるならば、やはり市場のパイを広げるしかありませんが、「教育」というソフトを売る教育業界にはそのサービス次第で、資本力に左右されることなく、生徒を集められる土壌があります。
大切なことは、教育というものを今一度再定義して、新しいビジョンを描いていくことです。少子化でも利益を生み出すことのできるビジネスモデルを確立することができれば、市場はまだまだ拡大するはずです。
業界研究本
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日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。
国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのがの理由です。
少し情報が古いところもありますが、これから大きく変わろうとしている大学入試改革についての記述もあるので、業界研究にも1冊です。