自動車業界の市場規模や動向・今後の将来性
更新日:2020年08月20日
自動車業界の今後の最も大きな動きは脱化石燃料への対応でしょう。各国でガソリン車販売禁止の年限を打ち出しています。もう一つが自動運転技術の進歩で、安全運転のためのユーザーサポート、交通事故の激減が期待されます。市場的には新興国市場への対応が自動車メーカーの生死を分けるとも言われています。2020年代前半には1億台を超えるという世界の自動車販売台数です。将来の自動車業界はどうなっていくのでしょう。
電気自動車に対する各国の政策は?
最近、世界の各国が、EV(電気自動車)の普及に向けての発表を相次いで行なっています。
■フランスは2040年をもってガソリン社の販売を禁止、発売する車はすべてEVとする。
■イギリスは2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を全面的に禁止する。
■ドイツでは2030年までにガソリン車などの販売を禁止する決議が国会で採択された。
■オランダやノルウェーでは2025年以降のガソリン車やディーゼル車の販売禁止を検討。
■インドは2030年までに販売する車をすべてEVにする目標を表明。
■中国ではEVとPHV(プラグインハイブリッド)の販売比率が2020年には12%になり、インドと類似の政策を検討中。
■日本は2030年までにEVやPHVの新車販売比率を5~7割にする目標を掲げる。
日本経済新聞の2017年7月27日の報道では、国際エネルギー機関(IEA)の予測として、EVなどの累計台数が2016年に200万台を超え、2020年には2000万台、2025年には7000万台になるとしています。
自動車メーカーの対応は?
電気自動車専業の米テスラ社以外のメーカーもEVへの取り組みは積極的です。
■フォルクスワーゲンは2025年までにグループで50車種のEVを投入する目標を発表。
■BMWは2025年までに11車種のEVを投入する予定を発表。
■日産・ルノー・三菱グループは、2022年までに3社でEVを新たに12車種発売すると発表。
■ホンダはEVの開発を発表、2018年に中国で現地向けのEVを発売、2019年には欧州に投入すると発表。
■トヨタは2020年までにEVの量産体制を整えると発表。
ガソリン車などの内燃機関を動力にしている自動車の部品点数は3万点を超えるので、特殊なノウハウの積み重ねがあって、他の業界からの参入は難しいものでした。電気自動車になると機械的な部品点数が激減し、より簡単なアセンブリーで完成させることができるようになります。他の業界から参入の可能性もあり自動車業界もより強固な体制が求められています。
また、世界の石油消費量の7割弱が自動車などの輸送用に使用されていると言われています。電気自動車が主流となる時代には、石油業界の需給バランスや流通機構も大きく変わることでしょう。
自動運転技術のレベルは?
自動運転は何も付いていないレベル0から完全自動運転のレベル5まで5段階に業界がレベル分けしています。まず、そのレベルの内容をみてみましょう。
■レベル1(運転支援):加速・操舵・制動のうちのいずれか一つを支援するシステムで、自動ブレーキなどの安全運転支援システムがあります。
■レベル2(部分自動運転):システムが運転環境を観測しながら、加速・操舵・制動のうち同時に複数の操作を行なうシステムで、自動車専用道や高速道路走行中、同一車線で60km/h以下など、条件が限定されます。
■レベル3(条件付自動運転):限定的な環境下や交通状況でシステムが加速・操舵・制動を行ないます。条件外などでシステムが要請したときはドライバーが対応する必要があります。
■レベル4(高度自動運転):高速道路上など特定の状況下のみ、加速・操舵・制動といった操作を全てシステムが行ない、その条件が続く限りドライバーは全く関与しません。
■レベル5(完全自動運転):全ての状況下及び、極限環境での運転をシステムに任せる無人運転で、安全に関わる運転操作と周辺監視のすべてもシステムが行ないます。
自動運転へのメーカーなどの対応は?
2017年時点で、レベル3以上の自動運転車は市販されていません。テスラ社のオートパイロットや日産が発売するというセレナがレベル2に相当します。
アウディがレベル3に相当する車種を2018年に発売すると発表しています。また、日本政府はレベル4の実用化を2020年に、レベル5の完全自動運転を2025年を目途に目指すとしています。
業界ではフォードが、2021年までにアクセルやハンドルのないレベル5の完全自動運転車の量産を始める計画を発表しています。また、フォルクスワーゲンも2021年に完全自動運転車の市販をめざしていて、各社の開発競争が激しさを増してきています。
自動運転は従来の自動車メーカーだけではなく、センサー技術やマイコン制御、ソフトウエアなどが重要な技術になるので、グーグルなどの従来では考えられなかった企業が参画してきています。電気自動車の技術とあわせて、今までとは違う業界マップができあがることでしょう。
新興国市場への対応
アメリカやヨーロッパ、日本など先進国の市場が飽和するなか、インドや東南アジアなどの新興国の市場に自動車業界の注目が集まっています。なかでも人口13億人のインドは2015年時点で280万台の市場しかなく、同人口の中国の3000万台に比べても今後の普及、市場の拡大が期待されています。
インドの自動車市場では早くから進出しているスズキがシェア1位で、2位の韓国現代自動車を大きく引き離しています。この成長市場にようやく中国の上海汽車、韓国起亜自動車、仏プジョーなどが進出計画を具体化しています。
インドを筆頭にインドネシアやフィリピン、さらに将来的にはアフリカ諸国など、成長余地が大きな新興国への進出が、これからの自動車メーカーの成否のカギになるのは間違いのないことでしょう。
自動車業界の売上
世界の自動車業界の状況をメーカー別販売台数の実績でみてみましょう。
その前に2016年日本国内のメーカー別販売台数を簡単に紹介します。日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の公表データ(出所:自動車産業ポータル「MARKLINES」)を合算したものです。
メーカー | 2016年販売台数 | 前年比% | |
---|---|---|---|
1位 | トヨタ | 155万6千 | 103.9 |
2位 | ホンダ | 68万6千 | 94.4 |
3位 | 日産 | 48万2千 | 81.9 |
4位 | スズキ | 47万2千 | 74.2 |
5位 | ダイハツ | 44万7千 | 73.2 |
6位 | マツダ | 19万2千 | 78.3 |
7位 | スバル | 14万1千 | 87.1 |
8位 | いすゞ | 8万1千 | 108.6 |
9位 | 三菱 | 6万8千 | 67.0 |
10位 | 日野 | 6万3千 | 103.5 |
同じ自動車産業ポータル「MARKLINES」のなかに、世界の販売台数のメーカーがあります。2016年のを紹介します。
世界の自動車販売 7位~10位
初回公開日:2017年09月20日
記載されている内容は2017年09月20日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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