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「法律に関係がある言葉なのかな」
「そもそも、悪法って何」
ソクラテスの言葉が由来とされている「悪法も法なり」は、比較的有名なことわざです。そのため、聞いたことがあるという人は多いでしょうが、詳しく知っている・使いこなせるという人はどのくらいいるのでしょうか。
本記事では、「悪法も法なり」ということわざの意味をはじめ、その語源や例文、類義語、英語表記を紹介しています。様々な視点から紹介するため、この記事を読めば「悪法も法なり」をしっかりと理解できるようになるでしょう。
語彙力を上げたいと考えている人や、より多くの知識を吸収したいと考えている人は、本記事を参考に「悪法も法なり」の正しい使い方を身に付けてください。
「悪法も法なり」とは?
読み方は「あくほうもほうなり」です。比較的有名なことわざのため、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかしながら、実際の生活で使われる場面は少なく、法哲学や哲学などの分野で用いられることが多い言葉です。
用法を間違えて使ってしまう人も多いため、以下で解説する意味や使い方をしっかりと理解して、正しく使えるようにしましょう。
ソクラテスの言葉とされる
しかし、実際には「クリトン」の中に、このことわざの語源とされる明確な記述はありません。また、ソクラテスは自身の考え方を書物に残したことがなく、私たちに伝わっているソクラテスの考え方は、弟子たちを通して書籍とされたものと言われています。
従って、このことわざの語源がソクラテスの言葉であるという説には、明確な根拠はありません。あくまでも「通説」と考えておきましょう。
「悪法も法なり」の意味
たとえ、その法やルールが理不尽なものや非合理的なものであったとしても、法やルールとして決められているのであれば、従わなければいけないという意味です。
その法やルールの正当性よりも、その法やルールを守ることを重要視するという考え方を表している言葉と言えるでしょう。
「悪法も法なり」の語源
プラトンの著書「クリトン」において、ソクラテスは死刑間近な状況で登場します。「クリトン」では、その状況においてのクリトンとソクラテスの対話が描かれています。
著書の中で、ソクラテスは無実の罪で裁判にかけられ、死刑宣告を受けていました。無実の罪で投獄されたにもかかわらず、ソクラテスは逃げようとはせず、幽閉されることを選びます。
面会者のクリトンはソクラテスに脱獄を提案しますが、ソクラテスはそれに対して反論を述べます。彼は、法を破ることは不正であり、不正は悪であると考え方を持っていました。そのため、その考え方に基づき、法を犯してはいけないと主張しました。
この状況における、ソクラテスの思想・考え方を汲み取って生まれた言葉が、「悪法も法なり」と言われています。
「悪法も法なり」の使い方・例文
そのため、法やルールが存在している状態で、それらが理不尽や不合理に思われる状況であると知りながら、ルールである以上は守らなければならないという考えを貫くような場合に、このことわざが使われます。
例文を1つ挙げましょう。
- 「何時如何なるときでも制服を着用するという校則には、批判に値する点がいくつかある。しかし、悪法も法なりであるため、生徒は従わざるを得ない。」
「悪法も法なり」の類義語
類義語を知ることで、大体の意味が分かると同時に意味の比較ができるため、このことわざの意味を理解する一助になります。
また、似た意味のことわざとの比較によって意味の違いを知れば、より深い意味の理解にも繋がるでしょう。
以下で類似表現を2つ紹介するため、ぜひ参考にしてください。
所の法に矢は立たぬ
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このことわざは、「不合理に思えても従うべきだ」という点において、「悪法も法なり」と意味が似ています。
ただし、「所の法に矢は立たぬ」は、その土地の習慣や倫理的規範といった環境的な制限を用いている点に注意が必要です。
「悪法も法なり」には環境的な制限がありません。この点が「悪法も法なり」と「所の法に矢は立たぬ」の意味の相違点と言えるでしょう。
「所の法に矢は立たぬ」と似た意味のことわざには、「郷に入っては郷に従え(ごうにいってはごうにしたがえ)」というものがあります。併せて覚えておきましょう。
無理も通れば道理になる
非合理的なことでも、強引に押し通すことに賛同する考え方を含んでいる点が「悪法も法なり」と似ている点です。
しかし、「悪法も法なり」は非合理的なことでも法やルールであるなら従うことが正しいという考え方を含んでいる一方、「無理も通れば道理になる」は非合理的なことも押し通すことで正しいことのようになるという考え方を含んでいます。
正しさのために行動するのか、行動の結果正しくなるのかという点が「悪法も法なり」と「無理も通れば道理になる」の意味の相違点でしょう。
「悪法も法なり」の英語表現
「悪法も法なり」の英語表現を知ることで、さらに別の視点からこのことわざを見ることができます。そうすることで、より明瞭なイメージがつかめるため、このことわざを深く理解できるでしょう。
英語での表現方法を知っておけば、どうしても無理を通す必要があるときなどに、相手に説明することが可能です。
It is what it is.
読み方は「イット イズ ワット イット イズ」です。
直訳では意味が通じにくいため、たいていの場合「仕方がない」「そういうものさ」と訳されます。
「悪法も法なり」には、それが法であるが故に従わなくてはいけないという意味が含まれているため、「It is what it is.」で言い換えられます。
他の表現として、「That’s just the way it is.」(そういうものだ・それが現実だ)という表現も併せて覚えておきましょう。
Bad law is also binding.
このことわざを直訳すると、「悪い法にもまた拘束力があります」となります。
「悪法も法なり」は、「悪い法であっても、法であるからには従うべきだ」という意味のため、「Bad law is also binding.」は、非常に近い意味のことわざとして使えるでしょう。
「悪法も法なり」の意味を知って正しく使おう
「悪法も法なり」ということわざには、以下のような意味があります。
- 「ルールに対する理不尽さや非合理さを嘆きつつも、従わざるをえない」
- 「理不尽であったり非合理的であったりしたとしても従うべきだ」
まず、理不尽や不合理というのは、主観的な判断によるものではなく、客観的に判断できるものということを念頭においてください。
主観的な判断とは、自分の趣味嗜好によってもたらされる判断ですが、客観的な判断は、明確な根拠理由のもとにされた判断のため、多くの人を説得しやすいものでもあります。
そのため、「自分の好みではないけれど」というニュアンスで「悪法も法なり」と使うのは適切ではありません。
本記事の内容を理解し、自分の言いたいことのニュアンスを考えた上で、正しく使用しましょう。