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「シャチは何歳まで生きるの?」
「シャチの食べ物は?」
水族館で人気のシャチですが、このような疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。シャチについて、意外と知らないことが多くありますよね。
本記事では、「海の王者」と呼ばれるシャチはどのくらいの知能を持っているのか、狩りの方法や群れでの生活の様子を例に挙げてご紹介し、シャチの生態を明らかにしています。
この記事を読むことで、水族館で見るだけでは分からない、シャチの驚くべき生態を学ぶことができます。今まで知らなかったシャチの新たな魅力を見つけることもできるでしょう。
シャチが好きな方、シャチの驚くべき狩りの方法や海洋生物に興味のある方は、ぜひこの記事をチェックしてみて下さい。
シャチとはどういった生物?
シャチの強さを表すものとして、英語では「killer whale」と言われています。つまり「クジラの殺し屋」です。その名のとおり、自分たちよりも体の大きなクジラでさえも、捕食してしまう恐ろしい一面を持っています。
シャチは哺乳綱鯨偶蹄目ハクジラ亜目マイルカ科に分類されます。これはイルカやクジラと同じ仲間です。その中でもシャチは特に大きく、体長約8~9メートル、体重約9トンにもなる者もいます。
体の色にも秘密があります。背中部分の黒色は、上空から見ると海面の色と溶け込み、腹部の白色は、海中から見ると空の色と溶け込んで見えため、狩りでは有利になります。
さらに、目の近くにある白い模様は「アイパッチ」と呼ばれ、個体を見分ける目印になります。また、他の生物に対して自分たちの進行方向を惑わせる効果もあります。
そんなシャチですが、高い知能と強い社会性が有名です。特に知能の高さは、狩りの方法に活かされており、サケやニシン、ホッケなどの魚類から、アザラシやクジラといった海獣まで、いずれの生物も考え抜かれた方法で捕食されています。
シャチの知能の高さを示すエピソード
シャチは基本的に、「ポッド」と呼ばれる10~40頭の群れを作ります。この群れは、メスを中心とした母系社会であることも大きな特徴です。彼らは群れで協力して狩りをしたり、子育てや仲間を助けたりしながら生活をしていますが、その行動は実に工夫されたものが多く、知能が高くなければできないことばかりです。
そこで、これまでに世界各地で報告されているシャチのエピソードを通して、彼らの知能がどのくらい高いかをご紹介します。
子供は群れでガードする
群れの皆で協力して行う子育てには、人間の子育てと似た行動を見ることができます。母親が狩りに出たり食事をしたりする間は、同じ群れの中のメスが、子供の面倒を見るベビーシッターのような役割を担うのです。
他のシャチに対して思いやりを見せる
また、我が子の死についても認識しているようです。2018年にアメリカ、ワシントン州のオリンピック半島沖で、子供の亡骸を16日間も離さずに泳ぎ続けていた母シャチの姿が確認されました。
さらには、お年寄りのシャチも思いやりの行動を見せるという特徴があります。繁殖能力を失った高齢のメスシャチは、人間のおばあちゃんように、孫の面倒を見たり、食料を皆に共有したりといった、仲間のことを思いやる行動をします。年長者が若者のために、自分が今までに得た知恵や生きる術を伝授しているのです。
そのため、シャチはメスの方が長生きします。メスが繫殖能力を失っても生き続けるというのは、生物の中でも珍しいと言われています。
獲物にマッチした狩りの方法を実践している
例えば、シャチの狩りの方法で有名な「マッコウクジラの狩り」についてご紹介しましょう。マッコウクジラはシャチよりも体が大きいため、普通に戦うとシャチに勝ち目はありません。そこで、シャチはある工夫をして、この大きなマッコウクジラを捕まえます。
シャチは、マッコウクジラが持っている「息継ぎをする習性」に目を付けました。マッコウクジラが出すクリック音で位置を把握し、マッコウクジラが息継ぎしようと水面に上がるタイミングで妨害をし、溺死させるのです。こうしてシャチは自分たちよりも大きなマッコウクジラを簡単に仕留めることできます。
一方、「カモメの狩り」では、全く違った方法を用います。まず、シャチはカモメの餌になる魚を集めます。集めた魚を海水面に吐き出し、カモメをおびき寄せ、近づいてきたところを捕獲します。
このほかにも、アシカやアザラシの場合は、浜辺にいる彼らを目掛けて自ら突っ込んで行き、サメやエイの場合は、彼らの体をひっくり返し抵抗できなくさせます。さらには、ニシンのような群れで行動する魚の場合は、海面付近まで追い込み大群を分裂させて捕食します。
音波を使って位置情報を得ている
つまり、自ら音を発した後、その音の波が物体に当たった反射音を感知し、その物体との距離や大きさなどを認識するのです。このエコロケーション(反響定位)は、イルカやコウモリなども用いていますが、シャチのエコロケーション(反響定位)は非常に正確であると言われています。
ちなみに、シャチは、このクリック音を別の方法でも用いています。狩りの際には、音波が凝縮した状態のクリック音を出し、獲物に当てて麻痺させるのです。
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狩りは隊列を組んで効率的に行う
シャチは狩りを行う際に、群れの中でさらにグループを作ります。そして先頭を泳ぐグループが疲れてしまったら後ろについていたグループが先頭に来る、といったように隊列を組み換えながら進んでいきます。このような協力プレーによって体力を温存し、獲物に挑むのです。
人間との関係について
人間とシャチの交流は、約60年前に初めて捕獲に成功したことから始まりました。それまではシャチのことを海の危険な生物としか認識していませんでしたが、研究が進められるうちに、人間を襲わないことや人懐っこいことが分かり、現在のように多くの人から愛される人気の海洋生物になりました。
しかし、シャチには危険な一面もあります。過去に水族館で飼育されていたシャチがトレーナーを溺死させてしまった事故もあるからです。シャチはただ遊んでいただけという説もありますが、本来のシャチの強さを忘れてはいけないことを痛感されられた事故となりました。
このような事故を受けて、水族館での飼育について慎重に考えるべきだという意見もあります。シャチは広大な海を泳ぐ生物です。狭い水族館にいることでストレスが溜まり、人間を敵視してしまう恐れもあると言われています。
シャチの発声に見る知能の高さ
コールは群れによって異なったものを使用しています。つまり、知能の高いシャチは、様々なコールを使い分けることできるのです。これは人間でいう方言のようなもので、実際に人間の方言と同様、生息区域が近いと同じような方言を持っています。
この方言は様々な役割を担っています。仲間かどうかを見極めるだけでなく、子孫繁栄の際にも役立ちます。シャチは近親との交配を避ける習性を持っているため、自分たちとは異なったコールを使う相手を選ぶことがあります。
また、この方言は、群れの中で継承されていると言われています。このような仕組みを形成して集団行動を行うことができるということは、シャチが知能の高い生物だという証拠です。
人間の言葉に反応して模倣しようとする
人間が繰り返し伝えた回数は、わずか17回ほどでした。この実験結果により、知能の高さとともに模倣能力の高さを証明することができました。これにより、シャチが使う方言は後天的に身につけているという説が有力になってきました。
音声の波形が人間に近いとされる
ちなみに、今回の実験で行われた模倣はあくまでオウム返しのため、決して言葉の意味までは理解できていないだろうと言われています。
シャチの生態について
シャチは環境に適応する能力も高いため、世界各地の海に生息することが可能で、中には河口域で生息するシャチもいます。泳ぐスピードは時速約50kmと非常に速く、1日で100kmほど泳ぐこともできるほどの持久力も持っています。
先述のとおり、シャチは群れで行動しますが、母系社会のため中心となっているのはメスです。寿命も、オスは30~38年、メスは46~50年と言われており、メスの方が長いです。
また、シャチの赤ちゃんは育てるのが難しく、出産後の生存率はなんと50%です。シャチは水中で呼吸ができないため、生まれた直後から水面に上がって呼吸をする必要があります。そのため、お母さんは赤ちゃんの体を水面まで押し上げてあげなくてはいけませんが、上手くいかず亡くなってしまう赤ちゃんが多いのです。
無事、子供が育ち始めたら、狩りの練習を始めます。群れの大人たちは、子供のために練習用の獲物を持ってくるのです。ちなみに、この練習用の獲物は、殺さずに逃がす姿が確認されています。子育てにおいても、シャチの知能と社会性の高さが分かります。
シャチは高い知能を持った生物であることを理解しよう
基本的に、シャチの性格は好奇心旺盛で、人間を襲ったという報告はほとんどありません。しかし愛らしい見た目だけで判断するのは危険です。先述のとおり、シャチは群れで活動するため、高い知能を持ったイルカや、自分たちよりも大きなクジラまでも、協力プレーで捕食してしまう生物です。さらに群れに対する仲間意識もあるため、仲間が傷つけられた場合は復讐もできるのです。
シャチは、非常に高い知能を持った、まさに「海の王者」です。今後も人間とシャチが仲良く共存していくためには、シャチのことを正しく理解して正しく接する必要があります。