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「呷る」の読み方
その「あおる」は「呷る」?それとも「煽る」?
「呷る」ってどういう意味?
飲み干さないと使えない
「呷る」と「煽る」の由来は同じ
「呷る」と「煽る」はここが違う!
ここでは、本来の「煽る」の意味や使い方を見ていきましょう。
「煽る」の意味は?
カーテンが風に揺らめく様子やうちわで風を起こす動作、誰かを焚き付けて動かしたりデモを起こしたり、という動きを表すのが「煽る」です。「呷る」のように、何かを飲む意味はありません。「勢い」という共通点はありますが、現在では全く違う意味になっています。
元々は「煽る」だけだった
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「呷る」と「煽る」の違いはこうして覚える!
覚えるコツは漢字の違い!
覚えるコツは「呷る」は「口」、「煽る」は「扇」です。「呷る」の漢字には「口」が、「煽る」の漢字には「扇」が入っていますから、「どっちだったかな」と迷った時には思い出してください。
「呷る」に似た言葉はある?
意外に多い!似ている言葉
呷る
意義素:飲み物などを勢い良く飲むこと
類語:呷る ・ 飲む ・ 飲み干す ・ 一気飲みする ・ グイっと飲む ・ 呑む ・ イッキする ・ 勢いよく飲み干す
キーワードは「勢い」
「呷る」と飲み干すの違いは?
ちびちびと少しずつ飲んでも最後まで飲んでしまえば「飲み干す」ですが、それは「呷る」にはなりませんので、注意が必要です。
「呷る」はこう使う!
お酒を「呷る」
何か問題が合ったのだろうか、と感じさせます。
・妻は猪口になみなみと注いだ日本酒を呷ぎ、おかわりちょうだい、と次をねだった。
ひと息に飲ませることで、妻のお酒好きが伝わります。
・月の見える縁側で、父親は炙ったスルメを肴に焼酎を呷る。
父親が月見をしている情景が、「飲む」よりもよりリアルに浮かんできます。
「呷る」でイメージをふくらませる
腹立たしい彼女を「呷る」で重ねて表現しています。
・ゲームに負けた彼は、覚悟を決めた様子でショットグラスのウォッカを呷った。
ウォッカなどの強い酒にも「呷る」は似合います。
・女性は頭を下げ「うちの主人、毎日お酒を呷るばかりで働かないんです」と零した。
少し比喩的ですが、よく使われる表現です。「酒を飲む」より痛飲のイメージが強くなります。
・次々とカクテルを呷る彼女を見て、隣の客が窘めるように声を掛けた。
「呷る」が適さないお酒や飲み方だと、このような表現もできます。
・まずは乾杯だ、と彼はシャンパンをこちらへ傾けたあと、瓶ごと呷った。
乾杯の豪快さを表現するにも、「呷る」は使えます。
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お酒以外を「呷る」
ぐびぐびと飲む先輩の姿がイメージできます。
・先を急かす彼女を宥めながら、俺はグラスの水を呷った。
急いでいる表現にも、「呷る」は使いやすい言葉です。
・師は私を前に「もうこれで思い残すことはない」と頷いたあと、毒を呷った。
辞書では酒と共に、毒が挙げられていることがあります。
・その子は背を向けて、慌てた様子で缶ジュースを呷り始めた。
取られないよう、慌てて飲んでいる様子が伝わります。
・畑仕事を終えた爺さんは、汗を拭いながら俺の作った薬草茶を呷る。
乾いた喉を潤す表現にも、「飲む」より勢いが加わるので表現です。
・「早く起きないからでしょ」と言う母親を横目に、俺は冷めた味噌汁を呷った。
詳細を書かなくても、遅刻しそうで急いでいる情景が伝わります。
お酒と「呷る」は相性がいい
文章での「呷る」の上手な使い方
・妻は猪口になみなみと注いだ日本酒を呷ぎ、おかわりちょうだい、と次をねだった。
・妻は猪口になみなみと注いだ日本酒を勢いよく飲んで、おかわりちょうだい、と次をねだった。
このように少し冗長になります。また、最初の文章では奥さんの性格も掴めそうですが、あとの文章ではぼやけています。
また、「呷る」という言葉自体の持つ印象や力もあります。例文の一つ目は短い文章ですが、「呷る」と「勢いよく飲んだ」を入れ替えてみます。
・「もう無理なんだよ」と課長は言って、手元のビールを呷った。
・「もう無理なんだよ」と課長は言って、手元のビールを勢いよく飲んだ。
両者を比べると随分印象が違います。「もう無理だ」とやさぐれた課長の様子を表すには、「呷る」の方が伝わります。
「呷る」で文章の印象が変わってしまうこともある
例を挙げましょう。
・「そうね。これからの私達のこと、ちゃんと話しましょ」と妻は言い、誕生日のワインを飲んだ。
・「そうね。これからの私達のこと、ちゃんと話しましょ」と妻は言い、誕生日のワインを呷った。
前者だと、妻は誕生日のワインを手に明るい将来を夢見ているようにも捉えられますが、後者はどうでしょうか。「飲む」を「呷る」に変えただけで、なんとなく不穏な、夫婦で過ごす最後の誕生日のような印象になってしまいます。前後の文章がないので少々強引ではありますが、明るい場面の描写に「呷る」を使う場合は注意が必要です。明るい方向へ補正する表現がない場合には、「呷る」は使わないようにしましょう。
会話で使う時にも注意が必要
また、「あの人、昨日は酒を呷ってたよ」と「あの人、昨日は酒を飲んでたよ」だと、「大丈夫だろうか、何かあったのかな」と思わせてしまうのは前者の方です。メールでも「昨日、何してた」の返事が「お酒を呷ってた」だと心配される可能性があるので、誤解されたくない場合には違う表現を用いた方が無難です。「お酒」と「呷る」は相性のいい組み合わせですが、使い方によっては違う捉え方をされてしまうこともあります。
「呷る」という行為そのものを好ましく思わない方もいらっしゃいますので、注意が必要です。
使うのは仲間内が無難
ただ、目上の方、あまり親しくない方には使わない方が無難です。たとえ社長や取引先の部長が呷るところを見掛けてしまっても、会話では使わないようにしましょう。
「社長、どこにいらっしゃった」と尋ねられたら「向こうでシャンパンをお飲みになってました」が、「取引先の〇〇さんは」の場合は「あちらでシャンパンを召し上がってます」が無難です。「呷っていらっしゃいました」は語尾を丁寧にしても敬語にはなりませんので、使ってはいけません。
まずは呷ってみよう!
覚えるコツは「呷る」は「口」で、「煽る」は「扇」。肩の力を抜いて、まずは一本、缶コーヒーでも呷ってみましょう。