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「呷る」の意味と使い方・「煽る」との違い・類語・例文・読み方

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「呷る」の読み方

「呷る」は、あまり見かけない言葉です。「呷」の音読みは「コウ」、訓読みは「すーう」「あおーる」です(ー後は送り仮名)。常用漢字ではなく、JIS第2水準漢字として登録されています。「呷る」だと「あおる」と読みます。

その「あおる」は「呷る」?それとも「煽る」?

「あおる」と聞いた時、何を思い浮かべますか。「煽る」と「呷る」、現在では大きく分けて二種類の意味を持っています。ここでは「呷る」の意味と使用上の注意点、「呷る」と「煽る」の由来、もう一つの「煽る」の意味や「呷る」との違い、類語などをご説明します。

「呷る」ってどういう意味?

まず、「呷る」とは何でしょうか。「呷る」の意味は二つ、「お酒や毒などを一気に飲むこと」と「あおむけでぐいぐいと飲むこと」があります。仰ぐようにして、お酒などの飲み物を一気に飲む仕草や行動のことを「呷る」と呼びます。ちびちび、少しずつ飲む様子では「呷る」にはなりません。「呷る」では一気に、一息に、がポイントです。

飲み干さないと使えない

「呷る」は「仰ぐようにして飲み物を一気に飲む姿」を表現する言葉です。残らず飲み干さない場合には「呷る」は使えないので注意が必要です。まるで飲み干すような勢いで飲んでいる場合は「呷るように飲む」と書くのが無難です。

「呷る」と「煽る」の由来は同じ

「呷る」も「煽る」も、実は由来は同じです。元々は馬を急がせる時に、鐙を蹴って進ませることを「煽る」と呼びました。人ではなく、馬を焚きつける言葉でした。

「呷る」と「煽る」はここが違う!

「呷る」は「仰ぐようにして飲み物を一息に飲む姿」でした。では、もう一つの「煽る」はどんな意味を持つのでしょうか。近頃ではネット上でもよく目にするようになりましたが、あまり良い印象ではないように見受けられます。

ここでは、本来の「煽る」の意味や使い方を見ていきましょう。

「煽る」の意味は?

「煽る」の意味は大きく分けて四つ、「風によって物が動く様子、風を起こすような動作」、「他人を刺激したり焚き付けたりすること、扇動する行動」、「相場を上げるための買い付け」、「馬の鐙を蹴って進めること」です。

カーテンが風に揺らめく様子やうちわで風を起こす動作、誰かを焚き付けて動かしたりデモを起こしたり、という動きを表すのが「煽る」です。「呷る」のように、何かを飲む意味はありません。「勢い」という共通点はありますが、現在では全く違う意味になっています。

元々は「煽る」だけだった

実は「呷る」は、「煽る」の中に含まれます。現在は分けられていることが多いですが、辞書によっては今も「煽る」の中に「呷る」が含まれていることもあります。
「デジタル大辞泉(小学館)」:あお・る〔あふる〕【×煽る】の意味

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「呷る」と「煽る」の違いはこうして覚える!

飲み物に関係する「呷る」と風や扇動に関係する「煽る」、意味の違いがお分かりいただけたでしょうか。大事な場面で間違えないよう、うまく使い分けましょう。

覚えるコツは漢字の違い!

とはいえ「呷る」と「煽る」、あやふやになりがちです。迷った時に適した覚え方がありますのでご紹介します。

覚えるコツは「呷る」は「口」、「煽る」は「扇」です。「呷る」の漢字には「口」が、「煽る」の漢字には「扇」が入っていますから、「どっちだったかな」と迷った時には思い出してください。

「呷る」に似た言葉はある?

ここまで「呷る」については説明しました。しかし、今ひとつイメージが湧かない、他にもっと使える言葉を知りたいと思う方もいるでしょう。「呷る」のイメージを深めるために、似た言葉を探してみましょう。

意外に多い!似ている言葉

類語辞典で「呷る」を探すと、次のような表現が出てきます。

呷る
意義素:飲み物などを勢い良く飲むこと
類語:呷る ・ 飲む ・ 飲み干す ・ 一気飲みする ・ グイっと飲む ・ 呑む ・ イッキする ・ 勢いよく飲み干す

https://thesaurus.weblio.jp/content/%E5%91%B7%E3%82%8B

キーワードは「勢い」

類語辞典では、「呷る」は七つほどの表現に言い換えることができます。「飲み干す」「一気飲みする」「グイっと飲む」「呑む」「イッキする」「勢いよく飲み干す」など、どれも勢いを感じさせる言葉です。

「呷る」と飲み干すの違いは?

「呷る」の類語に挙げられた「飲み干す」。似ている言葉ですが、厳密に言えば違いはあります。「飲み干す」は、水を始めとしたお酒を最後まで「残さず飲む」、「一滴残らず飲む」、という意味合いの強い言葉です。一方、「呷る」は飲み干す動作そのものよりも「一気に」「ひと息に」という点に重きが置かれています。

ちびちびと少しずつ飲んでも最後まで飲んでしまえば「飲み干す」ですが、それは「呷る」にはなりませんので、注意が必要です。

「呷る」はこう使う!

では、実際にはどんな風に使えばいいのでしょうか。ここでは文章と会話について、それぞれ例を挙げていきます。

お酒を「呷る」

・「もう無理なんだよ」と課長は言って、手元のビールを呷った。
何か問題が合ったのだろうか、と感じさせます。

・妻は猪口になみなみと注いだ日本酒を呷ぎ、おかわりちょうだい、と次をねだった。
ひと息に飲ませることで、妻のお酒好きが伝わります。

・月の見える縁側で、父親は炙ったスルメを肴に焼酎を呷る。
父親が月見をしている情景が、「飲む」よりもよりリアルに浮かんできます。

「呷る」でイメージをふくらませる

・彼女はそう言って、腹立たしげにワインを呷った。
腹立たしい彼女を「呷る」で重ねて表現しています。

・ゲームに負けた彼は、覚悟を決めた様子でショットグラスのウォッカを呷った。
ウォッカなどの強い酒にも「呷る」は似合います。

・女性は頭を下げ「うちの主人、毎日お酒を呷るばかりで働かないんです」と零した。
少し比喩的ですが、よく使われる表現です。「酒を飲む」より痛飲のイメージが強くなります。

・次々とカクテルを呷る彼女を見て、隣の客が窘めるように声を掛けた。
「呷る」が適さないお酒や飲み方だと、このような表現もできます。

・まずは乾杯だ、と彼はシャンパンをこちらへ傾けたあと、瓶ごと呷った。
乾杯の豪快さを表現するにも、「呷る」は使えます。

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お酒以外を「呷る」

・先輩は、私の差し出したスポーツドリンクを遠慮なく呷る。
ぐびぐびと飲む先輩の姿がイメージできます。

・先を急かす彼女を宥めながら、俺はグラスの水を呷った。
急いでいる表現にも、「呷る」は使いやすい言葉です。

・師は私を前に「もうこれで思い残すことはない」と頷いたあと、毒を呷った。
辞書では酒と共に、毒が挙げられていることがあります。

・その子は背を向けて、慌てた様子で缶ジュースを呷り始めた。
取られないよう、慌てて飲んでいる様子が伝わります。

・畑仕事を終えた爺さんは、汗を拭いながら俺の作った薬草茶を呷る。
乾いた喉を潤す表現にも、「飲む」より勢いが加わるので表現です。

・「早く起きないからでしょ」と言う母親を横目に、俺は冷めた味噌汁を呷った。
詳細を書かなくても、遅刻しそうで急いでいる情景が伝わります。

お酒と「呷る」は相性がいい

「呷る」と言えば「酒」。真っ先に挙げられるほどお酒と相性のいい動詞です。お酒以外の飲み物でも、勢いのある描写に適しています。「勢いよく飲んだ」を「呷る」に書き換えるだけで、文章が引き締まることもあります。

文章での「呷る」の上手な使い方

例文の二つ目の「呷る」を「勢いよく飲んだ」にしたらどうでしょう。

・妻は猪口になみなみと注いだ日本酒を呷ぎ、おかわりちょうだい、と次をねだった。
・妻は猪口になみなみと注いだ日本酒を勢いよく飲んで、おかわりちょうだい、と次をねだった。

このように少し冗長になります。また、最初の文章では奥さんの性格も掴めそうですが、あとの文章ではぼやけています。

また、「呷る」という言葉自体の持つ印象や力もあります。例文の一つ目は短い文章ですが、「呷る」と「勢いよく飲んだ」を入れ替えてみます。

・「もう無理なんだよ」と課長は言って、手元のビールを呷った。
・「もう無理なんだよ」と課長は言って、手元のビールを勢いよく飲んだ。

両者を比べると随分印象が違います。「もう無理だ」とやさぐれた課長の様子を表すには、「呷る」の方が伝わります。

「呷る」で文章の印象が変わってしまうこともある

「飲む」は良くも悪くもないフラットな印象の動詞ですが、「呷る」は少し暗い、やさぐれた印象を与えることがあります。使い方によっては、文章の印象を大きく変えてしまうので注意が必要です。

例を挙げましょう。

・「そうね。これからの私達のこと、ちゃんと話しましょ」と妻は言い、誕生日のワインを飲んだ。
・「そうね。これからの私達のこと、ちゃんと話しましょ」と妻は言い、誕生日のワインを呷った。

前者だと、妻は誕生日のワインを手に明るい将来を夢見ているようにも捉えられますが、後者はどうでしょうか。「飲む」を「呷る」に変えただけで、なんとなく不穏な、夫婦で過ごす最後の誕生日のような印象になってしまいます。前後の文章がないので少々強引ではありますが、明るい場面の描写に「呷る」を使う場合は注意が必要です。明るい方向へ補正する表現がない場合には、「呷る」は使わないようにしましょう。

会話で使う時にも注意が必要

会話でも、「酒を呷る」「ビールを呷る」などは日常会話でも使いやすい表現です。ただ、「酒を呷る」と聞くと「ヤケ酒」のように感じて、自分がそう表現されることを快く思わない方もいらっしゃいます。

また、「あの人、昨日は酒を呷ってたよ」と「あの人、昨日は酒を飲んでたよ」だと、「大丈夫だろうか、何かあったのかな」と思わせてしまうのは前者の方です。メールでも「昨日、何してた」の返事が「お酒を呷ってた」だと心配される可能性があるので、誤解されたくない場合には違う表現を用いた方が無難です。「お酒」と「呷る」は相性のいい組み合わせですが、使い方によっては違う捉え方をされてしまうこともあります。

「呷る」という行為そのものを好ましく思わない方もいらっしゃいますので、注意が必要です。

使うのは仲間内が無難

「あいつ、どこ行った」「ああ、あっちでビール呷ってるよ」のやり取りは、皮肉や冗談が通じる気心の知れた仲間内なら問題ありません。

ただ、目上の方、あまり親しくない方には使わない方が無難です。たとえ社長や取引先の部長が呷るところを見掛けてしまっても、会話では使わないようにしましょう。

「社長、どこにいらっしゃった」と尋ねられたら「向こうでシャンパンをお飲みになってました」が、「取引先の〇〇さんは」の場合は「あちらでシャンパンを召し上がってます」が無難です。「呷っていらっしゃいました」は語尾を丁寧にしても敬語にはなりませんので、使ってはいけません。

まずは呷ってみよう!

今回は「呷る」について意味や使い方、「煽る」との違いについてご説明しました。基本的なことを押さえれば、「呷る」も「煽る」も難しい言葉ではありません。文章に使って自分の文章が変わるのを愉しむもよし、友達との会話で使ってみるもよし。どんな言葉でも同じですが、使わない限りは慣れません。使い続けるうちに使いどころが見えてきますから、大丈夫です。

覚えるコツは「呷る」は「口」で、「煽る」は「扇」。肩の力を抜いて、まずは一本、缶コーヒーでも呷ってみましょう。

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