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「あまねく」の意味と使い方・例文・漢字・「おしなべて」の違い

初回公開日:2018年10月23日

更新日:2020年03月02日

記載されている内容は2018年10月23日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

「あまねく」という言葉は、意味がよくわからない単語のひとつです。また類語としてしばしば「おしなべて」という単語があげられますが、両者の違いもわかりにくいところです。ここでは「あまねく」の意味と使い方、漢字表記を交えて説明いたします。

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「あまねく」の意味と使い方

「あまねく」は「広く、全体にわたって」という意味の言葉で「あまねく◯◯ている」という形で使います。例えば、世界的に知られている人物の名前のことを「彼の名はあまねく世界中に知れ渡っている」と表現します。

別の表現として「全体的に」「一般的に」「普遍的に」といった言葉で置きかえることもできます。

今回はあまねくの意味や使い方、例文、漢字表記の仕方を中心に、あまねくの類語や、その類語との違いなどをご紹介します。

あまねくは普段なかなか使う機会が多いとは言えない単語ですが、しっかり理解して円滑なコミュニケーションを心がけましょう。

「あまねく」の語源は古語

「あまねく」という表現は、「すみずみまで余すところなく行き渡っている」ことを意味する「あまねし」という古語が語源となっています。

鎌倉時代の文人、鴨長明が記した随筆『方丈記』の第二段に、1177年に平安京で起きた「安元の大火」という大火災の記述があります。

その一節に、燃え上がる炎でいたるところ真っ赤になっている情景を「あまねく紅(くれない)なる中に」(余すところなく炎が真っ赤に燃え上がる中に)という表現を見ることができます。

「あまねく」を使った例文

日常的にはあまり使うことのない「あまねく」という言葉ですが、意味や使い方はわかっても、実際にどのような使い方をするのかわかりにくいと思われる方もいるでしょう。ここでは実際に「あまねく」を使った例文を上げて解説いたします。

実際に使われそうな表現の例

「あまねく」は基本的に「文語」(文章語)として用いられ、「口語」(話し言葉)的表現ではあまり用いられません。通常は、以下のような文章例で用いられることが多いです。

彼の業績は世界にあまねく知られている

「ベートーヴェン、作曲家としての彼の業績はあまねく世界に知知られている」

楽聖として音楽史にその名を刻む作曲家ベートーヴェン、その彼の業績は世界中、誰もが知っているという意味です。

全国にあまねく周知されなければならない

「今度の法改正は全国にあまねく周知されなければならない」

今回行われる法改正は、非常に重要なので全国に知らない人がいないように知らされなければならない、という意味になります。

鮮やかな黄色が草原にあまねく広がっている

「菜の花のあざやかな黄色が草原にあまねく広がっている」

咲き誇る菜の花のあざやかな黄色い花が草原全体を埋め尽くすように広がっている、という情景を表現しています。

文学作品に見られる表現

前述のとおり、「あまねく」は古典文学作品によく見られる表現です。ここでは、文学作品に見られる例を紹介しましょう。なお、古典文学では「あまねく」を「遍く」と漢字表現しているのが一般的です。

主人は趣味が遍く、客が八方に広いから

「梅水の主人は趣味が遍く、客が八方に広いから、多方面の芸術家、画家、彫刻家、医、文、法、理工の学士、博士、俳優、いずれの道にも、知名の人物が少くない。」


明治後期から昭和初期にかけて活躍した小説家、泉鏡花の作品にみられる例です。「梅水の主人はあらゆる趣味に精通しており、訪れる客もさまざまなジャンルの芸術や学問で名を知られる人物が多い」という意味になります。

以て普く後進の少年を導くことなり

「一国の教育とは、有志有力にして世の中の事を心配する人物が、世間一般の有様を察して教育の大意方向を定め、以て普く後進の少年を導くことなり。」


明治時代の教育者であり思想家、現在では一万円札の肖像画でも知られる福沢諭吉の著作に見られる表現です。「国家の教育とは、志と才能を持ち、世の中の行く末を案じる者が、世情を考えながら教育方針を定めて、すべての年少者を導くものである」という意味です。

強権の勢力は普く国内に行わたっている

「強権の勢力は普く国内に行わたっている。現代社会組織はその隅々まで発達している」

明治時代の歌人、石川啄木が書いた評論「時代閉塞の現状」に見られる表現です。「(国家)権力の勢力は、国内の隅々まで行き渡って、社会組織も隅々まで発展している」という意味となります。

「あまねく」の漢字表記の種類

現代では「あまねく」と漢字を開いて表記されることが多いですが、古くは漢字表記が用
いられることが一般的でした。「あまねく」の漢字表記には「遍く」と「普く」の二種類
があります。

漢字表記「遍く」

「遍」は音読みで「へん」と読みます。「全体に行きわたる」(あまねく)という意味の他に、動作や作用の回数を数える場合にも用います。

「3遍ジャンプする(3回ジャンプする)」という用い方をし、先にくる後によっては「べん」「ぺん」と読むこともあります。

漢字表記「普く」

「普」は音読みでは「ふ」と読みます。意味は「遍」と同じく「全体に行きわたる」であり、「普及」や「普通」といった用語にも用いられますので「遍」よりもなじみぶかい用語でしょう。

また、ドイツの地方にある「プロイセン州」や、その母体となった「プロイセン王国」の漢字表記でもあり、「普仏戦争」(19世紀に起こったフランスとプロイセンの戦争)といった歴史用語にも使われています。

「普」と「遍」で「普遍」

どちらも「全体に行きわたる」という意味を持つ「普」と「遍」ですが、これらを合わせて「普遍(ふへん)」という言葉で用いることもあります。

「全体に広く行きわたり、すべてに例外なく当てはまる」ことを意味し、「普遍の原理」や「普遍的な原則」というかたちで用います。

「あまねく」の類語

「あまねく」は文語表現のため、日常的な会話には使いにくい言葉ですが、口語表現として置きかえることのできる類語は数多くあります。それぞれニュアンスや意味合いに違いがありますので、その種類毎にまとめて、代表的な類語を紹介しましょう。

「すべての」「あらゆる」「ひとつ残らず」

これらの語は「すべてを対象とするさま」という意味で「あまねく」の類語となる単語です。「世界の人々にあまねく知られる」であれば「世界の人すべてに知られる」と置きかえることができます。

「たいてい」「一般的に」「なべて」

これらの単語はある事例が全体的に共通することを示す意味で、「あまねく」の類語と言えます。「日本人はあまねくカレー好きである」なら「日本人は一般的にカレー好きである」に置きかえられます。

「どこもかしこも」「満遍なく」「所構わず」

「広範囲にわたり全般的に」という意味で、「あまねく」に置きかえることのできる類語です。「雪が校庭をあまねく覆っている」なら「雪が校庭を満遍なく覆っている」に置きかえることができます。

「あまねく」と「おしなべて」の違い

「あまねく」の類語として、しばしば混同が見られる単語に「おしなべて(押し並べて)」があります。双方とも「全体的に」「一般的に」というニュアンスを持つ言葉としては類語であると言えますが、実際に意味するところはだいぶ違いがあり、使いどころも大きく違ってきます。

「あまねく」は集まり全体を指す

「あまねく」は特定の範囲の集まり全体を指す言葉です。

「ベートーヴェンの業績は世界にあまねく知られている」であれば、「世界中の人すべてがベートーヴェンの業績を知っている」という意味になります。つまり、「あまねく」には「例外なく」というニュアンスが含まれていることになります。」

「あまねく」=「ある範囲に含まれる対象全体が該当すること」です。

「おしなべて」は全体の中の例を示す

一方、「おしなべて」は、特定の範囲の集まりの中で、特定の事例に該当すること全体を示す言葉になります。

例としては「若年層のテレビ視聴率はおしなべて低くなっている」という文章の場合、全体としての「テレビの視聴者」の中の「若年層」の視聴率が低下しているという意味になります。

「おしなべて」=「全体の中のある層が該当すること」

「あまねく」は肯定的、「おしなべて」は否定的

意味合いとは別に、「あまねく」と「おしなべて」には使用されるニュアンスにも大きな違いがあります。「この曲は世界中の人にあまねく知られている」「ボランティア精神は全国にあまねく広まっている」というように、「あまねく」が示す「広まっている」対象は文脈の中で肯定的に捉えられます。

一方で「おしなべて」は「近年、小中学生の理科や科学に対する興味はおしなべて低下している」「そんな趣味を持つやつはおしなべてレベルが低い」と言ったように。指し示す事柄を否定的に捉える意味になります。

「あまねく」は示す対象が広まっていることを肯定的に捉え、「おしなべて」は示す対象(例)が広がることを否定的に捉える言葉になります。

「すべからく」は「あまねく」の類語ではない

「おしなべて」と並んで、「あまねく」と同じような意味としてしばしば用いられる言葉に「すべからく」があります。しかし、「すべからく」は本来「あまねく」とはまったく違う意味であり、この2つの言葉は類語ではありません。

「すべからく」の例文

「すべからく」を用いた例文として、しばしば次のような例を見ることができます。

「放課後になって生徒たちはすべからく下校した」

この場合、「すべからく」は「すべて」という意味で用いられていますが、実は本来「すべからく」には「すべて」という意味はありません。つまり、このような用い方は誤用です。

「すべからく」の本来の意味

「すべからく」という言葉は、本来は「すべからく◯◯すべし」という形で用いられます。意味は「当然するべきこととして◯◯すべきである」となります。

つまり「すべからく」には「すべて」という「あまねく」の類語としての意味はありません。「すべからく」が「すべて(全て)」と同じ意味でないことは、漢字表記を見ればわかります。「すべからく」の漢字表記は「須らく」となります。

「すべからく」の正しい例文

「すべからく」を本来の意味で正しく用いた例文としては、このようなものが上げられます。

「労働は国民の義務であり、だから国民はすべからく労働するべきである」

意味は「国民は当然するべきこととして労働すべきである」となります。これを「国民はあまねく労働をすべきである」に変えると「国民はすべて労働するべきである」となり、意味合いが変わってきます。

4割の人が「すべからく」を誤解

「すべからく」という言葉が誤解されるのは「すべて」と語感が似ていることや、語尾が「あまねく」と似ていることなどが理由です。

最も誤用されやすい言葉のひとつとされており、ある統計ではおよそ4割の日本人が「すべからく」を「すべて」という意味で誤用しているとされています。

「すべからく」と「あまねく」はまったく違う意味の言葉ですので、誤用には注意しましょう。

「あまねく」の活用形

「あまねく」の語源は古語の「あまねし」であることは前述したとおりです。「あまねし」は文語形容詞で、いわゆる「ク活用」として活用され、その語尾は「く・く・し・き・けれ・◯」と変化します。すなわち、「あまねし」は以下のように活用されます。

「あまねく・あまねく・あまねし・あまねき・あまねけれ」

より馴染み深い用語としては「清し」(清く・清く・清し・清き・清けれ)や「おもしろし」(おもしろく・おもしろく・おもしろし・おもしろき・おもしろけれ)と同じ活用形です。

「あまねく」の2種類の使い方

「あまねく」という言葉が用いられる文章を見ると、大きく2種類に分けられます。

ひとつは「世間にあまねく知られる」のように「動詞」にかかる形、もうひとつは「あまねく世界に知られている」という名詞にかかる形です。

「あまねく」の文法上の正しい使い方

「あまねく」は文法的には「あまねし」の活用形から生じた連用修飾語に分類されます。連用修飾語として良く用いられるわかりやすい例として「非常に」がありますが、これは「非常に重い」「非常に暑い」など、動詞にかけて使います。

「あまねく」も連用修飾語ですから、本来文法的には動詞にかかる形で用いるものであり、「あまねく知られる」という使い方が正しい、ということになります。

名詞にかかる使い方は古くからある

文法的には動詞にかけて使うのが正しいですから、「あまねく世界」といった名詞にかかる使い方は本来は誤用です。

しかし、実際には「あまねく」を名詞にかけて用いる用法は一般的に見られるもので、古典文学などでもその実例を見ることができます。

名詞にかかる例文

例えば、前述した古典における「あまねく」の例文のひとつ、福沢諭吉の文章を見ると

「以て普く後進の少年を導くことなり


とあり、「あまねく」は「後進の少年」という名詞にかかっています。

「あまねく(名詞)に」という用い方をする場合、読み手はその後に「◯◯する」という動詞が続くことを想定できます。つまり、「あまねく」とその後に続く名詞は入れ替えることが可能です。前述の福沢諭吉の例文も

「後進の少年を普く導くことなり」

と、「名詞」と「あまねく」を入れ替えても文章の大意は変わりません。「あまねく(名詞)」という使い方も、文章の修辞的表現としては間違いとは断定できません。

「あまねく」は文語であることに注意

「あまねく」は古語を語源とする文語表現です。意味としては「広くすべてにわたって」として用いることができますが、日常的な会話においては用いにくい言葉であることは確かです。

「クラスメートにあまねく連絡する」という表現では違和感が生じてしまいます。この場合は「あまねく」と表現するよりも、「クラスメート全員に連絡する」とした方がわかりやすく違和感がありません。

日常的な会話=口語体として「あまねく」は適していないので、不必要な乱用は避けるべきです。あくまで「あまねく」は文章表現に用いる言葉と考えた方が適切です。

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