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「気をやる」の意味は?使い方と類語・英語表現や花魁言葉も紹介

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気を遣う、気を回す、気にかける、――「気」を使った言葉は数多くあります。しかし、どれをどんなときに用いればよいか、社会人であれば理解しておきたいものです。

何気なく使った言葉でも、そのシーンに適さないものだったら、相手の心象を悪くしてしまいます。中でも、「気をやる」がその一つです。「気を配る」「思いやる」と同じように使ってしまいがちなこの表現は、ビジネスや冠婚葬祭の場にふさわしいものでしょうか。

本記事では、「気をやる」の意味と由来、その使い方を分かりやすく説明していきます。また、「気をやる」と似た言葉や、英語での表現方法、他にも知っておきたい様々な日本語を紹介します。

この記事を読むことで、不適切な場で「気をやる」を使うことがなくなります。また、関係する様々な言葉を知ることで、昔の女性たちの思いを偲ぶことができるでしょう。

履歴書や自己PRの文章を考えている方は、ぜひ一読をおすすめします。

「気をやる」はどのような意味の言葉?

「気をやる」は性的な表現の一つといわれています。性的絶頂、オーガニスムに達するという意味で使われていたようです。快感のあまり、失神や気絶してしまうこともあり、そうした「限界を超える」という印象もあります。

また、「やる(遣る)」の意味の一つとして、「すっきりしない心やふさぎがちな気持ちを、何かでまぎらす」というものがあります。現代でも、ニュアンスとして通じるものがあるようです。

「気をやる」の意味とは?

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「気をやる」とは、性的絶頂に達する、という意味で使われていました。それでは、実際には誰が、どんな風に用いていたのでしょうか。また、現代で使用されていないということは、いつ頃まであった言葉なのでしょうか。

以下では、「気をやる」が使われていた時代、場所、またその人々について説明します。もともとは、特定の時代の、特定の場所だけで用いられた言葉だったのです。その意味からは、当時の人々の様々な気持ちを感じることができます。

「気をやる」は江戸時代の古語

「気をやる」が使われていたのは、二百年以上も前です。江戸時代の遊郭で、主に遊女たちの間で言い交されていました。

前述したように、現代ではほとんど死語となりました。死語になるとはつまり、不要、あるいは不十分だということです。記録が残っているとはいえ、江戸時代においても、「気をやる」はあまり頻繁に使われた言葉ではない可能性があります。

遊女が特定の客を好きになるという意味もある

現代でも、心から相手を意識することを「本気になる」といいます。「気をやる」には、特定の客を好きになるという意味もありました。

遊女としてやっていく上で、誰かを好きになってしまっては不都合が多かったことでしょう。例えば、もう他の男を相手にするのが嫌になったり、ついには仕事をやめてしまったり、ということがあったと想像します。

ですから、遊女たちは「容易に客には気をやるな」という風に戒められていました。また、遊郭における隠語として、性的な内緒話をする際にも用いられていたようです。

「気をやる」の使い方と英語表現

ここまで、「気をやる」の意味と、それが使われていた時代、場所、人々について記してきました。何気なく使っていた可能性のある表現が、じつは江戸時代の遊郭の言葉だったとは驚きです。

以下では、「気をやる」の使い方と、似たような言葉、また英語での表現方法を説明していきます。読者の方々も知っていたり、使っていたりする言葉があるかもしれません。

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「気をやる」の使い方

意味と語感からして、直接相手に「気をやる」「気をやった」などと使うことは少なかったでしょう。ですから、前述のように「容易には気をやるな」と注意として伝えたり、短歌や川柳、小説の中で用いたりが普通の使い方だったと考えられます。

「気をやる」は、「思いやる」や「気を配る」と誤って使いがちです。もし、代わりに使ってしまったら大変です。

例えば、
・会社で働くチームは、お互いに思いやることが大切です。
→会社で働くチームは、お互いに気をやることが大切です。
・どのお客様にも気を配り、良質なサービスを心がけます。
→どのお客様にも気をやり、良質なサービスを心がけます。
と書いてしまったら、まったく異なる意味となります。

現代では、あくまで小説の中や、恋人たちの間で隠語として用いられています。

「気をやる」の類語

「気をやる」が使われなくなったのち、現代では性的絶頂を迎えることに「オルガスムス」「エクスタシー」という外来語を用いることが多くなりました。それは、そうした直接的な身体感覚を言葉で表すことに、羞恥心を覚えるからと推測します。

日本語における「気をやる」の類語としては、「果てる」「昇天する」などが挙げられます。また、スラングとして「イク」と表現する方も多いことでしょう。

「気をやる」の英語表現

「気をやる」は、前述したように「性的絶頂を迎える」という意味でした。それでは、英語で表現をするとどうなるでしょうか。直訳して、”give my heart”とは言いません。

英語では、climax、ecstasyという語が当てられます。口語では、もっとも一般的なのが”I’m coming!!”という表現です。日本では「行く」と考えられている絶頂が、欧米では「来る」とされています。快感が込み上げてくる感じが、より強く表現されているといえるでしょう。

「気をやる」以外の花魁言葉

「気をやる」以外にも、遊女たちが使う「花魁言葉」がありました。せっかくの美女に仕上がったのに、話し始めたら「オイラは酒が好きだべさ」では台無しです。また、縁起が悪いものを忌み、別の言葉に言い換えるものも多くありました。客商売ならではの慣習といえます。

ここでは、すべてを記すことはできません。しかし、当時の女性たちの気持ちを感じられるものを4つ紹介します。

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わちき

遊女たちは、自分のことを「わちき、あちき」あるいは「わっち」等と呼んでいました。基本的に、「わちき」「わっち」の語は多く文献に残されています。一方、「あちき」は該当がありませんでした。後世に伝わるうちに、音が変化したものと考えます。

「オイラ」より上品で、「わたし」というよりくだけていて、かわいげがあります。現代でいえば、「ウチ」みたいな感覚でしょう。

ありんす

花魁言葉の中でも有名なのは、語尾の「~ありんす」です。これは、様々な地域から集まって来る遊女たちが、そのお国訛りを隠すために使われたようです。話し言葉の中でも、語尾はもっともその特色がよく出るからでしょう。

遊郭は、客が高額な金を支払って楽しむ場所です。それをもてなす側は、身なり、対応、いずれも上質なものでなければなりませんでした。話し言葉を重視するのは当然といえます。

上記の「わちき」と合わせると、「わちきは酒が好きでありんす」となります。

いさみ

「わちきは酒が好きでありんす」と聞いて、何か違和感はありませんか。そう、「酒」という語がいかにも直接的で、無粋に聞こえます。この、酒に用いられた花魁言葉が「いさみ」です。

遊女の酒といえば、樋口一葉「にごりえ」の主人公、お力が連想されます。彼女は自身の生涯を打ち明けるにあたって、大きな湯呑でがぶがぶと酒を飲んでから語り出します。このように、自分を励ます、勇気を出させるという気持ちが、「勇み」に現れています。

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こそぐったい

「気をやる」という語が用いられたのと同様、花魁言葉には性的な意味を持つものが多くありました。その一つが、「こそぐったい」です。くすぐったい、と似たように聞こえますが、そのニュアンスは少し違います。

これは、古い日本語である「こそぐる」から生まれた言葉です。「こそぐる」から「こそぐったい」が生じ、それがのちに「くすぐったい」に変わりました。現代では心理的な意味合いでも使われますが、当時は、主に性的な感覚を表すものとして使われたようです。

「気をやる」は江戸時代に使われていた言葉

以上、ご紹介してきたように、「気をやる」は江戸時代の遊女たちの間で使われていました。その後、小説や恋愛関係の中で使われてはいますが、普通の日本語としてはほぼ死んでしまった言葉です。

「思いやる」「気を配る」などと同じ意味だと考えて使ってしまうと、大変なことになります。また、遊女たちは、誰かを好きになりたくても、誰をも好きになることは許されませんでした。そんな彼女たちの心情を考えると、何だか味わい深い言葉に聞こえてきます。

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