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「忘れる」は敬語表現できるのか
「忘れる」という言葉は、日常生活の中で私たちが普通に使っている言葉です。ビジネスシーンでもよく使われますから、「忘れる」の敬語表現も心得ておくべきです。あなたは普段、「忘れる」の敬語表現、うまく使えていますか。
「忘れる」の敬語表現はビジネスでもよく使われる
「忘れる」という言葉は、ビジネスでも頻繁に登場します。ビジネスシーンで使う限りは、単に「忘れる」「忘れた」の表現では済まされません。上司や取引先の人には、敬語を使う必要があります。
言葉には、尊敬語、謙譲語、丁寧語といった敬語がありますが、「忘れる」も例外ではありません。「お忘れになる」「失念する」「忘れました」と、ビジネスシーンでは、話す相手に合わせて、「忘れる」の敬語表現が頻繁に使われます。
「忘れる」の敬語表現の例文4つ
「忘れる」の敬語表現は、大きく分けると3パターンあります。丁寧語として「忘れます」、尊敬語として「お忘れになる」、謙譲語として「失念する」の3種類があり、ビジネスシーでもよく使われます。以下、「忘れる」の敬語表現をどのように用いるのか、具体例を挙げて説明していきましょう。
敬語1:失念しておりました
「失念」とは「忘れる」の謙譲語です。
自分を下げることによって相手を敬う気持ちを表現できる言葉ですから、「失念」を使うと真摯な気持ちが伝わりやすくなります。
例えば、上司から依頼された資料を準備し忘れていたとき、「失念しておりました。申し訳ございません」などと言います。「忘れていました」よりもフォーマルで、申し訳なさが相手により伝わります。「失念」は、社会人なら絶対に使い方を心得ておきたい言葉です。
敬語2:失念してしまいまして
例えば、取引先とのミーティングの日時や場所をメモした紙をうっかり紛失し、詳細がわからなくなってしまったときは、相手に再確認する必要があります。このようなとき、「失念してしまいまして」の表現を使うといいでしょう。
「明日のお打ち合わせの場所を失念してしまいまして、申し訳ございませんが、もう一度ご確認させていただいてよろしいでしょうか」などと言います。
敬語3:お忘れになる
「お忘れになる」は「忘れる」の尊敬語ですから、「忘れる」行動を取ってしまったのが自分より目上の人の場合に使います。
例えば、上司が書類の準備を忘れていたようなとき、そのことを別の人に伝えるのに、「部長が書類の準備をお忘れになった」といった表現をします。
ただし、同じことを社外の人に伝えるときには、「部長が書類を準備するのを失念しておりました」などと謙譲語で伝えなくてはなりません。
敬語4:○○しそびれていました
「失念」は、ビジネスではとても便利な言葉です。
とはいえ、乱用していると「またか」と信頼を失ってしまいますから、あまりに軽々しく使い過ぎないことも大切です。
「ちょっとし忘れていた」といった局面に遭遇したとき、「失念しておりました」でも構わないのですが、そこまで大したことではないときには、「○○しそびれておりました」と言うのもひとつの手です。「忘れていた」よりポジティブで、相手の心象も違ってきます。
【相手別】「忘れる」の敬語の使い方2つ
「忘れる」に限らず、日本語はひとつの言葉に尊敬語や謙譲語などの敬語が存在し、しかも、相手によっても使い方が異なりますから、なかなか厄介です。ここでは、相手別に「忘れる」の敬語の使い方例を紹介します。
相手1:上司
例えば、課長が外出中に課長宛に電話がかかってきて、自分が受けて要件を聞いたとします。
ところが課長に報告し忘れていたとき、「申し訳ございません。すっかり失念しておりました」などと言って謝ります。
課長宛の電話を受けたのが部長で、課長への報告を忘れていることを部長に指摘するなら、「お忘れになっていらっしゃいませんか」となりますし、課長にその旨を伝えるなら、部長がお忘れになっていて」といった表現をします。
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相手2:取引先
取引先の人は、年齢や肩書きにかかわらず、目上の人ですから、「忘れる」の敬語表現は、上司の場合と同じように使います。
自分が何かを忘れていたときは「失念しておりました」と謝りますし、相手が何かを忘れているときは「お忘れになっていらっしゃいませんか」などと打診します。
既述したとおり、取引先の人に、自分の上司が「忘れた」ことを詫びるときは、「うちの部長が失念しており」などと謙譲語の「失念」を用います。
ビジネスシーンの敬語をマスターするなら
本書では、敬語の基本的なルールのほか、「相談する」「苦情を言う」など、ビジネスでよく使う言葉の敬語について、しっかり解説されています。取引先や上司、先輩など相手に合わせた使い分けや、電話での敬語マナー、文書・手紙などの敬語にも対応しています。
ビジネスシーンにおいて臆することなく敬語が使えると、「できる人」と一目置かれます。そんなビジネスパーソンを目指す人なら、ぜひ手元に置いておきたい本と言えるでしょう。
「失念」とは
ビジネスシーンにもっとも適した「忘れる」の敬語表現は「失念する」です。自分が何かを忘れてしまった際に使う言葉ですが、謙譲語ですから、自分自身を下げて「忘れていた自分」を表現することになるため、忘れてしまったことの申し訳なさを、より真摯に相手に伝えられる言葉と言えるでしょう。
「失念」については、これまでさんざん触れてきましたが、ここでもう一度、おさらいをしておきましょう。
「忘れる」の謙譲語
繰り返しになりますが、ビジネスでよく使われる「失念」は、「忘れる」の敬語表現です。敬語には、尊敬語、丁寧語、謙譲語と3つの種類がありますが、「失念」は謙譲語で、自分を下げることで相手を立てる目的で使います。
「失念」を使うと、自分の失敗(忘れたこと)をより重く受け止めて反省している印象が強くなりますから、相手も寛大な気持ちになるはずです。こうしてビジネスでのコミュニケーションは円滑に進んで行きます。
「失念」の由来
「失念」は私たちが日常的に使う言葉です。しかし、由来は仏教という意外な世界にありました。仏教の世界で言う「失念」とは、どのような意味を持つのでしょうか。以下で説明します。
仏教用語
「失念」はもともとは仏教用語で、「心を拡散させる煩悩のひとつ」を指しています。「失念」と言う煩悩があると、物忘れをしたり、気づきを失い、大切な仏法の理論や仏法の言葉を忘れるとされています。
「失念」の意味
もう何度も触れていますから、「失念」の意味はおわかりでしょう。謙譲語ではありますが、ベースは「忘れる」ですから、意味もそのままです。ただ、厳密に言うと、微妙に違う意味もあります。
うっかり忘れること
辞書を引くと、「失念」には「うっかり忘れること」という意味があります。これは、上で説明した仏教用語としての「失念」から転じた意味であることは明らかです。
言葉の意味は「うっかり忘れること」ですが、現在では、「うっかり」でなくても「失念」を使います。また、本当は覚えていたけれど、後回しにしていた案件があり、指摘されると「失念しておりました」などと言うこともあります。「失念」は、実に便利な言葉です。
臨機応変に「忘れる」の敬語表現を使おう
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ビジネスシーンにおいて「忘れる」ことは、本来なら決して許されるべきことではありませんが、人間ですから「忘れる」ことを完全になくすことはできません。
うっかり忘れてしまったときは、臨機応変に敬語表現を使ってミスを認め、そして謝りましょう。言葉使いのマナーを心得、礼を尽くすことで、「つい、うっかり」をなかったことにしてしまいましょう。
ビジネスシーンでよく使われる敬語
「失念」と並び、ビジネスシーンでよく使われる言葉に「放念」があります。あなたは意味を知っていますか。頻繁に登場する言葉ですから、意味や使い方をきちんと把握しておきましょう。
また、「失敗をしてしまった」「居眠りをしてしまった」など「○○してしまった」とき、大抵は後悔しますし、上司などにどう報告をしようか、と悩みます。そんなときの言葉の使い方も覚えておくと重宝します。