「耳に入れる」の使い方と例文・敬語の種類・別の敬語表現
更新日:2024年10月10日
敬語「耳に入れる」の意味は?
耳に入れるとは慣用句になり、聞く器官である「耳」の中に話を入れるという表現です。「耳に話を入れる」で「知らせる」という意味になります。ニュアンス的には「こっそりと知らせる」という使い方をするため、ほんの少し気になったことや、内々の事情、内密な情報などを目上の人に知らせる場合に「耳に入れる」と表現します。
敬語の表現では耳に接頭語の「お」をつけて「お耳に入れる」とし、謙譲の敬語表現として用います。「耳に入れる」を丁寧な敬語の形にした「お耳に入れる」がそもそも「知らせる」謙譲の形の敬語です。
お耳に入れるは、「正式な話の前に、知らせたい情報」を目上の人に伝える場合に使います。多く「あまり良くない話」に用いられます。また「自分の利益のために、相手に情報を開示し思うとおりに動かす」という、テレビ時代劇の影響でついてしまったイメージもあるため、なかなか使いづらい表現になっています。
知らせる
耳に入れるは「知らせる」の謙譲語の敬語の表現です。耳にまつわる慣用句であるため、日常ではあまり用いませんが、「お知らせしたいことがあります」と言う場合の言い換えで、「お耳に入れたいことがございます」と使うことができます。主に注意深く話に耳を傾けてほしい場合に使われます。
目上の人に「お耳に入れたいことがあります」を用いる場合には、クッション言葉として「すでにお聞きおよびでしょうが」を前に組み合わせると、とても聞きやすく、かつ話の内容に注意を引くことができます。
耳に入るはまた別な慣用句
同じ「耳」に関する慣用句で「耳に入る」があります。「耳に入れる」との違いは、ズバリ「入れる」と「入る」です。耳に「入れる」とは、「耳」と言う部分の働き、つまり「聞く」ことをさせる、と言う意味で用いています。意図的に「聞かせる」ことを「耳に入れる」と表現します。
「耳に入る」は偶然、聞こえてきたことに用いられます。耳に入るは、「聞く」の尊敬の敬語になり、「お耳に入っているかと存じますが」と言うように、耳に入れたい事情を説明する前座的な役割をし、話に耳を傾かせる働きもします。
耳に入るは「聞きおよぶ」と言うニュアンスが強く、同じく自然に聞いたことを表す「耳にする」とはまた別な表現です。「耳に入る」は「噂が耳に入る」「悪い所業が耳に入る」など、ネガティブな情報を聞くときに使われることが多い慣用句です。
敬語「耳に入れる」の使い方
敬語の種類
耳に入れるは、「知らせる」「告げる」のへりくだった謙譲の表現です。謙譲語とは、自分や自分側の人間、物を低めて相手を高め敬意を示す敬語の種類です。耳に入れるは「申し上げる」と同じ表現で、「知らせる」は通常の表現で、これが尊敬の敬語表現になると「ご一報くださる」となり、謙譲の敬語表現で「耳に入れる」となります。
また、「言う」や「聞かせる」の謙譲の敬語表現にも使用できます。「言う」は尊敬語で「おっしゃる」、謙譲語では「申す」「申し上げる」が一般的です。しかし「お耳に入れる」も同じように「言う」の謙譲の敬語表現として用いることができます。
使い方
使う場合には、「お耳に入れたいことがございます」という敬語の形にして使います。耳に入れるは、知らせるや告げるの謙譲の敬語表現ですので、謙譲語と丁寧語を組み合わせて敬語の形にします。その際には、クッション言葉として、「すでにお聞きおよびでしょうが」や「すでにお聞きになっていることでしょうが」と「耳に入れる」の前につけると、さらに聞きやすくなります。
使う場合には「耳に入る」と混同しないよう注意が必要です。耳に入るは「(噂などが)偶然に聞こえる」というように、よくないことが聞こえてくる、知らされるという場合に使われます。
「耳に入れる」は「言う」の謙譲の敬語表現ですが、同じく謙譲の敬語表である、申し上げるが公衆の面前で言うことを表すなら、耳に入れるは「内々の事情を(こっそり)知らせる」とまた「耳打ちする」といったニュアンスがあるため、適当な場面で使うことが好ましいです。
ビジネスでの使い方
ビジネスでは、おおよそ上司に対して使います。しかし知らせると言った意味の「耳に入れる」は現在では用いる場面があまりないように感じます。また、耳に入れるは口語で使用する言葉なので、メールや文書には向きません。
メールで同じニュアンスを使いたいのであれば、「お知らせがございます」や「ご報告がございます」の方がしっくりときます。
内々の情報を、上司に知らせたい場合には、「お知らせしたいことがございます」と言っても間違いではないですが、「お耳に入れたいことがあります」とすると、さらに相手の注意を引く効果も期待できます。耳に入れるは「こっそりと」「秘密裏に」と言う印象もあるため、相手の気を引く手段としては、最大限に力を発揮してくれるでしょう。
耳に入れるは「姑息」と取られることも
「お耳に入れたいことがございます」と聞いて、どんな場面を想像しますか。多くは、「秘密裏に情報を開示して、(自分の)利益になるように相手を動かす」という黒いイメージを想像するでしょう。
耳に入れるは正式な謙譲の敬語表現ですが、主に時代劇の悪代官と悪商人の闇取引の場面で使われた影響でこのような黒いイメージがついてしまいました。本来は「姑息な手段」と言う意味はありませんが、ついてしまった言葉のイメージはなかなか払拭できません。
そのためたとえ必要な情報を、上司の耳に入れる場合にも「お耳に入れる」は使わない方が無難でしょう。その場合には「お伝えしたいことがございます」「お知らせしたいことがございます」などの他の敬語の表現を用います。
敬語「耳に入れる」の例文
耳に入れるは、「知らせる」「言う」の謙譲の敬語表現です。現在ではあまり用いなくなはなってきています。人によっては、「お耳に入れたいことがあるのですが」と言われると、内々に耳寄りな、知らせる本人の利益になるようなことを耳打ちする、と言うような点数稼ぎの行動に見られる可能性があるため、あえて使わないほうが良さそうです。
また耳に入れるは、「悪いことを伝える前振り」とイメージがあります。本来はそのような意味はありませんが、深刻な顔で、「ちょっとお耳に入れたいことが」と切り出すと、相手も「嫌なニュースか」と身構えてしまいますので、使う際には注意しましょう。
しかし耳に入れるは「話に注意を引く」「深く耳を傾ける」という作用もあります。上司にぜひとも聞いてほしい話がある場合には、あえて使ってみてもいいでしょう。
「耳に入れる」の例文
・「すでにお聞きおよびとは存じますが、ぜひお耳に入れたいことがございます」
・「お耳に入れておきたいことがございます。少しお時間よろしいですか」
初回公開日:2018年03月26日
記載されている内容は2018年03月26日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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