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「中納言参りたまひて」の敬語の向き・敬語表現と現代語訳

更新日:2024年08月07日

この記事では、清少納言が書いた枕草子「中納言参りたまひて」に出てくる敬語についてまとめています。誰から誰への敬語なのか、また敬語の種類や品詞分解、さらには敬語の現代語訳まで詳しく解説します。主語のない敬語が続きますが、一つ一つ見ていきましょう。

「中納言参りたまひて」をはじめとする古文で使われる敬語には、現代語と同じく3種類あります。

尊敬語、謙譲語、丁寧語です。尊敬語は、動作の主体が敬われます。目上の人の行動は尊敬語で表します。

謙譲語はその逆で、動作の客体が敬われます。自分の行動や、動作の客体より目下の人が主体の場合は謙譲語で表します。

丁寧語は話し手から聞き手への敬意を表します。

「中納言参りたまひて」に出てくる敬語表現

尊敬語として「中納言参りたまひて」で使用されているのが、尊敬の補助動詞「たまふ」、尊敬の助動詞「す」、尊敬の助動詞「さす」、「言ふ」の尊敬語「のたまふ」です。よく使われている「たまふ」は補助動詞で、動詞の後ろにつけるだけで敬意を表すことができます。

謙譲語として使用されているのは、「参る」、「奉る」、「申す」、補助動詞「聞こゆ」です。「聞こゆ」は動詞の後ろにつける謙譲語です。

丁寧語は「はべり」のみで、動詞の後ろにつけるだけで丁寧な表現になります。

品詞分解してみよう

敬語表現が使われていて、敬語の向きや現代語訳が難しい文章をとりあげて、品詞分解しながら解説していきます。

尊敬語と謙譲語が組み合わされた例

まず、冒頭の「中納言参りたまひて、御扇奉らせたまふに」を解説します。中納言は隆家のことです。品詞分解をしてみると、「中納言/参り/たまひ/て、/御扇/奉ら/せ/たまふ/に」となります。ここでわかるのは、主語が中納言であること、謙譲語「参る」、「奉る」と尊敬語「たまふ」、「せ」が組み合わせて使われていることです。

中納言に謙譲語が使われているということは、動作の客体が清少納言、隆家より目上の人物であることが分かります。つまり客体は定子です。現代語訳は、「中納言が参上なさって、御扇を中宮定子にさしあげなさるときに、」となります。

「中納言参りたまひて」の品詞分解

「中納言参りたまひて~」を品詞分解してみましょう。「参り」はラ行四段動詞「参る」の連用形、謙譲語で筆者から定子に対する敬意を示します。「たまひ」はハ行四段補助動詞「たまふ」の連用形、尊敬語で筆者から中納言に対する敬意を示します。「奉ら」はラ行四段動詞「奉る」の未然形、謙譲語で筆者から定子に対する敬意を示します。

「せ」は尊敬の助動詞「す」の連用形、「す」には使役と尊敬の意味があるが、直後に尊敬語が来ているので文脈で判断し、尊敬の意となります。

「問ひきこえさせたまへば」の品詞分解

この文章は、定子が中納言に質問しているところです。定子の中納言に対する行動です。品詞分解すると、「問ひ/きこえ/させ/たまへ/ば」となります。「問ひ」はハ行四段動詞「問ふ」の連用形、「きこえ」はヤ行下二段補助動詞「きこゆ」の未然形で、動詞の後ろにつける謙譲語です。筆者から、動作の対象である隆家に対する敬意を示します。

「させ」は尊敬の助動詞「さす」の連用形です。未然形の動詞につなぎます。使役の意もありますが、直後に尊敬語があるため文脈で判断し、今回は尊敬の意となります。筆者から定子への敬意を示します。「たまへ」は、尊敬を表すハ行四段補助動詞「たまふ」の已然形です。謙譲語の後に尊敬語が二つ並べられていることがわかります。これが二重敬語です。

この文章を現代語訳すると、「おたずね申し上げると」となります。

「中納言参りたまひて」に出てくる敬語の現代語訳

前で紹介した敬語を現代語訳すると、尊敬の補助動詞「たまふ」は「れる」、「られる」などとなり、「中納言参りたまひて」は「中納言が参上されて」となります。

尊敬の助動詞「す」、尊敬の助動詞「さす」は直後に尊敬語があるときに使われる語なので、それ自体は特に現代語訳はしません。「のたまふ」は「おっしゃる」です。よく使われている「たまふ」は補助動詞で、動詞の後ろにつけるだけで敬意を表すことができます。現代語の「れる」、「られる」にあたります。

謙譲語として使用されている「参る」は「参上する」、「奉る」は「差し上げる」、「申す」はそのまま「申す」となります。「聞こゆ」は動詞の後ろにつける謙譲語で、現代語では「いたす」にあたります。

丁寧語は「はべり」のみで、現代語では「です」、「ます」となります。

品詞分解が重要

今回は、「中納言参りたまひて」を取り上げていきました。文章の敬語が誰から誰に向けられたのかを判断するためには、登場人物、位の高さ、地の文か会話文かなどを総合的に判断する必要があります。

「中納言参りたまひて」は、確かに主語が省略されている場合が多く、登場人物の名前も変化することがあるのでわかりづらいです。しかし、3人という少ない登場人物で、位もはっきりしているので整理して考えるとわかりやすくなります。敬語の種類も、現代語と違って、謙譲語と尊敬語を組み合わせたり、二重敬語が使用されたりするので注意しましょう。

初回公開日:2018年02月24日

記載されている内容は2018年02月24日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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