お願いできますでしょうかは正しい?|ビジネス・メール・敬語表現
更新日:2022年06月05日
お願いできますでしょうかは正しい日本語?
仕事を進める上ではしばしば周りの人たちの協力が必要ですが、ときには頼みづらいこともあります。「お願いできますでしょうか」は、そうしたときにとても便利な表現です。相手の心の負担への配慮や申し訳無さ、感謝のニュアンス等を同時に伝えることができます。
しかし実際、仕事の場で「お願いできますでしょうか」はあまり見かけないのではないでしょうか。そもそも「お願いできますでしょうか」という表現は文法的には正しくありません。「できます」と「でしょうか」の二重敬語だということは、ご存知の方も多いでしょう。要件を伝えるだけならば「お願いできますか」でも充分ですし、疑問形にする必要さえありません。
敬語表現に込められた意味
とはいえ「お願いできますでしょうか」に込められた思いを切り捨てるには、もったいないものです。ニュアンスはそのままに、ぜひ別な表現で言い換えてみましょう。ここでは文章を一度切ってしまう方法を紹介します。以下、シチュエーション別の例です。
・他の会社や取引先の人が対象
「依頼させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。」
「お力添えをいただきたいです。」
「お願い」という言葉をもう少しフォーマルに置き換えました。
正式な依頼をするような文面ではこちらの表現のほうが良いでしょう。
・社内の上司が対象
「〇〇していただいて、よろしいでしょうか」
「〇〇していただけると、非常に助かります」
上司の性格や相性によっては、もっとくだけた表現で大丈夫かもしれません。
「お願いできますでしょうか」を使われたら
では、自分が「お願いできますでしょうか」と頼まれた場合はどうでしょうか。相手は以下の印象を持っている、と考えられます。
・遠慮や配慮
後輩からの敬意の表現や、申し訳無さ、押し付けがましさへの
遠慮など。何かしらの気後れを持っている可能性があります。
気持ちよく要件を引き受けてあげると喜ばれるでしょう。
・心を許している
頼み事をする場合、どのような人から声をかけるでしょう。
気心の知れている人、確実に仕事をこなしてくれる人、フットワークの軽そうな人。
共通するのは安心感や親しみです。
少なくとも相手は、あなたにそうした感情を抱いています。そのまま信頼関係を維持していきたいところです。
メールで「お願いできますでしょうか」を使う場合
「お願いできますでしょうか」は決して万能な表現ではありません。「お願い」という表現はときに「馴れ馴れしさ」や「厚かましさ」にも映ります。頼む相手との距離感をわきまえて使うことが大切です。それを踏まえた上で、メールで「お願いできますでしょうか」を使う場合を考えてみましょう。
仕事の上でメールを使う際は契約書や資料を添付する際の添え状や正式な仕事の依頼などをするときに使われます。納付書や請求書の代わりとして使用される会社さまも多いでしょう。時候の挨拶などを添えることもあり、全般的にフォーマルなイメージです。
このフォーマルさを加味すると「お願いできますでしょうか」を使う場合は、気心の知れた担当者間での連絡にとどめておくと無難です。自分の上司をメールのCCに含める場合もよく注意してください。
「お願いできますでしょうか」と文末表現
メール作成に不慣れなうちは様々な悩みがつきものです。その中の一つに文末の締めの一言があります。
フォーマルな挨拶状には定形表現がありますが、これらの表現をビジネスメールに使った場合、文体が合わずちぐはぐな印象を与えることがあります。
実際に文末表現は相手への気遣いや何か物足りないときに一言加えたり、シチュエーションに応じて変化するものです。つい「よろしくお願いします」に頼ってしまうのは、こうした微細なニュアンスを使い分けずとも文末表現として機能してしまうからでしょう。
「お願いできますでしょうか」は、依頼する文面には限られますが、自然な流れで文章を締めくくることのできる汎用性の高い便利な表現です。
「お願いできますでしょうか」はどこで使う?
これまで見てきた「お願いできますでしょうか」という表現の特性は会話ベースのコミュニケーションツールと相性が良いものです。具体的にはSNSやチャットアプリのメッセージ機能などが該当します。そうしたツールでのやりとりはときにインターネットの掲示板感覚です。冗談やスタンプが飛び交い、仕事上の関係を超えた親密で気さくなコミュニケーションができます。「お願いできますでしょうか」を使った程度で目くじらをたてられることは、さほどないはずです。
ビジネスとして使う「お願いできますでしょうか」の意味
「お願いできますでしょうか」は実際の仕事の場面では、どのような使われ方をするのでしょうか。
以下、確認していきましょう。
・ちょっとした作業を追加で頼む
「お願い」という言葉は一般的には、報酬が発生しない程度のサービスや一手間を意味します。報酬が発生するような作業は「依頼」や「委託」という表現で、業務の範囲も決められています。
・部下のフットワークを軽くする
「お願いできますでしょうか」は基本的に担当者間の対等の立場でのやり取りを想定していますが、あえて部下の方に使ってみるのも良いでしょう。たった一言を添えるだけで、部下としては上司の配慮をうれしく思います。マネジメントも意識してくれていることを感じ、より気持ちよく仕事をしてくれるでしょう。
以下、実際のシチュエーションや文例とともに「お願いできますでしょうか」の効果を確認していきます。
「お願いできますでしょうか」の印象 ー依頼する側ー
事務関係で提出した書類に書き間違いや、訂正があった場合
中には書き間違いが1つだけでも書き直しを求められる書類もあり、ミスした方も受付処理する方も
双方ストレスがかかることがあります。「お願いできますでしょうか」はそんなときに、とても便利な言葉です。
以下、書類を書き間違えて事務担当者に修正を依頼するというシチュエーションで言い回しを比較してみましょう。
a;)「先に提出した書類にミスがあり、正しくは〇〇でした。修正、よろしくお願いします。」
b;)「先に提出した書類にミスがあり、正しくは〇〇なのですが、修正、お願いできますでしょうか。」
まず前提として自分がミスしたことに対するお詫びや遠慮があるべきですが、aの文章にはそうした心遣いは感じられません。
(*「申し訳ありません」という言葉自体が一つのクッション表現なので、ここではニュアンスを際だたせるためにあえて省きました。)
「お願いできますでしょうか」を使ったbの表現では、配慮が感じられaよりも印象がやわらかいものに
なっています。
初回公開日:2017年06月29日
記載されている内容は2017年06月29日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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