エアコンの原理と仕組み
今ではどの家にも1台はあるエアコンは、1台で冷房も暖房もでき、快適な生活に欠かせない優れた家電製品です。それではどういった原理で、1台で冷房も暖房もできるのでしょうか。
一般的なエアコンは、部屋の天井付近に設置する室内機のほかに、必ず屋外に設置する室外機が必要です。そして、室内機と室外機は特殊なパイプで繋がっています。
実はこのパイプを通っている物質が、冷房も暖房も可能にしてくれています。まずはこの原理について、簡単に紹介します。
エアコンの冷房の原理は潜熱
理科の授業で、物質には、固体、液体、気体の3つの相があることを習います。そして、温度が低い状態では固体だった物質は、その温度を高くすると、ある温度から液体に変わります。さらに、温度を上げていくと液体は気体に変わります。
そして、物質が液体から気体に変わる際、周囲から熱を奪っていきます。例えば、消毒用のアルコールを肌に塗ると冷たく感じます。これは、液体の消毒用アルコールが蒸発する際、周囲の熱を奪うからです。
この原理は潜熱と呼ばれる現象です。分子同士の結びつきが強い液体から、結びつきを引き剥がされて気体になる際、そのエネルギーとして周囲の熱が使われます。エアコンの他に冷蔵庫なども、この原理を使って冷やしています。
エアコンの暖房の原理は断熱圧縮
外から熱の供給の無い状態で気体を圧縮すると、その温度が高くなることが知られています。これは断熱圧縮と呼ばれる現象です。そして、この原理は、気体の分子は気圧が低いと自由に動けるのに対し、圧力をかけると分子同士が衝突することで熱が発生します。
例えば、ディーゼルエンジンには、ガソリンエンジンのような点火プラグがありません。ディーゼルエンジンは、燃料と空気の混合ガスを、シリンダーの中で圧縮し、その熱で発火させて動力に換えています。
このように、空気を圧縮するだけでもディーゼル燃料が燃えるほどの温度が得られます。エアコンは、モーターの力で気体を圧縮し、断熱圧縮の原理により発生する熱を利用して暖房しています。
エアコンの中の冷媒が冷房と暖房を行う
このようにエアコンは、液体から気体に変化する際に周囲の熱を奪う現象と、気体を圧縮した際に発生する熱を利用して、冷房と暖房を実現しています。
そして、エアコンでは、この原理を効率良く利用するための冷媒と、強力なコンプレッサーとが組み込まれています。この2つは、次のように働いています。まず、冷房は、コンプレッサーが圧縮して室外機がある程度冷やした液体が、室内機の中で気体になる際に熱を奪う現象を利用しています。
また、暖房は、コンプレッサーが圧縮して温度の高くなった液体状態の冷媒の熱を暖房に使い、室外機で気体に戻しています。
熱力学
熱力学の原理では、温度の低い方から温度の高い方に熱が移動することは無い、とされています。しかし、エアコンは、涼しい屋内の熱を夏の暑い外気に捨てたり、寒い屋外の熱を暖かい屋内の暖房に使っています。だからと言って、エアコンが熱力学の原理に逆らった動きをしている訳ではありません。
エアコンは、冷媒の物理現象を使って、室外機の中に、部屋の温度よりも低い状態を作り出し、冷房に使っています。また、暖房では逆に、室外機の中に部屋の中よりも温度の高い状態を作り出します。そのため、室外機だけを見れば、熱力学の原理に沿った働きをします。
エアコンのヒートポンプの原理
エアコンには、ヒートポンプとしての機能があります。なお、ヒートポンプは、温度の低い場所の熱を、エネルギーを使って温度の高いの熱に移動する装置のことです。熱力学の原理に従えば、自然に低い温度の場所から高い温度の場所に熱が移動することはありません。
しかし、エアコンはエネルギーを使うことで、これを可能にしています。なお、これを可能にできた原因は、前に説明したとおり、冷媒とコンプレッサーの働きがあってこそです。
ヒートポンプの原理
熱力学では、理想的な条件では移動してもエネルギーが保存される、という原理が働きます。これは、エアコンが利用している冷媒にもあてはまります。つまり、気体から液体に変化し、液体で温度がそのままで気体に戻した場合、液体にする前と同じ温度ということです。これでは、冷房には使えません。
しかし、圧縮前の気体と圧縮後の液体とでは、その温度が違っています。そして、この温度の差を利用すれば、ヒートポンプとしての利用が可能となります。
温度の高い液体の温度が、夏の暑い時期の気温より低ければ、その気温まで冷やすことで、気体に戻した際の温度はより下がります。逆に、温度の低い気温よりも冬の気温が高ければ、その温度まで上げることで、液体にした際の温度がより高くなる訳です。
エアコンは、この原理を利用して、夏の暑い外気に熱を捨てたり、冬の寒い外気から熱を取り出したりしています。
冷房時のヒートポンプの限界
冷房時におけるヒートポンプの効果は、涼しい部屋の空気の熱を、暑い屋外に移動させる点です。そして、先ほどこの原理を解説したとおり、気体と液体の温度の差を利用して、涼しい場所から暑い場所に熱を移動しています。
しかし、気温の上がる夏の暑い昼下がりは、エアコンの効率が落ちます。これは、冷媒が液体状態の温度と気温との差が小さくなると、冷媒が冷えなくなり、その分気体になった際の冷却効果が落ちてしまうからです。
日本で売られているエアコンは、外の気温が48度になるとモーターの過負荷を避けるリミッターが働きます。もし、その温度になる前にエアコンが冷えなくなったら、冷媒が漏れているなど故障の可能性があります。一度、電気屋さんに見てもらってください。
寒冷地仕様のヒートポンプ