間違いも多い「相違ございません」の意味と使い方
更新日:2024年09月20日
「相違ございません」の意味
社会人になると言葉の使い方に気を配る場面が多くなっていきます。自分と相手の立場の違いから、敬語を無意識に使い分けることができると、仕事の上でもスムーズな人間関係が構築できるでしょう。
使い方がわかりにくい言葉や間違えやすい言葉の中には、「相違ございません」というものがあります。「相違ございません」は、「相違ない」の尊敬語で敬語の言葉使いです。「相違ない」とは、何かと何かとの間には違いがない、確実に間違いがないという意味です。
「相違ございません」と似ている言葉に、「間違いございません」があります。似ていても同じ意ではなく、微妙に違います。その違いとは、どんなものでしょうか。
「間違いございません」と「相違ございません」の違い
「間違いございません」と「相違ございません」という言葉は似ています。似ているからといって、いつでも無防備に「間違いございません」と「相違ございません」という言葉を区別なく使っていると、社会人として思わぬ失敗をしてしまうことになりかねません。
「間違いございません」という場合は、間違いでないことを保証しますという意味合いがあり、確実に間違いがないかどうか判明していないときにも使われる言葉です。
「相違ございません」という場合は、確実に間違いがないものだと判明している上で、その物事が事実だと表わすときに使われる言葉です。
この二通りの言い方を比べると、「間違いございません」という場合は人情的に相手の気持ちに同意したいという感情が含まれているときに多く使われます。「相違ございません」は感情を排除しており、確実に間違いないと表したい時に使われます。
「相違ございません」と「相違ありません」の違いと使い分け
言葉使いは難しいものです。同じ目上の人に話す場合でも、「相違ありません」と言った方が相応しい場面、「相違ございません」と言った方が相応しい場面など、場面ごとに変わってきます。自分と他者との関係性によっても言葉遣いは変わって当然です。
「相違ございません」を使う場面の例と、「相違ありません」を使う場面の例を紹介いたします。
「相違ございません」を使う場面
Aさんは上司から、会議の資料を集めておくように命じられたそうです。資料の種類は、上司から紙にメモしたものを渡されたそうですが、Aさんは、メモを見ながら資料を集めて、上司に報告したそうです。その時の言葉が「これで相違ございませんか」だったそうです。
Aさんの場合は、話す相手が会社の上司でした。Aさんが集めた資料が上司の命じられたものと同じだったのかどうか、上司に確認する場面でした。「この資料で相違ありませんか」と言っても非礼までいきませんが、目上の人に対して「相違ございませんか」と尋ねているので、品格のある会話が成立したといえるでしょう。
もし、Aさんが同僚に資料集めを頼まれていたなら、「この資料で相違ありませんか」でも丁寧で社会人らしい言葉遣いだといえます。「これで間違いないですか」でも十分に通用したでしょう。反対に同僚に対して「この資料で相違ございませんか」と言えば、慇懃無礼な悪い印象を与えてしまうでしょう。
「相違ありません」を使う場面
Bさんの勤務している会社では、年度が変わるごとに社員名簿や連絡網を新しくやり直すそうです。総務の人から「修正があるならば申し出てください」と声をかけられたとき、Bさんは確認をして「相違ありません」と言ったそうです。
この場合、「相違ございません」と言っても、いやな感じには受け取られなかったかも知れません。周囲の人から、Bさんの性格はおっとりとしていて、丁寧な仕事をするといわれそうな言葉の印象です。もちろん、スマートに、「相違ありません」とハッキリ答える方が賢明ですが、「相違ございません」でも間違いとはいえません。
けれど、もしもBさんの会社の社長自ら、この書類に「間違いないか」と聞かれたとしたら、「相違ございません」と畏まって答えるのが社会人としてのマナーといえるでしょう。
「相違ございません」は敬語表現
「相違ございません」は「相違ない」という言葉の敬語表現ですが、その敬語をどんな場合に使うか、まとめておきましょう。社会人のみならず、敬語を使う場合は、大きく分けて2つです。
1つ目は、家や学校、会社などで、自分より目上の人に対して敬語を使います。この場合の目上とは、地位や階級などの立場が高い人、年長の人を意味するのです。例えば、上司に対して「この書類で相違ございません」と使います。
2つ目は、自分が属していない家や学校、会社などの人に対して敬語を使います。この場合は地位や階級などの立場、年齢などに関わりなく、目上の人と同じ対応をすることが大切です。自分の所属しているところの人が同席しているときは、その人が自分にとって目上の人であったとしても、自分と同列に扱うことが大切です。
ビジネスで使われる「相違ございません」
「相違ございません」という言葉は、間違いございませんという意味でビジネスでもよく使われています。けれど、簡単に間違いないという意味で使っていると、大変な失敗をしてしまうことがあります。
例えばCさんの会社は薬品会社です。商品を購入した人々から、毎日さまざまな問い合わせがあるそうです。あるとき、商品の説明に不適切な言葉が書いてあると指摘するメールが届いたので、すぐにCさんは謝罪のメールを送りました。
けれども、再度、同じ人からお怒りのメールが来て驚いたそうです。Cさんは、不適切な商品説明があったことに対して相違ございませんと返信したつもりだったそうですが、言葉足らずだったせいか、受け取った人は「相違ないとはどういうことか、間違っているだろう」とお怒りだったそうです。
「相違ございません」を使用する場面の例
ビジネスの場面で、「相違ございません」と使用するときは、丁寧に言葉を補足する必要があります。これとそれは同じだという意味で「相違ございません」と言う場合は、確実に同じ内容だということを証明できない限り、使わないほうが賢明でしょう。
少しでも間違いがあるかも知れないときは、「確認させてください」といったん引き下がるのも一つの方法です。ビジネスでの会話は、テンポがいい時はスムーズな取引ができることも多いでしょうが、失敗が許されないときほど慎重な言葉選びが大切です。
「相違ございません」という言葉はスマートに使いたいものですが、相手の人がわかる言葉遣いを選ぶのも、ビジネスでは大切なことでしょう。わかりにくい言葉よりも、わかりやすい言葉を選ぶべきなのです。
初回公開日:2017年10月05日
記載されている内容は2017年10月05日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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