「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」の使い方
更新日:2024年10月15日
「春」の挨拶「春暖の候」の使い方
春の時候の挨拶「春暖の候」は「春の暖かさを感じる季節となりました」という意味があり、3月に使われます。この後に「皆様いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」と続きます。
実際には、3月はまだまだ冬物のコートが必要なほど寒い日も多いのですが、暦の上では「春」ということになります。3月に使われる時候の挨拶は他にも多くありますが、実際の気候とちぐはぐにならないように注意して使います。
3月でも寒い日が続いている場合などは「春寒の候」や「冬の名残のまだ去りやらぬ時候」などを使い、後半になり暖かくなってきた頃には「春色のなごやかな季節」「春光天地に満ちて快い時候」などを使うとよいでしょう。
「夏」の盛挨拶「夏の候」の使い方
時候の挨拶では、7月が「夏」になり、「盛夏の侯」「猛暑の候」「大暑の候」「炎暑の候」「夏祭の候」などがあります。温暖化の影響もあり、実際にも7月は暑い日が多いので季節のズレをそれほど感じることなく使いやすいでしょう。
他にも「蝉の声に夏の盛りを感じる頃になりました」「暑さきびしき今日この頃ですが」などや「満天の星空が美しい季節となりました」「いよいよ夏本番」「暑中お見舞い申し上げます」も夏、7月の挨拶です。
8月は暦の上では初秋となり「残暑の侯」「朝夕涼味を覚える頃」「秋風の訪れる候」などを使います。まだまだ暑い盛りなら「残暑厳しき折」など、肌に感じる気候に近いものを選びましょう。
これらの時候の挨拶の後に、安否の挨拶、そして「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」と感謝の挨拶がつづきます。
「冬」の挨拶「厳冬の候」の使い方
「厳冬の候」は、1月に使われる時候の挨拶です。1月は「新春の候」も使われますが、この春は季節の春というよりは、新年という意味合いで使います。時候の挨拶としては、小寒、大寒、厳寒、酷寒、極寒、など、やはり寒さを気遣う言葉を使います。
厳冬はその文字のとおり厳しい冬、寒さをあらわし、厳寒や酷寒なども同様です。プライベートな便りなら、この後に「皆様、お風邪など召されておりませんでしょうか」など、素直な気持ちを安否の挨拶に入れてもよいでしょう。
ビジネスや改まったものの場合は「貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」などと続けます。
「新春の候」は主に、「新春の候、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます」などのように、年始の挨拶に使用します。
「年末」の挨拶「歳末の候」の使い方
同じ冬の挨拶の「歳末の候」は12月の時候の挨拶です。いわゆる年末のことです。昔は、1月1日で一つ年齢を重ねることになっていました。ですから、12月はその歳がもうすぐ終わる月ということで、歳の末、「歳末」と呼ぶようになりました。そこから現在では、1年の終わりを歳末と呼んでいます。
他にも、「師走」「寒冷」「初冬」などもよく使います。12月でもその時期により使う言葉が違ってきます。初冬や師走は12月初旬~中旬ごろに、歳末は下旬になったら使います。
「寒気いよいよ厳しく」「歳末ご多用の折」などの時候の挨拶の後に安否の挨拶、そして「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」など感謝の挨拶を続けることは同じです。
「頭語」の「拝啓」と結語「敬具」の意味と使い方
前文の要素に、「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」などの挨拶分の前に書き入れる「拝啓」などの「頭語」があります。他の「前文」の挨拶同様、上司や自分より目上の人に出す場合や、改まった内容の場合などに使います。手紙の略式であるハガキや、友達とのフランクな内容の場合には使用しません。
「拝啓」は「謹んで申し上げます」という意味があり、相手を敬う気持ちを表しています。「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」に「末筆ながら、ご自愛のほどお祈りいたします」などの結びの挨拶をセットにするように、「拝啓」には必ず文末に「敬具」をセットで使います。
この「敬具」には「謹んで申し上げました」という意味の相手を敬う意味がこめられています。また、「拝啓」などの頭語の後には、必ず時候の挨拶、安否の挨拶、感謝の挨拶などを続けます。
「頭語」の「謹啓」と結語「謹白」の意味と使い方
頭語には「拝啓」の他に「謹啓」(きんけい)、返信に使う「拝復」(はいふく)など多くの種類があります。いづれも「謹んで申し上げます」の意味ですが、「拝啓」は一般的な場合に、「謹啓」は、より改まった場合に使用します。
目上の人や、初めて手紙を出す相手の場合には、「謹啓」を使用する方が失礼にならないでしょう。では、「謹啓」を使って例文を作ってみます。
『謹啓、新緑の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。さて、このたび弊社では貴社の○○の注文を検討しております(以下省略)では、以上何卒よろしくお願い申し上げます。謹白』
頭語が変われば、末文の「結語」も変わります。「拝啓」「拝復」には「敬具」「敬白」、「謹啓」には「謹言」「謹白」がセットになります。
「頭語」の「前略」の意味と使い方
拝啓や謹啓などの「頭語」は、その後に「早春の候」などの気候の挨拶、「ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」などの安否の挨拶、そして「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」などの感謝の挨拶が続きます。
しかし、ビジネスなどでは、時候の挨拶などを省略する場合があります。その場合は「前略」を、また、切迫した内容の場合「急啓」「急白」などを使います。この「前略」には、前文を略します、の意味があり、「急啓」には急いでいるので挨拶は省きます、の意味があり、どちらも挨拶は省略します。
頭語には必ず結語がセットになっています。「前略」「急啓」にも「草々」「早々」が結語としてセットになります。ただし「前略」は目上の人に対しての文書には使用しません。近しい間柄の一般的なやり取り、ビジネスなどの場合に使用します。
「前文」の要素「安否の挨拶」の意味と使う理由
「頭語」「時候の挨拶」に続き、「安否の挨拶」を書きます。これには「貴社いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます」のように、相手の健康や繁栄を讃える言葉が多く、こちらもある程度決まった文章があります。プライベートな手紙なら、素直に「お元気ですか?私どもはおかげ様で元気です」と書いてもよいでしょう。
とくに、「厳冬の候」や「酷暑の候」など、気候の厳しい時期の挨拶のあとには、相手の体調をさりげなく案ずる言葉を入れると効果的です。安否の挨拶で、相手の健勝を祈っていることを伝えた後で「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」と感謝の意を伝えることも忘れないようにします。
「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」に込められたもの
「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」など手紙の前文の言葉は、昔から日本人が大切にしてきた「思い遣る(おもいやる)」気持ちが込められています。
自分よりまず、相手のことを思い遣ることは日本人の「おもてなし」などに通じます。手紙の中の「おもてなし」がこれらの「時候の挨拶」「安否の挨拶」そして「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」などの「感謝の挨拶」でしょう。
手紙は、相手が見えない一方通行のコミュニケーションだからこそ、より一層、幾重にも重ねて相手のことを思う言葉を綴り、そして、受け取った相手のこころが和らぐことで、手紙の本文を伝えやすくなっていきます。
前文、主文、末文で作られた手紙の構成は、相手を思う心が、長い時間をかけて、言葉を選び、紡いででき上がってきた、これからも大切にしていきたい日本の文化です。
初回公開日:2018年03月26日
記載されている内容は2018年03月26日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。