【業界研究】食品業界の現状・動向・課題について
動向1:市場動向
日本の食品業界は、戦後の物資が不足していた時代から急激に規模を拡大し、それに伴って日本の生活の向上に多大な貢献をしてきました。食べるものに困っていた戦後の日本人の生活を少しでも豊かにするべく、戦後の資源の限られた厳しい状況の中でも国民のお腹を満たすべく、試行錯誤をしながら発展をしてきました。
食料の需給が国策のひとつとしてあげられた影響もあって、戦後から約5年の期間で生産量は大幅に回復し、食糧難から逃れることができるようにまで拡大しました。その後の高度経済成長の追い風を受けて、さらに人口ボーナスの手伝いもあって、戦後ゼロの状態から始まった食品業界は、海外に大量に加工食品を輸出するほどにまで成長しました。
食品業界の発展に寄与したのが、電子レンジや冷蔵庫、炊飯器などの家電製品の普及です。これらの家電製品によって、食品の鮮度を保ちながら保存したり、調理が簡単にできるようになり、家電製品の普及と同時に食品業界は急激に拡大していきました。
昨今の海外のニュースでは、食品業界の市場は2020年に世界全体で3兆ドルの市場規模になるという試算が発表されています。日本国内の直近の市況は、原材料価格が高騰したことによる影響を受けはしたが、その分の商品価格の値上げ対応で得られた効果によって増収増益を各社が享受しています。
この海外マーケットの爆発的な成長見込みが現実となるようであれば、他の業界でも類を見ない期待の大きく持てる産業になります。この試算は現実離れした根拠のない数字ではなく、発展してきている途上国が人口の多い国であることから、現実味の帯びた実現性の高い数字であると見られています。
人口減少による市場規模の縮小、原材料の高騰など業界の抱える問題点は多くありますが、視野を日本だけでなく世界に向けると、成長著しい大きな市場が広がっています。キッコーマンを筆頭に日本企業は海外に需要を求めて進出していますが、世界的な日本食ブームを味方に更なる市場開拓をすることで今後も拡大の期待が持てる市場と言えます。
動向2:業界の課題
食品業界が抱える課題には国内市場の縮小化、原材料のコスト高騰、食品の安全管理への対応、業界再編などが挙げられます。
国内市場の縮小化は、少子高齢化に伴う購買力の低下、不景気による消費の減退などを要因として、避けられない命題となっています。直近の国内市場は売上が微増している堅調な業界に見えますが、実質的な部分では疑問を持たざるを得ない状況です。
しかし、国内市場は衰退の運命を避けられないというわけではなく、オーガニック食品など、食品の安全・安心を訴える種類の市場は年々拡大してきています。このように時代と共に移ろう消費者ニーズをしっかりと掴み、それに合った商品を投下することで市場の拡大は今後も期待できる分野と言えます。
昨今の食料品のコスト増加は、原材料の高騰と、食品に対する安全・環境対策のコスト上昇が原因となっています。原材料の高騰の背景には、原油や小麦の価格が上がることによって、原材料のコストが連動するように上がっています。これはどうしても外的要因になるため、メーカーとして努力の限界があり、解決するには難しい問題として残り続けます。
一方の安全・環境対策に関するコストは、日本の食品が世界的に見ても過剰とも言えるほどの安全基準を設けているため、そのレベルまで品質を向上させるためのコストが掛かり、これで苦しんでいると言えます。この安全基準の高さは逆に日本ブランドの安心感につながっているため、一長一短がありますが、それが首を締めているという現状もあります。
先進国ならではの問題も抱えており、日本では飲食店やコンビニの食品を毎日とんでもない量を廃棄しています。世界にはご飯が食べられないことが原因で、毎日4万人もの人達が餓死しています。国が違うだけでこんなにも食事情が異なるというのは、先進国としてのノーブレス・オブリージュ(富める者の責任)の精神をもう少し持ち、廃棄の問題を減らす工夫をしなければいけないでしょう。
動向3:業界の今後の将来性
日本のマーケットはどうしても抑えることのできない人口減少による消費の減退があるため、それにつられて消費が減っていくことは一目瞭然です。全体の人口が増加していかない限り、食品業界の国内市場の縮小は避けられないでしょう。
しかし、日本には世界でも群の抜いた食品の安全性基準があります。この日本の基準は圧倒的な高さを誇るもので、外国では考えられない数値を基準として定めています。
そんな圧倒的な基準を設けて運用している食品の安全・安心管理において、国内市場における業績拡大の可能性として考えられているのが、オーガニック食品と、機能性食品です。
オーガニック食品は、食の安全・安心に関する意識の高まりによって、その市場は年々拡大してきています。ある機関の発表では、グローバル規模で見ると10%以上の成長も見込める市場ということで、世界のメーカーがシェアを獲得すべく奮闘しています。
このオーガニック食品に関しては、日本のメーカーが昔から取り組んできた歴史があるので、グローバル市場でも十分戦っていける素地が整っている分野と言えます。