【業界研究】教育業界の現状・動向・課題について
集団指導型の崩壊
集団指導型の塾は、過去においては市場成長の原動力ともなりましたが、今の少子化の時代には今ひとつ適合しないようで、近年ではそのほとんどが個別指導型の塾に置き変わっています。
個別指導型のメリットとしては、アルバイト講師を採用することによって人件費を抑えられることにあります。人件費を正社員のような固定給にするのではなく、アルバイトのような変動費に置き換えることで、利益が出やすくなるのです。個別指導塾のなかには、数十名程度の生徒数で、十分な利益を出している塾もあるようです。
ただし、現在では、個別指導塾の成長率にも陰りが見えはじめ、今後は淘汰されていくとの見方が強まっていますが、学習塾自体に、新しい指針となるようなビジネスモデルが見つかっていないのも事実です。
大学入試改革
2020年に大学入試が大きく変わるとされており、とくに基礎学力テストなどが導入されると言われています。
今の時点で、予備校や学習塾に具体的な動きはありませんが、ここで高校生を中心とした受験教育が何かしら変わることは間違いないようです。高校生の学習時間は25年前の半分程度にまで減少し(ベネッセ調べ)、学力上位の生徒たちも、英語などにおいてグローバル化した教育を受けることができてないという問題を抱えています。
この大学入試改革は、予備校や塾にとって、大きなビジネスチャンスになるはずです。もしかしたらこの課題に柔軟に対応できるかどうかで、雌雄が決まってしまうかもしれません。
ITをどこまで活用できるか
東進衛星予備校や河合塾マナビス、代ゼミサテラインでは、通信衛星やインターネット回線を利用したオンデマンドによる映像授業サービスを提供しています。また、スタディサプリといった無料(もしくは従来の予備校よりも圧倒的に安い金額)で映像授業を受けられるサービスも登場しています。
しかし、従来からの講師が主で生徒が従となる指導スタイルからは、いまだに脱却することができていません。生徒自身が主となり、従となる講師に質問をしていけるような自立型個別指導もITの力でさらに確立していけるはずで、そう考えると、教育業界にはまだまだ金の鉱脈が眠っていると言えるのではないでしょうか。
業界の今後の将来性
教育は「人」ありき
確かに、教育業界は成熟した段階にあります。大なり小なりのM&Aが断続的に成立し、提携や合併を想定した中期計画も進行しています。
しかし、そうした状況で求められているものは、学校の成績アップや受験における合格だけではありません。まして、デジタル化すればすべて解決するということでもないのです。アナログやデジタルといった技術は最低限必要となりますが、結局のところ、個性を重視した「人間教育」が最優先となるのです。
少子化の影響を受けて、業績が伸び悩む教育機関も出はじめてはいます。しかし、だからと言って教育業界全体が深刻な不況下にあるというわけではありません。子供の人口が多かったことを理由に、とくに経営努力をしてこなかった一部の戦略なき教育機関に生徒数減少の波が襲いかかっているにすぎないのです。
市場を細分化すれば、新しい分野での教育ビジネスがたくさんはじまっています。民間学童保育は社会に合わせた変化を遂げ、都市部において幅広く受け入れられています。学習はもちろんのこと、運動から、食事、送迎までワンス有数のサービスを提供し好評を博しているのです。そして、その他にも、幼児教育、そろばん塾、スポーツ塾と教育の多様化は進んでいます。
教育業界を、幼児や習い事まで対象にすると、市場は一気に2兆円に膨れ上がります。少子化が既定路線であるならば、やはり市場のパイを広げるしかありませんが、「教育」というソフトを売る教育業界にはそのサービス次第で、資本力に左右されることなく、生徒を集められる土壌があります。
大切なことは、教育というものを今一度再定義して、新しいビジョンを描いていくことです。少子化でも利益を生み出すことのできるビジネスモデルを確立することができれば、市場はまだまだ拡大するはずです。