「少年よ大志を抱け」とは何か?
「少年よ大志を抱け」という言葉を聞いたことがありますか。北海道札幌市にはクラーク博士の像があり、その石碑に刻まれています。「少年よ大志を抱け」という訳について、近年さまざまな解釈がされるようになってきました。
若者たちへ大きな志を持って前へ進むように教え導いた名言のようで、この言葉に励まされた方も多いのではないでしょうか。調べてみたところ、どうやらこの「少年よ大志を抱け」という言葉には元々続きがあった様子です。
今回はクラーク博士の人物像や、その時代の札幌農学校(現在の北海道大学)のお話と共に「少年よ大志を抱け」の解釈についてご紹介します。
ウィリアム・スミス・クラーク氏の人物像
「少年よ大志を抱け」と言う名言を残した人物クラーク博士の正式なお名前はウィリアム・スミス・クラーク(William Smith Clark)です。故郷のアメリカ合衆国では、20代でアマースト大学の教授となり化学・動物学・植物学の教鞭をとりました。
1876年(明治9年)に札幌農学校の教頭としてアメリカ合衆国より日本へ赴任してきました。
北海道開拓期の頃の日本は何があったの?
その頃の日本は、国が大きく変わる過渡期の真っ最中でした。慶応3年(1867)に大政奉還があり、江戸幕府最後の将軍の徳川慶喜が、朝廷の明治天皇へ政権返上を奏上しました。
その後の明治2年(1869年)には維新政府のスローガンとして四民平等が掲げられ、江戸時代にあった士農工商の身分制度を廃止しました。
同じく明治2年(1869年)には開拓使という官庁が置かれ、北海道開拓も本格的に始まりました。そんな時に明治政府の強い要望で明治9年(1876年)「少年よ大志を抱け」で有名なクラーク博士が札幌農学校の初代教頭に就任、彼の熱心な教育で近代酪農はめざましい発展を遂げました。
クラーク博士が日本へ来た年には廃刀令がありました。刀を所持することを禁止されたということは、元々武士だった人々の誇りを奪う行為にほかならず、日本のあちこちで反乱がありました。
明治9年 札幌農学校(現北海道大学)開校
札幌農学校は、明治初期に北海道札幌に置かれた教育機関で、現在の北海道大学の前身でもあります。日本で初めて農学士を授与した教育機関です。
明治5年4月、東京に開拓使仮学校という機関が設立されました。官費生として広く生徒を募集し、卒業後5年間籍を北海道に移して開拓使に奉職することを入学時の誓約とされたといいます。
この仮学校は北海道開拓のための人材育成を目的とした学校で、初年度全生徒数は120名(官費生60名・私費生60名)、同年に生徒数50名(官費生50名のみ)の女学校を併設しました。明治8年に北海道石狩国札幌郡札幌(現在の札幌市中央区)に移転し、札幌学校と改称しました。札幌本府建設から5年ほど経ち、ようやく街の形ができた頃でした。
翌年、アメリカのマサチューセッツ農科大学学長のクラーク博士が日本へ呼ばれ、「札幌農学校」へ正式に改名し、開校式を行いました。
「少年よ大志を抱け」という言葉の由来は?
クラーク博士が「少年よ大志を抱け」という言葉を残したのは、この札幌農学校の一期生の生徒との別れ際でした。「少年よ大志を抱け」は、この時の博士の生徒へ向けられた挨拶の冒頭だったことが分かっています。
しかし肝心の続きの文は解釈が複数あることから、クラーク博士が「少年よ大志を抱け」と言った事の真偽が気になる人も多いように見受けられます。
“Boys, be ambitious!”の背景
北海道開拓のため、札幌農学校開校当初から熱心に生徒を教育したクラーク博士の在籍期間は、わずか8ヶ月という短いものでした。
しかし、クラーク博士は晩年に「札幌で過ごした8ヶ月こそ私の人生で最も輝かしい時間だった」という言葉を残しており、それだけ北海道や日本の農業・酪農ために尽力してくださったことが伺えます。このことからもクラーク博士は「北海道開拓の父」とも呼ばれています。
クラーク博士の名言「少年よ大志を抱け」登場したのは、そんな札幌農学校の一期生の生徒にお別れの挨拶を言った時でした。その時に発せられた“Boys, be ambitious!”という言葉が語り継がれたと言われています。
この言葉はクラーク博士の像にも刻まれ、たくさんの人の心を励ましました。「少年よ大志を抱け」という言葉から、人生の岐路において最善の決断をする勇気を貰った人も多いのではないでしょうか。
「少年よ大志を抱け」には続きがあった!?
“Boys, be ambitious! Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.”
https://www.lib.hokudai.ac.jp/collections/clark/boys-be-ambitious/
上記は北海道大学の附属図書館のホームページより引用しました。“Boys, be ambitious!”のあとに続く言葉があります。教科書に掲載された経緯もあり、この文言は解釈の主流でしたが、どうやらこれがクラーク博士が言ったものとは考えにくいといいます。
「少年よ大志を抱け」、そのあとに続く言葉について調べてみますと非常に多くの言葉や解釈があり、現状では諸説ありといった様子です。
なぜこんなにも多くの解釈が生まれたのかは謎のままです。それらは、一期生の受け止め方だったのか、それとも博士の人物像からそう言われるようになったのか、ルーツは明らかになっていません。
冒頭の「少年よ大志を抱け」はどの解釈にも共通して含まれています。博士自身がが「ambitious」や「ambition」という言葉が好きでよく口にしていたと言う情報もあることから、クラーク博士が言った可能性は高いという事です。
続きの新しい解釈は多数あります!