三段論法とは|例/問題/書き方/証明とよくある間違いを説明します!
更新日:2024年06月15日
三段論法は、論理学の範疇にあることは、先に述べました。論理学は、ものごとを論証する、説明する方法を探求し、体系化する学問と言われています。論理学における論証方法には大きく分けて、演繹法と帰納法という二つのアプローチがあります。
帰納法という言葉も、中学校で習ったことを覚えていますか?帰納法は、いくつかの個別具体的な事実を見て、これを前提に、一般論を推論する方法です。例えば、「この豚肉はうまい」「あの豚肉もうまい」、だから「およそ豚肉というものはうまい」という具合です。ただ、この帰納法は、あくまでも確率的な推論に過ぎません。あの豚肉もこの豚肉もおいしかった、けれども、今回買った豚肉はまずかったというケースがあり得るからです。
三段論法は演繹法
これに対し、三段論法が属する演繹法は、一般論から、個別具体的な場合を推論する方法です。帰納法とは、まさに逆の思考です。例えば、「およそ豚肉はうまい」「これは豚肉である」「豚肉であるから、この豚肉はうまい」ということです。
あれ、そんなはずはない。「豚肉だからとって、まずいものもあるではないか、おかしいぞ。帰納法と同じ間違いじゃないか。」と気付かれた方は多いでしょう。そのとおりです。では、上記の三段論法のどこが、おかしいのでしょうか。
そう「およそ豚肉はうまい」という前提1が間違っているのです。いいや、間違っていない、豚肉はうまいよと言われるかもしれませんが、ここで問題なのは、前提1として「およそ豚肉はうまい」と言ってしまうと、これは、「豚肉というものは、一切の例外なくうまい」という意味になってしまうことです。
三段論法は演繹法ですから、前提1となるのは、一般論です。ここでいう「一般」論は、言葉の意味としては、「一般」とか「ふつうは」という意味ではなく、「必ず」の意味と理解しなくてはなりません。そうではなく、三段論法の前提が、例外を許容する内容であった場合は、結論が出てこなくなってしまいます。つまり「およそ豚肉はうまいが、例外もがある」「これは豚肉である」「この豚肉は、うまいか、まずいかわからない」となってしまうわけです。
三段論法でよくある間違い
少しややこしく感じてしまう三段論法ですが、そのなかでもよくある間違いをいくつかみてみましょう。
前提が間違っている場合
このように、三段論法の前提は、必ず成り立つ一般論、言い換えれば、普遍的な内容でなくてはなりません。そうでない場合は、論理が成立しないことになります。先にも述べたとおり、例外を許すものではダメです。
それでは、次の例は、どうでしょうか。
(前提1)牛乳は、絶対に、ガンに効く
(前提2)この飲料には、牛乳が入っている
(結論)この飲料は、絶対に、ガンに効く
前提1は、例外を許さない言葉になっています。しかし、結論が間違いなのは明白です。これは、前提1の内容自体が間違っているからです。これでは、どのような論理を用いても、正しい結論には至りません。
先ほどの、「およそ豚肉はうまい」の話も、例外なく豚肉はうまいという前提1自体が、真実と異なるために、間違ってしまったのです。三段論法は、各前提が真実であることを条件として、結論の真実性が担保されています。各前提が真実でなければ、結論も間違ったものにしかならないのです。
使い方の間違い
では、次の例は、どうでしょうか。
(前提1)海は、青い
(前提2)この水たまりは青い
(結論)この水たまりは海である
当然、間違いです。どこが間違っているのでしょうか。これは、三段論法の使い方自体を間違えているのです。前提1は、「海が青い」ことを述べていますが、その逆である「青いものは海である」とは述べていません。にもかかわらず、結論で、水たまりが青いから海だと言ってしまっています。前提1を、曲解しているのです。少し、掘り下げましょう。
(前提1)AはBである
(前提2)CはBである
(結論)BはAである
これを見ると、なんとなく成立しているように読めます。しかし、指摘したとおり、(前提1)は、「AはBである」とは言っていても、「BはAである」とは言っていないのです。勝手に、前提1の内容を書き換えてしまっていることが、誤りの原因です。
この誤解を避けるためには、前述した法的三段論法の「要件」と「効果」という考え方を導入することが有効です。前提を、要件と効果に分ければ、「海である」ことが要件であり、「青い」が効果です。「海である」という要件が満たされれば、「青い」という効果が生じると理解すれば、その逆、「青い」から、「海である」という誤解した発想には至りません。効果から要件は生じないからです。
書き方
では三段論法の書き方について解説していきます。
三段論法の流れに沿った構成
三段論法の内容は理解していただけたと思います。では、この論法に則って文章を書く場合、留意するべきことはなんでしょうか。
もう皆さんは、(前提1)、(前提2)、(結論)という三段論法の流れを、把握できています。文章にする場合、素直に、その流れに沿って筆を走らせれば良いのです。奇をてらった構成にする必要はありません。
たいていは失敗しますから。これまでで、お解りのように、三段論法は、大きな前提1をたてて、それに前提2をあてはめて、結論を出します。前へ、前へと議論が進んでゆく論法です。ですから、三段論法どおりの、話の流れは、読み手にとって、もっとも理解しやすい進行です。
三段論法に従った段落分、章立て
文章が長文になる場合は、文章自体を、三段論法の前提1・前提2・結論という分類で分けてしまうことが、わかりやすい文章とするコツです。
そして、先ほど述べたとおり、三段論法は、各前提の内容が真実であることが大切です。そこで、各前提を記述する部分で、その前提が真実であることを議論することが、書くべき内容となります。
例えば、「肌がツルツルの男は、必ず女性にもてる」、「芸能人○○さんの肌はツルツルだ」、「芸能人○○さんは、女性にもてる」という話の場合、第1章は、「肌がツルツルの男は、必ず女性にもてるのか?」と章立てし、その中で、この前提1が正しいか間違っているか、例外があるのかないのか、議論を展開することで、文章を作ることができます。
次に、第2章として、「芸能人○○さんの肌はツルツル」という事実の真偽を検討することで、それ自体が文章のひとつのテーマとなります。
最後に、第3章として、「芸能人○○さんは、女性にもてる」という結論を導き、総括や感想を盛り込み、完結させます。
長い文章を構成するコツは、今、執筆している部分が、全体の中で、どのような位置を占めるかを常に意識することにあります。三段論法の考え方は、この観点から、文章作成にとても有用なメソッドと言うこともできるでしょう。
初回公開日:2017年07月19日
記載されている内容は2017年07月19日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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