Search

検索したいワードを入力してください

社会的弱者とは?支援の現状と制度|定義・社会的弱者の問題点

更新日:2020年08月20日

近年日本でも低所得者や性的マイノリティーなどの社会的弱者の存在が注目されています。しかし、日本における社会的弱者への支援体制は世界に比べて遅れています。今後は社会的弱者と強者との対立構造を超えて、国民全体が連帯していくことが求められます。

社会的弱者とは

近年社会的弱者が増大しています。社会的弱者とは社会集団の中で多数派の他者と比較して、相対的に不利な立場に置かれている少数者のことです。収入が相対的に低い経済的弱者だけではなく、情報弱者、性的マイノリティー、災害難民、低学歴、などさまざな社会的弱者が存在します。

社会的弱者の定義

社会的弱者は学者が提唱している言葉であり、ニートなどのように内閣府が明確な法的定義を示しているわけではないです。また定義自体も学者によって微妙に異なっている現状があります。

英訳ではsocially vulnerableといい社会的に傷つけられやすい人々といった意味合いで使われています。以下社会的弱者をさまざまに分類化して定義していきます。

経済的弱者

所得が相対的に低い社会的弱者のことです。日本では正規雇用と非正規雇用の所得格差が広がっており、相対的貧困率も高まっています。正規と非正規の所得格差についてはOECDは雇用の弾力化を日本に勧告しています。雇用の弾力は平たく言えば正社員の解雇をしやすくするということです。

日本においては整理解雇の4要件などで大企業の正社員は事実上解雇が不可能な状況です。一旦雇用すると解雇はできないとすると生涯賃金5億円の価値がある優秀な人材だけを正規雇用にし、後は非正規でカバーするという判断をします。

ですから正社員の金銭解雇を認めれば、企業も正規雇用を増やしやすくなる一方、生産性の低いサービス産業にロックインされている正社員がより生産性の高い産業に移ることが容易となり、経済成長ができるというのが、OECDの主張です。

性的マイノリティー

同性愛者や性同一性障害などの社会的弱者。日本では理解が広がっていないため偏見の目で見られやすくなります。また、ジェンダーによって雇用や給与体系に格差が生じている状態があります。

女性の所得が男性より低い原因としては、終身雇用、年功賃金を前提とした制度では途中で妊娠、結婚をして退職するリスクが高い女性を企業側が正規雇用として採りたがらないという現状があります。そのため女性の非正規雇用の割合は全体より高い傾向にあります。

学歴

現代では学歴が意味を成さなくなったという指摘は数多くあります。高学歴ニートなどが示すように勉強ができてもコミュニケーション能力などのハイパーメリトクラシー的な能力がないと、社会的弱者になる可能性があります。

しかし、日本が実力主義になったかというとそうでもなく、やはり新卒一括採用の時期を逃すと大企業の正規雇用は難しい現状は変わっていません。もちろん実力があれば、ベンチャービジネスを起こしたり、外資系企業に就職したりすれば、学歴が無くても高収入を得られますが、大企業の正規雇用と非正規雇用とでは生涯賃金に雲泥の差があり、全体的なデータで見れば学歴が低いほど社会的弱者になりやすいという現実があります。

情報弱者

情報化社会にいおいて情報を正確に入手できる人とそうでない人の間に生じる格差をデジタルデバイドといいます。情報がないと不利益を被りやすいので社会的弱者になりやすい傾向にあります。現代ではインターネット環境があるかないかでデジタルデバイドが生じやすいです。

また手に入れた情報の真偽を判断できる能力をメディアリテラシーといいます。ネットにはさまざまな情報が溢れているため、メディアリテラシーが低いと社会的弱者になりやすいといえます。

社会的弱者の支援の現状と制度

社会的弱者を支援する制度としては経済弱者を支援する生活保護、年金制度などがあります。職業訓練や就労支援なども社会的弱者を支援する制度です。情報弱者に関しては政府による情報公開、メディアリテラシーに関しては子供のときから教育をすべきとの声がありますが、体制は整ってはいません。性的マイノリティーに関しては日本ではほとんど支援は進んでいないのが現状です。

生活保護

社会的弱者を支援する制度としては生活保護が有名です。これは憲法25条の国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するという条文に基づいて国が社会的弱者を経済的に支援する制度です。ただ社会保障関係費の増加と負担する労働者層の減少によって支給額の減少等が起きています。また、不正受給や受給者が労働者よりも収入が多いなどの問題も起きています。

また一度受けてしまうと勤労意欲が起きずになかなか抜け出せないという問題点もあります。支給中に働いても、得た賃金は収入とみなされ、支給額と相殺されてしまいます。また、一旦就職すると生活保護は打ち切られるので、また首を切られるリスクを考えると受給者も前に踏み出せないのです。

こういった現状に対しては最初のうちは勤労で得た収入を自治体が一度預かるという形にして、就職後しばらくして安定して生活保護から抜け出せた後に返還するというシステムが提案されています。

経済学者の中には年金や生活保護などを廃止して全てをベーシックインカムや負の所得税に一元化すべきという声もあります。

年金

仕事からリタイアした高齢者に支給する国民年金、厚生年金、障害によって働くのが難しい国民に支給する障碍者年金があります。ただ年金制度はあくまでも生活を補助する制度であり、国民年金だけでは生活できない現状があります。

支給額が多い厚生年金は基本的に正規雇用の労働者が受け取れる年金であり、労働者層の4割が非正規である現状においては年金は社会的弱者を支援する制度としては機能していないという指摘があります。

ベーシックインカム

ヨーロッパなどで多くの経済学者が社会的弱者を支援する制度として提唱しているシステムにベーシックインカムがあります。全国民に一律に同じ額を支給する制度で支給後に総所得に応じて課税します。ただ勤労意欲が無くなると言う批判は根強く、実現した国はありません。

似たようなシステムとしてミルトン・フリードマンが提唱した負の所得税があります。これは所得税の課税最低額を決めておいて最低額を下回った国民には最低額との差額に応じて税金を支給するというシステムですが、ベーシックインカムと同様批判が強く実現可能性は低いといえます。

社会的弱者の問題点

社会的弱者が引き起こす問題としては国民の分断が上げられます。貧困層は高所得者に対して恨みを持ち、高所得者は一生懸命働いて稼いだお金を累進課税の所得税によってもっていかれ、働かないで怠けている(と彼らが主張する)社会的弱者に恨みを持つことによって、国家としての国民の統一性が失われます。

9.11のテロも宗教的対立の背景の他に発展途上国の社会的弱者による豊かな先進諸国への恨みがあったと主張する学者もいます。これからの日本、世界はこうした社会的弱者といわれる若者と高齢者、非正規と正規、発展途上国と先進諸国などの対立をどう解消するかという問題に立ち向かう必要があります。

未来へ向けて

初回公開日:2017年06月28日

記載されている内容は2017年06月28日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

Latests