「仰げば尊し」の意味と使い方・由来・歌詞の意味|いととし
更新日:2024年06月29日
仰げば尊しの歌詞を覚えているかたはどれぐらいいらっしゃるのでしょう。卒業式で歌ったとしてもすでにうろ覚えになってしまっている方が多いはずです。メロディが流れたとしても、冒頭のワンフレーズ程度、頑張っても1番ぐらいまでが大方でしょう。
仰げば尊しの意味を知るには、歌詞を紐解きそこに隠された意味を見つけ出すことが大切です。まずはどのような歌詞なのかを確認し、その後細かく意味について確認していきましょう。
仰げば尊しの歌詞
<1番>
仰げば 尊し 我が師の恩
教(おしえ)の庭にも はや幾年(いくとせ)
思えば いと疾(と)し この年月(としつき)
今こそ 別れめ いざさらば
<2番>
互(たがい)に睦(むつみ)し 日ごろの恩
別(わか)るる後(のち)にも やよ 忘るな
身を立て 名をあげ やよ 励めよ
今こそ 別れめ いざさらば
<3番>
朝夕 馴(な)れにし 学びの窓
蛍の灯火(ともしび) 積む白雪(しらゆき)
忘るる 間(ま)ぞなき ゆく年月
今こそ 別れめ いざさらば
いととし
1番の歌詞に登場する「いととし」は、歌詞の表記上では「いと疾し」と漢字があてはめられています。耳で聞いているだけだと「いと年」のような漢字表記をイメージしがちですが、「疾し」となります。
「疾し」とは「はやい」や「勢いが良い」などの意味があります。これを前後の歌詞と組み合わせて意味を確認してみましょう。
「思えばいと疾し この年月」
↓
「思い起こしてみると、この学校で学んだ年月はとても早く感じました」
このような意味をもっています。
別れめ
語感だけだと「分かれ」と解釈してしまいがちですが、正しい漢字表記は「別れ」となります。1番の最後を締める歌詞の部分に登場します。別れはそのままの意味として、最後にくっついている「め」が意味を知る上で重要なポイントです。
この「め」は漢字表記の「目」とは意味合いが異なります。この「め」は何かをしようとする時に使う助動詞となっています。歌詞で当てはめると「いまこそ別れめ」ですので、「いまこそ別れよう」という決意を表している意味をもっています。
ちなみに「いまこそ」の「こそ」は係助詞となり、現代語に意味を訳す際には訳す必要はありません。
やよ
2番の歌詞に2回登場する「やよ」も意味が分かりにくい語句の一つです。
別(わか)るる後(のち)にも やよ 忘るな
身を立て 名をあげ やよ 励めよ
この「やよ」とは誰かに呼びかける時に発する言葉として扱われています。わかりやすく表現をすると「掛け声」や「はやし声」です。同じ意味で使うとすると「やあ」などがこれに当たります。
つまり文章的にはあまり意味はないと言えます。
我が師
「我が師」という言葉は「仰げば尊し」にはなくてはならない言葉です。この歌を歌う生徒自身が、ここまで歩んできた道のりの中で、大切なことを教えてくれた教師、指導者を意味させるべく「我が師」と表現しています。
教師の「師」であり、師匠の「師」でもあることから、ただ単純に勉強を教えてくれただけの人ではないことが見えてきます。
その恩師を思い出すとき、思わず感極まり天を仰ぐ、これが仰げば尊しの由来とも考えられます。
最近ではあまり歌われなくなった理由
平成の頭頃まで、卒業式といえば「仰げば尊し」と言われるほどの定番ソングでした。しかし、平成の世が進む中、徐々に「仰げば尊し」を卒業式で歌う学校や卒業式は減少の一途をたどります。
なぜ卒業式で「仰げば尊しは」歌われなくなったのか。それには歌詞が持つ意味が時代は池には合わなくなったのが原因だと言われています。
現代の学校事情にそぐわない
歌詞の中に幾度と登場する「恩師」であり「我が師」と歌われる「教師」と、歌う側となる生徒との関係性が昔とは大きく変化しています。いつの時代でも影響を受けた先生というのは存在し、その先生のおかげで人生が変わったというエピソードはありますが、現代の学校事情を見るとあまりその数は多くないことからも、歌われなくなってしまいました。
言葉づかいや表現が難しく理解できない
歌詞の端々に込められた大切な思いは、現代の子どもたちには理解できない言葉づかいで綴られています。そのことから、意味まで教える時間もないのが現状となり、理解できない難解な歌を無理やり歌わせるよりも、もっと適した楽曲が登場しているので、そちらにシフトする形が取られていったため「仰げば尊し」は卒業y式で歌われなくなっていきました。
最近では唱歌ではなく、3人組の人気音楽グループ「いきものがかり」の「YELL」や、こちらも3人組のロックバンド「レミオロメン」の「3月9日」などが、卒業式で多く歌われており、生徒たち自身もこれを歌いたいと熱望しています。
昔の曲だからこそ味わいのある唱歌「仰げば尊し」
初回公開日:2017年12月22日
記載されている内容は2017年12月22日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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