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「後ろ倒し」とは|日本語として正しい?/類語/誤用例

初回公開日:2017年08月25日

更新日:2019年01月21日

記載されている内容は2017年08月25日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

「後ろ倒し」という言葉、貴方は使っていますか。最近物議を醸しています。なぜこんな言葉が生まれたのでしょうか。みなさんは、「後ろ倒し」と聞いてどう思いましたか。「後ろ倒し」と言う言葉がどうして生まれたか、日本語として正しいのか今回「後ろ倒し」について紹介します。

後ろ倒しとは

「後ろ倒し」という言葉を、みなさんは普段使いますか。使う人も使わない人もこの記事を読んで、より「後ろ倒し」という言葉を理解したうえで、正しい使い方をして頂きたいと思います。

日本語は、他の言語と比べても表現の仕方がとても複雑で、似たような言葉や言い回しがたくさんあります。それに加えて相手との立場の違いや、親密度、男女の違いというのも微妙に関係してきます。その中から、その場にあった適切な言葉を選んで使っていかなければなりません。難しくて面倒な感じがしますが、それを上手にこなすことが出来ればとても魅力的な人間に見えることでしょう。

「後ろ倒し」の意味と性格

ここでは、「後ろ倒し」という言葉を考えていきます。まずは「後ろ倒し」の意味を調べてみると、このように書いてあります。

後ろに倒す、計画などを当初の予定よりも遅らせる、などの意味で使われる言い回し。反対の表現は「前倒し」。

出典: http://www.weblio.jp/content/%E5%BE%8C%E3%82%8D%E5%80%92%... | %E5%BE%8C%E3%82%8D%E5%80%92%E3%81%97とは - Weblio辞書

これを読むと、この場面では使えるだろうといって簡単に使えないのが、この言葉の難しいところです。何といっても、まだあまり聞きなれない人が多いということと、他に言い換える言葉があるということが使いづらくしているのだと思います。

全く意味の分からない言葉ならどういう意味か聞き返せばいいのですが、「前倒し」の反対の意味だろうということは推測できるので、わざわざ聞き返すほどでもないということで違和感だけが残ってしまうのでしょう。

後ろ倒し誕生には、そういう下地があった?

それではなぜ、このような言葉が出てきたのでしょうか。この言葉が一番みなさんの目に触れたのは、安倍晋三首相が就職活動の「後ろ倒し」のことについて言及し、それをマスコミが取り上げたことがきっかけだといわれています。

マスコミが取り上げたのは、就職活動開始の時期を後にずらすというニュースの重要性はもちろんですが、それに「後ろ倒し」という言葉が使われたことも少なからずあったのではないかと考えられます。日頃日本語の使い方にはとても神経を使い、そして苦しめられている職業の方たちですから、そこに敏感に反応したのではないでしょうか。

日本語として後ろ倒しは正しい?

前述した安倍首相による就職活動の後ろ倒しということが報じられた時も、意見として「『先送り』や『繰り下げ』だと少し感じが違う」、「『後ろ倒し』は分かりやすい」というものが出ました。さらには「辞書にほとんど出てないからといって、間違っているとは言えない」という、総理大臣をおもんばかったような意見もありました。こうして総理大臣が発信したことによって、ニュースとして大きく取り上げられることになったわけです。

ニュースということは外国でも報じられることになるのですが、どのように英訳されたのでしょうか。前後の文との関りもありますが、主な対訳はpostponement、 moving back となっています。英語で表すときは、延期、後回しという意味で訳されるようです。なお、日本語の表現や使い方にはとても厳しいNHKのアナウンサーも、この後ろ倒しという言葉を使っていたことがあるそうです。

「後ろ倒し」をよく使う人たちとは?

一般の方で、日常の会話において「後ろ倒し」という言葉を使いこなしている人はそんなにいないのではないかと思います。一体どのような所でよく使われるのでしょうか。

最初は官庁俗語として堅い職業の人たちが使っていたようですが、1979年には国会の議事録でも登場していて、官僚や政治家たちがよく使う業界用語だったようです。漢字ばかりの難しい単語が並ぶ中で、少しでも分かりやすく雰囲気が伝わりそうな言葉を使いたくなったのかもしれません。

「後ろ倒し」をメジャーにするには?

結局、日本語として後ろ倒しは正しいのかと言われると、正しくないとは言えない、けれど一般的ではない。という日本語らしい答えになってしまいます。一般的ではない「後ろ倒し」を一般的にすれば、だれもが違和感なく使える言葉になるはずです。

どうすれば、みんなに知られることができるでしょうか。安倍首相のような有名な人に、意味のある所で言ってもらうというのが効率的だと思います。この「後ろ倒し」もそういう機会があったからこそ、このように正しいか正しくないかと議論されることになったのです。

使い方が間違っていないのならば、「前倒し」という言葉が今では違和感なく使われているように、「後ろ倒し」も今後は新しい日本語として認知されていくこともあるのではないでしょうか。

使うときは、場の空気を読んで

後ろ倒しという言葉は、日本語として使うのは正しい、でもこの場でこの空気で使うのは正しくない、という難しい使い方をしなくてはいけません。仮に正しくても、周りの圧倒的多数が違和感を感じれば、違う言葉を選んだほうがいいということです。それならば、いっそのこと違う言葉を使ったほうが楽だという方のために、後ろ倒しの類語について考えてみました。

後ろ倒しの類語

後ろ倒しと似ていて言い換えることが出来る言葉は、先送りや後回しといった意味合いになるののですが、日本語の語彙の豊富さを知るために出来るだけ多くの言葉を並べてみました。 

先送り、延ばす、延期する、見送る、遅らせる、見合わせる、持ち越す、予定が流れる、ずれこむ、引き延ばし、柔軟に対応する、なおざりにする、足踏み状態、繰り越す、猶予、期日延期、期日延伸、持ち越し、くり延べる、繰り下げ、日延べ、先に延ばす、後ずらす、何もしない、保留、後回しにする、しまい込まれる、待機、滞りなどです。他にもまだ前後の文脈や使う場面によっては、言い換える言葉があるかもしれません。

似た言葉が多いから難しい

これだけ多くの言葉の中から上手に言葉を選ばなければならないというのは、日本語通訳をする外国人の方にとって大変です。

後ろ倒しという言葉を使う場面を考えると、取引先とのメールのやり取りだったり、仕事上で連絡するときだったりと、真面目な場面が多いように思われます。この使い方によっては、自分の評価まで左右されかねない難しいところです。やはりこの場合では、先送り、繰り下げ、持ち越しあたりが無難な所です。

後ろ倒しの誤用例

今度は、後ろ倒しという言葉の誤った使い方を、簡単な文で比較してみましょう。先ほどの類語の中から、「食事はつい後回しにしてしまう」、「残高を来月に繰越す」、「その問題は順に繰り下げる」、「この議論は次の会議まで持ち越す」、「プロポーズされたけど、返事は先送りにした」。これらをすべて後ろ倒しで通用するか変換してみても、何となくしっくりきません。

微妙な意味の違いも

先ほどの就職活動の話でいうと、「就職活動の開始時期が、後ろ倒しになった」は、違和感なく聞こえますが「就職活動開始時期の議論が、後ろ倒しになった」になると、先送りのほうが意味が伝わってくるように感じます。

「後ろ倒し」は言葉のニュアンスや雰囲気が微妙なだけに、明らかに間違っていなければ誰も指摘してこないかもしれません。それでも恥ずかしい思いはしたくないので、正しい使い方をというよりも間違った使い方はしたくないものです。

「後ろ倒し」に市民権を

後ろ倒しという言葉について色々と考えてきましたが、結局後ろ倒しは正しいのか正しくないのかと言われれば、昔からある正しい言葉ではない、ということになるでしょう。正しいと自信をもっていても、その場の雰囲気が「?」ならば正しくないということになります。

しかし、これから使う人が増えることによって市民権を得れば、立派に正しい日本語として認知されていくのではないでしょうか。今はまだ馴染んでいるとはいいがたいでしょう。

未来の「後ろ倒し」

後ろ倒しという言葉は、前倒しという言葉があったからこそ生まれた言葉ですが、前倒しも以前から一般的には使われていない言葉でした。「繰り上げ」でもいいのに「前倒し」という言葉を使ったように、「後ろ倒し」も将来は普通に使われるようになるのかもしれません。

「後ろ倒し」という言葉を使って文章を作りなさい、という問題でもない限り、今は無理して使うことはありません。これからも、ニュースなどで様々な業界用語が出てくるかもしれませんが、「後ろ倒し」という言葉は、昔から使われ続けている言葉と流行によって新しく生まれる言葉などが合わさり、表現の仕方が流動的に変わっていく中で生まれた言葉のひとつといえます。

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