「雨ニモマケズ」の意味とは?宮沢賢治が詩に込めた思いを解説
更新日:2024年10月09日
宮沢賢治の童話や詩は小学生を始め、教科書に掲載されることが多いため、「雨ニモマケズ」以外の作品にも馴染みがあるでしょう。
世代を超えて長く読み継がれている賢治の作品から、代表的な作品5選を紹介します。
「タイトルだけ知っている」「子どもの頃に読んだ」という本を今の目線で読んでみるのはいかがでしょう。
1:銀河鉄道の夜
貧しく孤独な少年ジョパンニは、お祭りの日にふと気がつくと幼馴染のカンパネルラと共に銀河鉄道に乗っていました。車内ではタイタニック号に関係する人など、さまざまな人々と出会い、旅は続きます。
この作品は「ほんとうのさいわい」をテーマに何度も書き直した未完の名作です。
賢治の科学者らしい視点で星空や鉱物などの描写が美しく描かれ、宇宙飛行士の毛利衛さんは、この本がきっかけで宇宙に興味を持ったといいます。他にも、この作品に影響を受けたアニメ、音楽は多数あります。
2:セロ弾きのゴーシュ
町の楽団でセロ(チェロ)を弾くゴーシュは、楽団の中で一番へたな存在です。楽長は10日後の音楽会でゴーシュが足をひっぱって、楽団の評判を下げないようにと言いました。
その晩から一晩中懸命に練習をする彼の部屋に毎晩動物が訪ねて来ます。ゴーシュは動物たちが疎ましく悪態をつきますが、彼らの訪問には意味がありました。
この作品は賢治が実際にチェロを練習していたために生まれました。睡眠も取らず、10日間一心不乱に練習することで上達したゴーシュは、からだがじょうぶだからこんな無茶な練習ができたといいます。病弱な賢治ならではの言葉です。
「セロ弾きのゴーシュ」は賢治が最後まで推敲を加えた一番完成度の高い作品だといわれています。
3:注文の多い料理店
山にスポーツ狩猟に来た都会の紳士2人は西洋料理のレストラン山猫軒を見つけて中に入ります。このレストランは普通とはマナーが違っていました。
ストーリーに登場する2人の紳士はすべてをお金に換算し、なんでもお金で解決しようとする都会のブルジョワとして描かれています。命を軽んじる殺傷行為や都会のブルジョア文化への批判をモチーフに物語は意外な結末に向かっていきます。
「注文の多い料理店」は、賢治が生前に自費出版した唯一の童話集のタイトルになっている作品です。当時、この童話集はほとんど売れませんでした。
4:風の又三郎
田舎の小学校に都会から転校してきた赤い髪の三郎を子ども達は風の神「又三郎」と呼んで遠巻きにしていました。しかし、三郎は自分が損をしてでも他人に与えるという優しさを持っていて、子ども達は少しずつ三郎の存在を受け入れます。
自然豊かな環境の中で、のびのびと遊ぶ子ども達は命の危険と隣合わせです。時には三郎の不思議な力に助けられ、子ども達もまた三郎を助け仲間意識や分かち合うことを学んでいきます。
三郎と過ごした日々はわずか12日間ですが、異質な存在を受け入れ接する中で子ども達は大きく成長します。方言や東北地方に伝わる民話、オノマトペを用い、昭和の田舎の子ども達の様子を活き活きと描いた作品です。
5:よだかの星
「よだか」という鳥は、見た目が醜いために皆に嫌がられ、いじめられていました。そして、名前に「たか」という文字が入っているために鷹の怒りを買い脅されます。そこでよだかは巣を離れることにし、星を目指して夜空を飛び続けました。
ルッキズム (外見至上主義)や食物連鎖、生きるためには他の命を奪わなければならないことに対しての葛藤などをテーマにした作品です。
「雨ニモマケズ」の意味を知って詩の理解を深めよう
「雨ニモマケズ」は、宮沢賢治が亡くなった後に見つかり、遺作を整理していた高村光太郎と賢治の弟の清六が賢治の一面を表した良い文章だということで作品化を決めました。
宮沢賢治は熱心な法華経信徒で、これが「雨ニモマケズ」の作品の意味に大きく関係します。亡くなる約2年前、賢治の体が弱っている時期に自分自身に向けて、この文章は書かれました。
「雨ニモマケズ」には、丈夫な体を持ち、困っている人のところに行って法華経の教えを実践したいという賢治の強い願いが込められています。
この記事を読むことで「雨ニモマケズ」の書かれた意味を知り、詩への理解が深まるでしょう。これを機に「雨ニモマケズ」の全文を読んでみてはいかがでしょう。
初回公開日:2022年07月22日
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