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「させていただいております」の意味と使い方・漢字|二重敬語

更新日:2024年10月05日

近頃は「させていただいております」という表現が頻繁に使わています。使い方によっては誤用だとされる場合もある「させていただいております」という言い回しの本来の意味、文法的解釈、よくある使われ方や正しい使い方を、例文を交えながらわかりやすく説明します。

楽しみにしていたランチに出かけ、お店の入口にこんな札が掛けられていたらガッカリするでしょう。定休日であれ臨時休業であれ、よく見かける表現です。お店側は「本日は休業です」ということを伝えたいだけで、文法的にも間違いはありません。

しかしながら、「お店が休みでガッカリ」という気持ちに加え、この表現によって怒りを感じる人もいることでしょう。理由は後述の「正しい使い方」で説明します。

担当させていただいております

取引先の担当者や、店頭でお客様を相手に「この件は私が担当させていただいております。よろしくお願いいたします。」などと挨拶することもあります。相手に対する敬意も感じられる表現ですし、文法的な誤りもありません。

単刀直入に「私が担当です」と言うこともできますが、「させていただいている」とすることで相手にやんわり許可を求めている印象を与えます。

実際に担当させてくれているのは勤務している会社であり、目の前の取引先やお客様ではないのですが、初対面の担当者を相手に「あなたが担当だなんて許しません」という人も少ないでしょうから、こういった表現が使われているのでしょう。

もしクレームが入った時に「私が担当させていただいておりますので」などと言うと、「許可した覚えはないぞ」と怒らせてしまう可能性もあるので注意しましょう。

お席の移動はご遠慮させていただいております

実は、これは間違った使い方です。しかし、主に話し言葉ではこのような間違いが起こりやすく、「お車でのご来場はご遠慮させていただいております」や「携帯電話のご使用はご遠慮させていただいております」というのも誤りです。

「させていただく」のは「させてもらう」という意味ですから、「遠慮させてもらう」のは言葉を発した人に他なりません。席の移動を希望するお客に対して、「(店側は)移動は遠慮させてもらっている」では意味が通りません。遠慮すべきなのはこの場合お客の方で、店側ではありません。

「させていただく」が謙譲語を離れて、単なる丁寧な言い回しとして使われている例だと言えるでしょう。

「させていただく」をよく使いがちな場面とは

個性が尊ばれる時代になったとはいえ、日本人は謙虚さを美徳とする精神が強いと言われています。敬語表現はその美徳を大切にしているからこそ、現代までずっと残っている言葉の使い方です。

「させていただく」とは、「基本的に相手の許可を得たうえで、それを行うこと」を意味します。自分がしてもらうこと(相手がしてくれること)で、自分が何かしら恩恵を受けるときに使うのが本来の使い方だとされています。例えば「体調が悪いので早退させていただきます(いただけますか)」という使い方です。

それがいつしか、「相手が望んでいることを進んでしてあげる」というニュアンスになり、「自分が行うことの丁寧な言い方」としても使われるようになったのでしょう。

CDを出させていただきました

アーティストがアルバムを出した時に、こんな風に言っているのを聞くことがあります。「CD出しました」ではストレートすぎる印象を与えてしまうと考えて、色々な人のおかげで「CDを出すことができた」という受けた恩恵に対する感謝を含ませたいのでしょう。

しかしながら、CD発売に一般の人々やファンの許可は不要なので、「させていただく」という表現をする必要がありません。あるとすれば、CDを作るにあたって尽力してくれた人と直接話すときでしょう。

お断りさせていただいております

これはもはや、許可や謙遜の意味合いではなく強固な意志を主張するための使い方で、敬語の別の使い方にあたります。敬語は相手に敬意を表すのが主な使い方ですが、敬語を使うことであえて相手との距離を取り、意図的に慇懃無礼をはたらくという使い方もあります。

相手の意志に関わらず「あなたがどう思おうと絶対にお断りです」ということですから、ビジネスシーンにはあまりふさわしくはありません。むしろプライベートで「もう帰らせていただきます」など立腹を相手にわからせるシーンがふさわしいのでしょう。

「させていただいております」の正しい使い方とは

「させていただいております」が実際どのように使われているのかがわかってきました。謙譲表現として使う場合のふさわしいシーンや、誤解を生まないための注意点などを、例文を交えながら考えてみましょう。

ビジネスの現場では「させていただく」「していただく」という表現も多いので、合わせて説明していきます。

何かをさせて欲しいとき(許可を求める)

申込書などを郵送で相手に届けたいときについて考えてみましょう。

・お申込書を郵送させていただきますので、ご記入の上ご返送ください。

・ご希望の方には、パンフレットを送らせていただいております。

書面を郵送「してもらう」のは相手なので混乱しがちですが、こちらの立場からは「相手に郵送させてもらう」行為なので、「郵送させていただく・送らせていただく」と使います。郵送することについて相手の許可が必要なことから、本来の意味に合った使い方と言えます。

前後の会話次第では、「郵送させていただいてもよろしいでしょうか」と問いかけの形にする方が自然な場合も多いです。「返送」はお客様がすることなので「返送させていただく」とは言いません。「返送していただけますか」とすることはできますが、同じ文の中で複数回「していただく・させていただく」を使うのは音声として少々くどい印象があります。

同意を得られていることに対して使う(許可・確認)

ビジネスシーンでは、相手が当たり前に許可していることが明らかな場合であっても、「あなたに許してもらって○○させてもらう」という姿勢でコミュニケーションをとる場合が多いです。

・明日には納品させていただきます。

・次回の会議で報告させていただきたいと存じます。

この場合、「納品いたします」「報告いたします」でも十分な敬語と言えるのですが、「させていただく」と表現するとよりこちらの低姿勢を印象付けることができるでしょう。

動詞との相性を考えて使う

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初回公開日:2018年05月26日

記載されている内容は2018年05月26日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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