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2018年04月12日

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

志望する会社や官公庁などから内定は出たものの、内定取り消しされることはないのだろうかと心配する声をよく聞きます。今回は、どんな場合に内定取り消しがされるのか、法律や判例などをお示しするとともに、どのような形で内定取り消しが通知されるのか見ていきましょう。

そもそも内定とは?

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

就職活動をして、希望の会社などから「内定」が出たときの喜びは格別です。でも、改めて「内定」とはどういうことなのか、その後、正式に働き始めるまでの間は安心しきっていていいのか、などの疑問に明確に答えられる人は意外と少ないです。改めて、「内定」についておさらいしていきましょう。

内定とは何か?

それでは「内定」とはどういうものなのでしょうか。簡単に言うと「雇用の約束」です。新卒の場合を想定すると、3年次から4年次にかけて採用選考を受け、4年次の春以降に採用に通知を内々定あるいは内定として口頭などで受け、10月以降に正式な採用内定通知がなされます。

入社に関する誓約書などを提出するなど一連のプロセスをたどる採用の場合、採用内定の法的性格は、「就労(効力)始期付・解約権留保付労働契約」であると判例上確立しています。(最2小判昭54.7.20 大日本印刷事件 民集33巻5号582頁)

何やら難しい言葉ですが、「就労始期付」とは、「働き始める時期をあらかじめ指定する」ということを、「解約権留保付」とは「労使双方に解約権がある」ということをそれぞれ表しています。つまり、採用内定がなされた時点で、法律的には学生と会社との間に労働契約が成立しています。

内定取り消しは違法なのか?

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

では、内定取り消しは違法なのでしょうか。法的根拠などを見ていきましょう。

内定取り消しの法的根拠は?

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採用内定がなされた時点で、法律的には学生は内定を出した会社の社員になります。従って、内定取り消しは「解雇」に当たります。この点は、特に注意を要するポイントです。

では、内定取り消しが認められる事由にはどういったものがあるのでしょうか。まず、前提となる考え方として、「労働基準法第18条の2」に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、、その権利を乱用したものとして無効とする」と規定しています。

つまり、内定取り消しには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当として是認」される必要があるということです。

内定取り消しの原因例は?

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

それでは、内定取り消しになる具体的な事由を見ていきましょう。

内定後に判明した事情や非違行為がある場合

内定後に会社の採用条件などに合わない事情や非違行為が明らかになった場合は内定取り消しの事由になります。ただし、会社が内定を出す前に知っていたら、または、知ることができる立場にいたとしたら、内定取り消しの事由としては成立しません。

特に、「知ることができる立場」は、「面接を行った事実がある」ことによって知ることができる立場にあったといえる可能性もあるので慎重な判断が必要です。

留年・落第・健康状態

留年や落第によって、入社が間に合わない、あるいは既定の就業日数をこなすことができなくなる場合は、内定取り消しの事由として成立します。健康に関しては、到底働くことができる状態ではないと医師が認めるなど、客観的な判断があれば内定取り消しの事由が成立します。

提出した書類の虚偽記載

提出書類の虚偽記載も内定取り消し事由の一つです。ただし、虚偽が仕事に及ぼす度合いが問題です。

会社の経営状態の悪化

内定後、会社の経営状態が想定外に悪化し、リストラなどが不可欠な場合も内定取り消し事由になります。

内定取り消しはどのように通知するのか?

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

それでは、内定取り消しはどのように通知するのでしょうか。まず、「解雇」とは、会社から従業員に対する意思表示によって、一方的に労働契約を解除する法律上の行為です。したがって、同意がなくても従業員側に到達した時点でその効力が発生します。

形式についても、労働基準法上の定めはないので、民法の一般原則によって、口頭による解雇通告であっても、従業員に伝達さえすれば有効になります。ただし、後々のトラブルを避けるために、通知のやり方には注意が必要です。

電話の場合は?

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

内定取り消しの通知形式については、口頭による解雇通告も可能であるということをお示ししました。したがって、電話による内定取り消しの通告も、内定者に伝達さえすれば有効になります。

しかしながら、証拠が残りにくいのであまり良い方法とはいえません。止むを得ず電話による内定取り消しを行わざるをえないい場合は、確かに内定取り消しの通知を行ったという証拠を残す必要があります。音声や発信日時が客観的に判断できるようなものを残すようにしましょう。

メールの場合は?

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

内定取り消しの通知形式として、メールによる伝達でも差し支えありません。先の電話による通告と比較すれば、送信日時、受信者、発信者、内容などの記録が残ります。したがって、内定取り消しの通告を行った証拠として認められやすいということになります。

ただし注意が必要です。内定取り消しの解雇通告の効力が発生するのは、会社側が内定者にその意思を表示し、内定者側に到達した時点とされています。口頭で通告を行った場合や、その場で解雇予告通知書を手渡した場合には、その時点で内定取り消しの解雇通告として有効になります。

ところが、メールで通告を行った場合には、メールが相手方のサーバーに到達した時点に到達したものとして、解雇予告日が確定します。発信から到達までにタイムラグが生じるリスク、何らかの理由で遅延や不着が生じるリスクが残ります。

書面の郵送の場合は?

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

内定取り消しの通知形式として、書面を郵送により届ける方法も可能です。ただし、先ほどのメールと同様、発信から到達までのタイムラグなどのリスクがあります。

到達の判断としては、本人または家族が受け取るか、不在の場合の保管期限が経過すれば、本人が開封または読了したかどうかにかかわらず、解雇予告日が確定したことになります。

内定取り消しの通知はどの方法がいい?

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ここまで、内定取り消しの通知形式について、電話、メール、書面の郵送の場合について見てきました。その結果、いずれも手段としては可能ですが、内定取り消しの伝達の確実性や伝達した証拠という観点からは、好ましい方法とは言えないことが分かりました。

そのため、内定者に内定取り消しの通告を行う場合は、本人に直接書面を手渡すとともに、あわせて受領書などを取っておくのが最も確実な方法といえるでしょう。

内定取り消しに関する法律にはどんなものが?

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それでは、内定取り消しに関する法律にはどのようなものがあるんでしょうか。

労働契約法

内定取り消しに関する法律として「労働契約法」があります。具体的な条文を見ていきましょう。

労働契約法第3条と第16条では次のように定めています。

第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
(労働契約の内容の理解の促進)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働基準法

次に、内定取り消しに関する法律として「労働基準法」があります。

労働基準法第20条

第20条  

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

職業安定法

次の内定取り消しに関する法律は、「職業安定法」です。

職業安定法第54条

第五十四条 厚生労働大臣は、労働者の雇入方法を改善し、及び労働力を事業に定着させることによって生産の能率の向上をさせることについて、工場事業場等を指導することができる。

職業安定法施行規則

職業安定法の施行規則も、内定取り消しの関連法令です。

職業安定法施行規則第35条

第三十五条 厚生労働大臣は、労働者の雇入方法の改善についての指導を適切かつ有効に実施するため、露王同社の雇入れの動向の把握に努めるものとする。

2 学校、専修学校(以下途中略)を新たに卒業しようとする者を雇い入れようとする者は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、あらかじめ、公共職業安定所及び施設の長に職業安定局長が定める様式によりその旨を通知するものとする。

一 新規学卒者について、募集を中止し、又は募集人員を減ずるとき。

二 新規学卒者の卒業後当該新規学卒者を労働させ、賃金を支払う旨を約し、又は通知した後、当該新規学卒者が就業を開始することを予定する日までの間(内定期間)に、これを取り消し、又は撤回するとき。

三 新規学卒者について内定期間を延長しようとするとき。

民法

民法も内定取り消しの関連法律です。

民法第1条・第709条

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、審議に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

第七百九条 故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

内定取り消しの場合損害賠償は可能か?

内定取り消しの場合損害賠償は可能か・内定取り消しの理由

では、内定取り消しを通告された場合、損害賠償の請求などは可能なのでしょうか。内定取り消しに関する具体的な裁判例などを見ていきましょう。

不当な内定取り消しに対する対処法は?

会社などから不当な内定取り消しを受けたが、これに納得できない場合、どのような対処方法があるのでしょうか。

内定取り消しを無効にする!

まず、内定取り消しの理由が合理的なものでない場合には、内定取り消し自体が無効になります。そのため、予定通り会社に雇ってもらえます。裁判上は「地位確認請求」と呼ばれています。

某テレビ局のアナウンサーが、学生時代に夜のお店でアルバイトしていたことを理由に内定取り消しをされました。これに対して、学生側が裁判を起こし、最後は入社することになりました。

この裁判自体は和解で終わりました。しかしながら、仮に裁判で争ったとしても、アルバイトの経歴だけで内定取り消しを行う行為について、裁判所は認めなかったでしょう。

損害賠償請求をする

また、会社などに対して損害賠償を請求することもできます。内定取り消しをめぐって、会社などとの信頼関係などが壊れる場合が多く、結局入社に至らなかったというケースが想定されます。

この場合、仮に就社していれば給与がもらえていたはずですから、このもらえなかった給与分の損害が発生しているといえます。加えて、内定取り消しを受けたことで、他の会社などへの採用応募ができなかったなどの状況に追い込まれることも想定されます。そこで、その精神的苦痛が損害に当たるとして、慰謝料を請求できる可能性があります。

内定取り消しに関する裁判例は?

それでは、内定取り消しに関する裁判事例を見ていきましょう。

大日本印刷採用内定取消事件

大日本印刷からの内定通知後、入社2か月前に採用を内定を取り消されました。就職先が決まらないまま卒業した者が、解約権の濫用に当たるとして提訴を行った事例です。

最高裁は、次のような判決を下し、解約権を留保した就労始期付労働契約の成立を認めた事例です。

(1)採用内定通知のほかに労働契約を締結するための特段の意思表示が予定されていなかった。会社の社員募集に応募した行為は、労働契約の申込みに当たる。

(2)採用内定通知は、応募者からの申し込みを承諾したものとみなされる行為である。就労の始期を昭和44年に大学を卒業した直後としており、「就労(効力)始期付・解約権留保付労働契約」が成立したと解する。

(3)採用内定を取り消せるのは、社会通念上相当として是認できるものに限られる。

日本電信電話公社事件

公安条例違反の現行犯で逮捕され、起訴猶予処分を受けたXが、当時の日本電信電話公社に対して、採用内定取り消しの効力を争った裁判です。大阪高裁は、次のような理由から判決を下し、採用内定を取り消しうるとして申し立てを却下しました。

(1)Xは、非合法活動を誇示し武力闘争を標榜する委員会に属し、道路交通法、公安条例違反という具体的な行為を行っている。社会的公共性の高い公社の職員として稼働させた場合、職場の秩序を乱し業務を阻害する危険性があり、適格性を欠くとの判断は首肯しうる。

(2)公社がXの政治的信条や政治的所属関係を嫌悪し、無届デモへの参加や逮捕・起訴猶予処分を理由として取り消したとは言えず、公序良俗や、思想信条・結社・表現の自由に違反するとも言えない。

インフォミックス事件

コンピュータ会社に勤務していたXさんが、別会社Y社からスカウトされ採用内定を得ましたが、経営悪化を理由として内定を取り消されました。これに対し、Xさんが地位保全等の仮処分を申請した事例です。

東京地裁は、入社の辞退を勧告したのが2週間前と短い期間であり、Xさんに著しく過酷な結果を迫るもので、社会通念上是認できないとして採用内定の取り消しを無効としました。

(1)始期付解約留保権付労働契約の解約権を行使できるのは、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認できるものに限定される。

(2)Y社は、Xさんには入社を前提とした職種変更を打診するなどの努力はしており、内定取り消しのりゆうについては客観的合理性が認められる。

(3)ただし、内定取り消し前後のY社の対応には誠実性が欠けている、また、Xさんの不利益を考慮すると内定取り消しは是認できない。

コーセーアールイー事件

不動産売買会社Y社から採用の内々定を受けていたが、採用内定通知書授与の日の直前にそれを取り消されたXさんが、損害賠償と慰謝料等の支払いを求めた事例です。

福岡地裁は、当該労働契約が確実に締結されるであろうというXさんの期待は、法的保護に値する程度に高いとして損害賠償を認めました。

Y社は福岡高裁に控訴しましたが、同高裁では期待権侵害などは認めた上で、労働契約が成立していたわけではなく、内定同様の精神的苦痛が生じたとは言えないとして、慰謝料のみ認容しました。

(1)福岡地裁:Xさんの期待は法的保護に値する程度に高まっていたこと、Y社が内々定取り消しに対して、誠実に対応したとは言えないこと等から判断し、損害賠償のみを認めました。

(2)福岡高裁:信義則に反した不法行為による慰謝料は認めましたが、損害賠償は認容しませんでした。

内定取り消しに合わないために!

ここまで、内定取り消し関する法的な位置づけや根拠、損害賠償請求などの過去の判例などを見てきました。会社などから採用内定を得た学生などは、当然その会社などに就職することを期待し、他の組織などへの就職の機会を放棄します。このような立場の人間を守るために、内定取り消しについては、法律的には高いハードルが設けられているといえます。

しかし、採用される側の責任に帰すべき事由があれば、内定が取り消されるといった状況も起こり得ます。そんな事態を招かないように、内定後の勉学や行動には万全を期しましょう。

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