「聲」の意味と使い方・由来・読み方・声との違い・画数
更新日:2024年11月01日
「聲」は昔の旧字体なので、古典の作品には普通に使用されていました。日本の古典は歴史という長い時間の流れを経て、ゆっくりと読みや書き方、意味、文体など変遷を繰り返しながら現代文学に引き継がれてきました。
・「壁を隔て人の痛楚(くるしむ)聲いともあはれに聞えければ」上田秋成(雨月物語)
・「ひとたびは訓(くに)、ひとたびは聲に読ませ給ひて」(宇津保、蔵開中)
・「聲などほとほとうちゆがみぬべく」(源氏物語、東屋)
・「閑さや岩にしみ入(いる)蟬の聲」松尾芭蕉(おくのほそ道)
・「ひばりなく中の拍子や雉子の聲」松尾芭蕉(猿蓑)
古典はもちろん、明治、大正時代の頃の近代文学は旧仮名遣いと旧字体で書かれています。現代語に直して出版されている文庫もありますが、言葉にこだわった作家たちが生きていたら、意を唱えたでしょう。
「聲」と「声」の意味の違いは?
「聲」は1945年まで使用されていた「声」の旧字体で、当用漢字の字体に対してその元の漢字をいい、現在日常で使用されているのは「声」などの新字体です。「應」を「応」、「瀧」を「滝」などです。「声」の画数は7画で、部首は「士(さむらい、さむらいかんむり、士冠)」です。
当用漢字とはさしあたって使用する漢字のことをいいます。当用漢字表は、1949年(昭和24年)に俗字体や略字体を標準として使うようにしたもので、それまで使用されていた漢字の形が新しく変えられました。
2010年(平成22年)、当用漢字から常用漢字で表された常用漢字表にさらに加えられるなどして改たに定められ、日頃一般に使われる新字体の常用漢字は2136字となっています。
「声」の意味
・人間の動物の声、また人の言葉をあらわします。「鳴き声、産声、笑い声、怒声、発声、美声、肉声、音声、声明、声優」などです。
・自然や物から発せられる音で、「秋声」(しゅうせい)は、秋の侘びしさを感じる北風や雨の降る音、木の葉の風に舞う音などをいいます。また「水声」(すいせい)は、渓流や滝などの水が流れる音をいい、鐘声(しょうせい)はお寺の鐘を撞いて鳴り響いている音を指します。
・歌の節や曲の調子、音階、ハーモニーなどを意味します。
・他人からの批評をいいます。「声誉」は世間や周囲からのいい評判、「悪声」はこの反対で周りからの悪い批評、「名声」は人格、職業などについての実際の手腕、実績などで世上の評判を言います。
・漢字の四声で「去声」「上声」の意味があります。
・「こわ」の音読みの漢字は「声色」「声高」などがあります。
「聲」などの旧字体の漢字の文化を大切にしましょう
新字体である常用漢字は、行政が日常生活で使用して簡便にするために取り決めたことです。結果として、現代では新字体と旧字体が混在して、人の姓名などで種々の事務的手続きなどが面倒になり混乱したりする場合があります。
では旧字体を失くせばいいのかというと、新字体ではない、現在でも用いられている漢字まで消されてしまうことになるので、出版などで不都合が生じるでしょう。合理化ばかり求めずに、大切な「聲」などの漢字の文化が失われないように守られていくべきでしょう。
初回公開日:2018年01月27日
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