【業界研究】出版業界の現状・動向・課題について
業界の現状
どうして本にはカバーがついているのか?
本にカバーは必要ないという声は意外と多かったりもしますが、このカバー、日本の出版においてはなくてはならないものの一つなのです。
本という商品は委託販売制度のもとで売られています。出版社は取次会社を通じて書店に本を委託し、売ってもらうという仕組みになっています。売れなかったら、書店は自由意志でふたたび取次を通じ、返品できます。もちろん、売れなかった分の代金は出版社には入りません。
取次を経由する流通の過程で、または書店の店頭で、カバーは自然と汚れていきます。それが売れないまま返品されたらどうなるのでしょうか。出版元でカバーを付け替えられて、もう一度本屋へと旅立つことになります。カバーは「取り替えられる」ところに意味があるのです。
このように、出版社(メーカー)、取次(卸)、書店(小売)という基本構造で成り立っているのが出版業界なのです。
2014年に発行された『出版年鑑』(出版ニュース社)によると、日本に存在する出版社の数は3588社。そのうち2745社が東京に所在地を置いています。
主な出版社は、総合大手の「小学館」「講談社」「集英社」、情報系の「カドカワ(出版事業は傘下のKADOKAWAが行う)」や「ぴあ」、教育系の「ベネッセ」や「学研」、地図制作の「ゼンリン」や「昭文社」などに分類することができます。
同じく『出版年鑑』によると、全国に25社存在するのが取次会社です。
代表的な会社には「日本出版販売」「トーハン」「大阪屋栗田」があります。
こちらも同じく『出版年鑑』から、全国に4400店あるとされています。
「紀伊国屋書店」「丸善ジュンク堂書店」「丸善雄松堂」「ブックオフ」「アマゾン」が代表的な書店です。
基本情報
- 市場規模:1兆8042億円
- 労働者数:8638人
- 平均年齢:42.4歳
- 平均勤続年数:13.4年
- 平均年収:771万円
約60兆円という日本最大規模の市場を持つ自動車業界と比べたら、出版業界の市場規模は小さいと言えます。労働者数も他の業界と比べると、少ない方に分類されます。利益率も多いとは言えず、決して割りのいい商売ではありません。
しかし、ペンは剣よりも強しという諺もあるように、ジャーナリズムは国の大統領すら辞任させる力を持っているのです。
仕事内容
書籍や雑誌といった出版物の発行を行いますが、そのやり方は大手と中小で大きく変わります。大手出版社の場合は、営業、総務、経理、人事、制作、編集、校閲といった部署に分かれて細分化して本を作っていきます。
中小の場合は、必要なのは営業と編集と経理くらいで、各自が仕事を掛け持ちすることが多いようです。
書籍・雑誌を書店に配送するだけではなく、売れ残った商品を出版社に返す返品業務、書店から代金を回収して出版社に支払う決済業務、書店店頭での売行きを出版社に伝える情報提供業務など、出版業界とは無縁の人間にはほとんど関わる機会がありませんが、取引・流通に関わるほとんどの機能を担っています。
言わずと知れた本の販売を行います。しかし、ただ販売をすればいいわけではなく、本の入荷から、検品、陳列、発注、返品、そして客への対応まで行います。最近では、売り場や棚に工夫を凝らしている書店が増えていますが、それは書店員たちの叡智の結晶であったりもします。