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【業界研究】出版業界の現状・動向・課題について

本にカバーは必要ないという声は意外と多かったりもしますが、このカバー、日本の出版においてはなくてはならないものの一つなのです。

出版科学研究所がまとめた2015年の雑誌・書籍の合計販売金額は2014年比5.3%減の1兆5220億円でした。出版業界が最大の売り上げを記録した1996年が2兆6564億円だったので、約20年のあいだに40%近くも減少したことになります。

書籍の売上はそこまで減ることはなくほぼ横ばい状態ですが、雑誌の売上は大きく減少し、1996年の約半分にまで落ち込んでいます。そして、41年ぶりに書籍を下回り、1970年代半ばから続いた「雑高書低」の“常識”が覆える結果となりました。

電子書籍市場は、2015年に2000億円弱にまで達し、2011年の4倍近い数字になりましたが、まだ規模が小さく不況脱出の切り札とはなれていません。

業界の課題

取次再編問題から見える歪んだ構造

取次は、本の流通に深く関わっていると前述しましたが、実はそれだけではない重要な役割が取次にはあるのです。それは「新刊をどの書店に何冊くらい配本するのか」を決めることです。

取次は過去の書店の売上データから、各書店にふさわしい数の新刊を配本するのです。とうぜん、確実に売ることができる書店を中心に本を配本していきます。出版社や書店側に注文冊数を決めることはできません。

つまり、出版社は宣伝やプロモーションをする必要がなく、書店も仕入れに悩まずに営業できるということです。本と売り場さえ作ってしまえば、あとは取次がすべてやってくれるという仕組みなのです。日本に多くの独立系出版社や書店が存在するのは、この取次システムのおかげなのです。

その取次が経営的に苦境に陥っているということは、取次システムに依存してきた出版社や書店にとっては大きなダメージとなります。出版社には宣伝能力がなく、書店も仕入れ機能を持っていないわけですから、取次が破綻するだけで出版業界全体が一気に機能不全に陥ってしまう可能性があるのです。

売れない出版物の大量生産

長い出版不況に対して、出版業界は量で対応しようとしてきました。売れない本であってもとにかく大量に生産して、売上をリカバリーする作戦です。新刊書籍の売上データを見てみても、2004年に発行点数が7万7031点で売上1兆237億円であったのに対して、2013年は発行点数が8万2589点で売上8237億円となっています。

書籍の返品率は約40%です。はっきり言ってかなり高い数字です。返品された本はまた出荷されますが、再出荷しても売れる可能性が高くなるわけではありません。出版物の賞味期限といった問題もあります。

結果、売れ残った本は断裁して廃棄されます。大量に生産された本の質はどうなっているのでしょうか。量を増やすこと自体は悪いことではありませんが、内容がともなわなければ消費者に買ってはもらえません。

この悪循環からいまだ出版業界は抜け出すことができていないのです。

業界の今後の将来性

流通改革が必要

出版業界がこの悪循環から抜け出すためには、取次を中心とした流通の改革が必要になります。

まず、書店から取次へ、取次から出版社へという返品を禁止することです。返品を認めなければ、書店はしっかり内容を吟味して仕入れを工夫することになるでしょう。そうなれば出版社も惰性の大量生産本ではなく、質を上げて、書店に仕入れてもらえるような売れる本を作るはずです。

取次は不要にはなりません。取次に任せっきりだった部分を、書店と出版社が受け持つようにすればよいのです。書店は自分たちで考えて自由に仕入れをし、出版社は売ることを前提に自分たちでしっかりと宣伝やプロモーションをすることです。

そして、その結果をデータとして積み上げていくのです。安易にアマゾン、iTunes Store、Kindleストアに頼ってはいけません。インターネットを最大限に利用して、自分たちの手でその仕組みを作っていくのです。

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