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「銭ゲバ」の意味と使い方・由来・「守銭奴」との意味の違い

更新日:2024年02月06日

「銭ゲバ」という言葉の持つ意味をご存じですか。この「銭ゲバ」という言葉は、昭和中期に誕生した「金のためならなりふり構わず何でもする人」を揶揄する表現ですが、最近は多用される機会が少なくなりました。「銭ゲバ」という言葉が持つ意味とその背景を追っていきましょう。

「銭ゲバ」の言葉の意味と使い方

「銭ゲバ」という言葉を聞いたことがありますか。最近使われることが少ないであろうこの「銭ゲバ」という言葉の意味は、どこからきているのでしょうか。今回は「銭ゲバ」という言葉の意味とその由来について考え、私達の生活における「銭ゲバ」という言葉がどのような意味を持つかを追っていきましょう。

お金のためなら何でもする

「銭ゲバ」とは1970年に漫画家のジョージ秋山が発表した漫画のタイトルで、「銭+ゲバルト(暴力行為)」の略です。正式には「銭ゲバルト」と言います。お金のためなら何でもする主人公・蒲郡風太郎(がまごおり・ふうたろう)の激動の人生を描いた悪漢人間ドラマで、昭和の時代の学生運動が盛んだった時期に発表された作品です。

過激な学生運動のことをゲバルトという隠語を用いて、主義主張が同じはずの学生同士で争うことを「内ゲバ」と略して呼んでいたことから、著者が「銭ゲバルト=銭ゲバ」と略してタイトルをつけたと想像されます。

「銭ゲバ」の意味の由来・語源

「銭ゲバ」とは、漫画家ジョージ秋山の漫画「銭ゲバ」が発表されて以来、使われるようになった、「金に汚い人」「金のためなら何でもする人」を揶揄する意味をもつ表現です。漫画「銭ゲバ」が発表された1970年代当時の、過激な学生運動が盛んだった時代背景も手伝って、そのまま「銭ゲバ=金のためならなんでもする人」という意味で定着していきました。

元は「銭」と「ゲバルト」を合わせた造語で、「銭」はお金のことですが「ゲバルト」とはどのような意味でしょうか。「ゲバルト」という言葉が持つ意味について考えていきましょう。

ゲバルト(Gewalt)は、ドイツ語

ゲバルトとは暴力行為を意味するドイツ語の「Gewalt」が由来です。英語の「Violence force」と同等の意味を持ち、「他者の身体や財産、権利などに対する物理的な破壊力」を表します。

近年は物理的な腕力に限らず、心理的に責めたてる行いやモラハラなどの行為も精神的「暴力」とみなされていますが、「銭ゲバ」が発表された時代は、過激な学生運動も盛んで各地で実力行使のデモなどが行われていたという背景から「ゲバルト=物理的な暴力行為」という意味で用いられた言葉であると類推されます。

「銭ゲバ」に、ドイツ語「ゲバルト」を使う意味

「銭ゲバ」が発表された当時、「ゲバルト(暴力行為)」を始めとするドイツ語由来の語句が多用されており、特に学生運動関連の言葉はドイツ語で多数表現されていました。これは、明治時代からの伝統で、東京大学や京都大学などいわゆる旧帝大の学生たちが、ドイツ語を勉強すること自体をひとつのステータスとしてとらえていたことを意味しています。

当時の学生達は、普段からの会話の中にドイツ語の単語を交えることで、ある種の優越感にひたっていたと言われています。今でも「アルバイト(ドイツ語のArbeit=仕事)」など当時の学生が使っていた言葉が残っています。

「ゲバルト」は過激な学生運動から派生したドイツ語の言葉で、「銭ゲバ」はお金に対して主人公が過激な行為を繰り返していく物語なので、当時の世相と過激さを表す表現としてタイトルに「ゲバルト」を用いたのでしょう。

「銭ゲバ」と「守銭奴」の意味の違い

金のためなら何でもするという意味を持つのが「銭ゲバ」ですが、人間が金に対して良くない姿勢を見せているという意味では「守銭奴(しゅせんど)」という言葉も良く耳にする言葉です。「銭ゲバ」と「守銭奴」は同じ意味で使われる言葉なのでしょうか。それともこの2つの言葉の意味に違いがあるのでしょうか。

「守銭奴」という言葉をより詳しく掘り下げていくとともに、「銭ゲバ」との意味の違いを追っていきましょう。

「守銭奴」の由来とその意味

「守銭奴」は「しゅせんど」と読みます。1668年にフランスの劇作家であるラ・モリエールが書いた喜劇「L'avare」の邦題である「守銭奴」が由来となった、金に汚い人を揶揄した慣用表現です。

「L'avare」とはフランス語で「ケチな」という意味です。劇の主人公である老人・アルパゴンは金に異常なまでの執着心を示すケチな人物です。すでに恋人がいる自分の息子と娘を、金で他の人間と結婚させようとして娘と息子の幸福を妨げようとします。

しかし、自分は金に困っている息子の恋人に自分との結婚を持ちかけるという、物語の最後までアルパゴンの「ケチ=守銭奴」が重要な意味を持つ完成度の高い作品です。この物語の主人公・アルパゴンの徹底した守銭奴であることから、「金に目がない人」「金に汚い人」という意味で一言「守銭奴」と表すようになりました。

「銭ゲバ」と「守銭奴」どちらも「ケチ」のこと?

ラ・モリエールの原題「L'avare」が示す通り、「守銭奴」は自分の金を一銭も出したくないが、金の力は理解していてそれで「人の心を動かしたい」「自分の良いようにしたい」というケチな人間のことを意味します。

しかし、「銭ゲバ」は自分の金を一銭も出したくないわけではなく、「自分の目的のためならどんなに金を遣ってもかまわない」という一面を持ちます。ただし、自分のもとに金を引き寄せるためならあらゆる暴力行為の行使も辞さず、漫画「銭ゲバ」では主人公・風太郎は金のために人の命をも奪い、そしてそれを繰り返します。

「ケチ」という意味は、自分の持っている金や持ち物を消費することを極端に嫌い、快適さや必要な局面を犠牲にしてでも貯め込もうとする行いを意味します。「守銭奴」と「銭ゲバ」は、金の力にとらわれているという面では共通していますが、そのアプローチは正反対と言えるでしょう。

次のページ:ジョージ秋山著「銭ゲバ」とは

初回公開日:2018年02月08日

記載されている内容は2018年02月08日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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