「いとおかし」とはどういう意味?使う場面や例文もあわせて紹介
更新日:2024年08月28日
「いとおかし」の意味はおおまかに理解できたでしょうか。ここからは、例文と合わせて「いとをかし」の使い方やそれぞれの状況に合わせた意味について具体的に解説していきます。
例文1「しみじみといとをかし」
「死にければ、しみじみといとをかし」
現代語訳:死んだので、しみじみと(その原因を)変だとおもう
この文での「をかし」は、現代の「おかしい」とほぼ同じ「おかしい/滑稽だ/変だ」という意味で使われています。室町時代以降から美しい表現から離れ「をかし」を「おかしい/滑稽」という意味でも用いられるようになりました。
例文2「いとをかしと思ひて」
「妻、いとをかしと思ひて、笑ひてやみにけり」
現代語訳:妻は「大変滑稽」だと思い、笑って(夫を責めるのを)止めた
この文での「をかし」は、現代の「おかしい」とほぼ同じ「おかしい/滑稽だ/変だ」という意味で使われています。室町時代以降から美しい表現から離れ「をかし」を「おかしい/滑稽」という意味でも用いられるようになりました。
例文3「いとをかしきことに」
「いとをかしきことに」
現代語訳:とてもおかしなことに
この文での「をかし」も現代の「おかしい」とほぼ同じ「おかしい/滑稽だ/変だ」という意味で使われています。
例文4「いとをかしき琴の音」
「いとをかしき琴の音」
現代語訳:とても見事な琴の音(が聞こえてくる)
この文での「いとをかし」は「とても見事に」という意味で使われています。「美しい」「優美な」「素晴らしい」という意味に置き換えても文脈として間違っていません。いずれも琴の音の美しさを称賛していることが伝わります。
例文5「いとをかし御髪」
「けづることをうるさがり給へど、いとをかしの御髪や」
現代語訳:髪を梳かすことは面倒になりがちだけれど、とても美しい御髪だこと
この文での「いとをかし」は「美しい/優美だ/愛らしい」という意味で使われています。「をかし」は美への称賛や感嘆を表す言葉ですが、「をかし」そのものが「美しい」という意味で使われることもあります。
この「古記録資料の敬語の研究」は、古記録の敬語についてまとめられた最初の書物で、敬語の実を研究対象として表題に挙げられているため、記録語の研究史上で意義のあるものだといえます。
いとおかしが使われた時代
「いとおかし」は、奈良・平安時代などの日本古典文学に用いられた表現の1つで、人物や所作、物事や自然の風景などへの称賛や感嘆を表す言葉です。
自然や景色などの趣や風流な印象、笑いを誘うような可笑しさ、強く興味を引くことや面白いと感じること、子供や女性などの人物や動植物などが綺麗であるなどと感じた気持ちを表現する言葉として使われていました。
いとおかしが使われた文学作品
狭い意味での古文とは、奈良・平安時代までに文語体で書かれた文章などのことです。「いとおかし」が用いられている日本の古典を指し、この時代の慣習や行事など、当時の暮らしや制度を知る上で貴重な資料や記録でもある著作のことです。
この時代に多く使われた「いとおかし」ですが、「いとおかし」を広げた文学作品として最も有名なのが「枕草子」です。
枕草子について
枕草子は「おかし」の文学として知られ「いとおかし」が多く用いられています。機転の利く対処が求められる宮廷で、細やかな感性と鋭い観察力、知識と文学的素養、ウイットに富んだ文章が周囲を惹きつけました。
同時代の源氏物語と合わせて、日本だけでなく世界中で読まれている文学作品であることから、枕草子は優れた古典随筆文学だということがわかります。
枕草子の作者
清少納言(966年~1025年頃)は平安時代中期の三十六歌仙の1人で、女流歌人・随筆家です。代表作は「いとおかし」で有名な「枕草子」で、父は「後撰集」の撰者清原元輔、祖父の深養父も有名な歌人で三十六歌仙の1人です。
一条天皇の中宮定子に約10年間女房として仕え、藤原道隆や伊周、藤原斉信などの公家貴族との華やかな社交界に生きました。
初回公開日:2018年01月30日
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