経緯報告書の基本的な書き方と例文
更新日:2024年08月17日
経緯報告書としては必須のものではありませんが、「修正が必要」、「トラブル発生」の場合には、今後の対応についての所見も加えることができれば、より実効的な書き方となります。
但し、時間優先ですので、所見取り纏めを含め、当初の報告期限から数営業日程度の遅れに留めるのが良いでしょう。報告期限の判断も含め、組織的な合意とする必要があります。
経緯報告書の構成様式、文章作成上の注意点
結論から始め、理由、説明は後段で述べる様式、書き方が効果的です。報告書の構成、基本項目は前項のとおりです。
定時報告であれば、メールなどの簡易な形式でなく、文書(担当者、管理者の押印あるもの等)として残す必要がある場合でも、「評価等」に関する記載は数行~A4半ページ以内に留めることが肝要、書き方のツボです。進捗状況を補足するための各種データ(売上高、工事の進捗率など)の記載が必要な場合には別紙にすると読み手にも見やすいのものとなります。
社内・社外あてに出す場合のポイント
経緯報告書の要諦は、「問題なし」の場合も含め、報告対象のPT等の進捗状況について、当事者としての判断を示し、記録するものですので、事後においても、社内、または対クライアントにおいて、説明責任に耐えうる内容、書き方となっていることを、しっかりと精査、確認して置く必要があります。
社内あての書き方だけに注意すべき固有のポイントはありません。社内あて、社外あてに共通する書き方のポイントはこれまで述べてきたとおりです。社外あて報告書の書き方におけるポイントを、経緯報告の目的、PT等の進捗状況に基づいて、以下のケース別に説明します。
(A) 「問題なし」の場合
このケースでは、基本的に、社外あての経緯報告書の場合にも、特段の注意点はありません。
但し、定期報告ではなく、個別報告としての提出、取り纏めを求められた場合には、「問題なし」と思われる状況にも関わらず、報告が必要と考えている訳ですから、マネジメント・クライアントの立場でみて、何らかの気掛かりがあるのではないか、報告を求める何らかの背景があるのではないか、という点にも適宜、留意することが、「丁寧な説明、書き方」の第一歩ともなります。上司等、コミュニケーション上、風通しのよい相手からのリクエストであれば、報告取り纏めに際して、何らか注意事項があるのか、率直に尋ねることも大切です。
(B) 「概ね順調/一部変更、強化施策が必要」な場合
このケースでは、修正・改善を要する主な原因がどこにあるのか、その見極め結果に応じて、社外あての報告書の書き方に関して、どういう配慮が必要なのか、それぞれの場合のポイントを説明します。
①主に外生的要因であり、当方には非がない場合
この場合には、基本的には、クライアントへの報告であっても、特別の配慮は必要ありません。
但し、経済状況や取引環境等、外部要因の変容が主な原因という判断に問題点はないか、責任を外部要因の変容に安易に転嫁しているのではと、クライアントから疑問視されることはないのか、社内判断を決定するにあたって、しっかりと正当化できるよう論点を整理し、それらの配慮、検討結果を正しく伝える文章、用語使いとなっているのかといった細かな点まで、しっかりと精査することが望まれます。
②主因が当方社内の対応不備に起因する場合
近年の産業界や政界での事例が示すとおり、隠すこと、初動で出遅れや粗末な対応を行うことは避けなければなりません。とは言え、営利事業ですので、クライアント第一の立場も大切ですが、無暗な謝罪や責任の安請け合いも好ましくありません。真の意味で、自社の利害関係者(stakeholders)の立場から、第三者の目線で勘案し、自社、利害関係者の双方にとって、最適な解決策を実施することが望まれます。
③どちらとも言えない、グレーな場合
この場合の、経緯報告の書き方、内容の一例としては、社内の対応不備、外部要因の変容の双方を進捗遅延等の事由とし、どちらかが主因なのか等の点については、引き続き精査を行っている、といった書き方が想定されます。
この辺りは、最終的には社内マネジメントの判断を仰ぐことになりますが、主因の判定が困難な状況では、断定的な結論を無理強いすることは、後々、自社の対応の足枷となることもあり、判断困難という現状を素直に伝えることも重要です。
いずれかの段階では、社内外、どちらの要因の影響が大きいのか、あらためて判断を示すことが求められことがあるとしても、経緯報告書の段階では、文字とおり、「経緯」の途中であり、最終結論は別途、報告するという説明で、クライアントの納得を得ることも可能です。
(C) 「トラブル発生」
トラブルの度合いによっては、事案の進捗を一旦、停止し、このまま進めるか、改善・修正を加えて再開するかなど、社内での検討、意思決定、クライアント向けの事案であれば、対外折衝を行う必要があります。
例文・テンプレート
(A) 問題なし
1.社内あて
平成●年●月●日
【経緯報告書】平成29年度営業計画に基づく新規販売ルートの開拓状況
《部署名》
首題今年度の営業計画の主要施策として今年度末までに新規販売ルートによる顧客数を倍増させ、当該チャネルによる販売金額を●億円とする目標を設定し、取り組んでいる。
平成●年●月末までの当該施策の実施成果を取りまとめたので本紙を以ってご報告申し上げる、詳細は別紙をご参照賜りたいが、新規販売ルートによる顧客数、販売金額とも今期目標比、それぞれ、●%、●%を達成し、いずれも順当率●%を上回る水準で推移しており、本件進捗は順調と思料。
以 上
※書式について
日付、部署名は右揃え、件名はセンタリングがよいでしょう。日付の西暦、和暦の別は社内でのルールに従いましょう。
2.社外あて
平成●●年●●月●●日
<相手先の社名>
<部署・役職(氏名)>○○殿
【経緯報告書】貴弊合弁事業に係る平成29年度営業計画に基づく新規販売ルートの開拓状況
<差出元の社名>
<部署・役職(氏名)>
貴社との合弁事業に係る今年度の営業計画の主要施策として今年度末までに新規販売ルートによる顧客数を倍増させ、当該チャネルによる販売金額を●億円とする目標を設定し、取り組んでいます。
平成●年●月末までの当該施策の実施成果を取りまとめましたので本紙を以ってご報告申し上げます、詳細は別紙をご参照賜りたいのですが、新規販売ルートによる顧客数、販売金額とも今期目標比、それぞれ、●%、●%を達成し、いずれも順当率●%を上回る水準で推移しており、本件進捗は順調と思料する次第です。
引き続き、本件合弁事業において、緊密に連携、協働させて頂きたく、よろしくお願い申し上げます。
以上
※書式について
日付、部署名は右揃え、件名はセンタリングがよいでしょう。
宛先を部署名または職位名称(●●取締役殿、xx本部長殿など)に留める場合には、発信者である当方についても同様のものとしましょう。宛先を氏名まで記載する場合には、当方も発信責任者の氏名を記載しましょう。
宛先、発信元の職位を同一のものとするのか、個別に設定するのかは、クライアントとの関係を勘案し、適切なものとしましょう。
日付の西暦、和暦の別はクライアント側での社内ルール等も勘案し、予め、様式を定めて置くのがよいでしょう。
(B) 概ね順調/一部変更、強化施策が必要
1.社内あて
平成●年●月●日
【経緯報告書】平成29年度営業計画に基づく新規販売ルートの開拓状況
《部署名》
首題開拓状況については、平成●年●月までの累計実績が、新規販売ルートによる顧客数、販売金額とも概ね、順当率並みで推移している。
なお、これまでに開拓した新規顧客から、マーケティング面での支援体制が不十分である等、営業面のクオリティ改善を望む要望を受けている。クライアントの要望にはスピーディー且つ、適切に対応するが、引き続き、既存開拓先とのRM維持、強化に遺漏なきよう、所要の施策を行っていく所存。
次月以後の本件進捗報告においては、クライアントからの要望状況についても併せて、ご報告申し上げる。
以 上
※書式について
日付、部署名は右揃え、件名はセンタリングがよいでしょう。日付の西暦、和暦の別は社内でのルールに従いましょう。
2.社外あて
平成●●年●●月●●日
<相手先の社名>
<部署・役職(氏名)>○○殿
【経緯報告書】貴弊合弁事業に係る平成29年度営業計画に基づく新規販売ルートの開拓状況
<差出元の社名>
<部署・役職(氏名)>
貴社との合弁事業における首題開拓状況については、平成●年●月までの累計実績が、新規販売ルートによる顧客数、販売金額とも概ね、順当率並みで推移しています。
なお、これまでに開拓した新規顧客から、マーケティング面での支援体制が不十分である等、営業面のクオリティ改善を望む要望を受けています。クライアントの要望にはスピーディー且つ、適切に対応し、引き続き、既存開拓先とのRM維持、強化に遺漏なきよう、所要の施策を行っていく所存です。
次月以後の本件進捗報告においては、クライアントからの要望状況についても併せて、ご報告申し上げます。
以上
※書式について
日付、部署名は右揃え、件名はセンタリングがよいでしょう。
宛先を部署名または職位名称(●●取締役殿、xx本部長殿など)に留める場合には、発信者である当方についても同様のものとしましょう。宛先を氏名まで記載する場合には、当方も発信責任者の氏名を記載しましょう。
宛先、発信元の職位を同一のものとするのか、個別に設定するのかは、クライアントとの関係を勘案し、適切なものとしましょう。
日付の西暦、和暦の別はクライアント側での社内ルール等も勘案し、予め、様式を定めて置くのがよいでしょう。
(C) トラブル発生
1.社内あて
平成●年●月●日
【経緯報告書】平成29年度営業計画に基づく新規販売ルートの開拓状況
《部署名》
首題開拓状況については、これまで累計実績が、新規販売ルートによる顧客数、販売金額とも順当率を上回り、順調に推移してきたが、平成●年●月、Xトレーディング社が当社と同種のビジネスモデルを採用した顧客開拓戦略を開始し、当社の既存クライアントの一部から、同社ルートへの乗り換えを行うとの通知を受けている。
当社ビジネスモデルについては特許請願を行っており、Xトレーディング社への対抗措置の可否について、顧問契約先であるA法律事務所に対応策を相談中。クライアントからの契約打ち切りについては、違約金の取り扱いについて、併せて、A法律事務所に照会、確認中。
また、法律面での対応に留まらず、営業戦略自体の再強化についても、急ぎ、検討を行う。本件に係る動静については、随時、ご報告申し上げる。
以 上
※書式について
日付、部署名は右揃え、件名はセンタリングがよいでしょう。日付の西暦、和暦の別は社内でのルールに従いましょう。
2.社外あて
平成●●年●●月●●日
<相手先の社名>
<部署・役職(氏名)>殿
【経緯報告書】貴弊合弁事業に係る平成29年度営業計画に基づく新規販売ルートの開拓状況
<差出元の社名>
<部署・役職(氏名)>
貴社との合弁事業における首題開拓状況については、これまで累計実績が、新規販売ルートによる顧客数、販売金額とも順当率を上回り、順調に推移して参りましたが、平成●年●月、Xトレーディング社-Yインターナショナルが貴社弊社の合弁事業におけるビジネスモデルと同種のモデルを採用した顧客開拓戦略を開始し、本件JVの既存クライアントの一部から、XYグループによる販売チャネルへの乗り換えを行うとの通知を受けています。
本件JVのビジネスモデルについては当社において特許請願を行っており、XY陣営への対抗措置の可否について、当社の顧問契約先であるA法律事務所に対応策を相談しています。また、クライアントからの契約打ち切りについては、違約金の取り扱いについて、併せて、A法律事務所に照会しています。
さらには、法律面での対応に留まらず、営業戦略自体の再強化についても、急ぎ、検討を行いたく、貴社ご担当部署との打ち合わせを近々に開始したく、貴社内での本件周知、および対応策についての社内調整をお願い申し上げます。
本件に係る動静については、随時、ご報告申し上げます。
以上
※書式について
日付、部署名は右揃え、件名はセンタリングがよいでしょう。
宛先を部署名または職位名称(●●取締役殿、xx本部長殿など)に留める場合には、発信者である当方についても同様のものとしましょう。宛先を氏名まで記載する場合には、当方も発信責任者の氏名を記載しましょう。
宛先、発信元の職位を同一のものとするのか、個別に設定するのかは、クライアントとの関係を勘案し、適切なものとしましょう。
日付の西暦、和暦の別はクライアント側での社内ルール等も勘案し、予め、様式を定めて置くのがよいでしょう。
初回公開日:2017年08月03日
記載されている内容は2017年08月03日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。