振り返りの書き方のポイントとは?基本理論や具体的手法を解説
更新日:2024年10月29日
経験学習モデル
経験学習モデルとは、経験をもとに振り返りを行い、ほかの場面での応用が可能か考え、実際に取り組んでみて、また振り返りを行うというサイクルを繰り返すという理論です。
この理論は、具体的経験、内省、概念化・抽象化、実践の4つのステップで成り立っています。
具体的経験とは、初めての分野や業務に取り組んでみることです。
その中で大切なのは、単にマニュアルに沿って対応するのではなく、なぜマニュアルがそのような内容になっているのか、なぜ上司からその内容の指示が出たのかを考え、自分はどうすべきだったのか、といった、自分の考えやプロセスについて考察することです。
なぜなら、それによって次の内省がより有効になるからです。
内省とは、行動と結果について振り返りを行うことです。
その際、プロセスについて考えることが重要で、特にうまく結果に結びつかなかった場合、どの判断によってうまくいかなかったのか、ほかにどのような判断材料があればうまくいったのかを考えることによって、次のアクションにつなげやすくなります。
概念化・抽象化とは、具体的経験と内省から得た気づきをほかのことにも応用できるように言語化することです。
概念化・抽象化するためには、紙に書きだして頭の中を整理すること、自分だけでなくチームのほかのメンバーにも理解できるレベルで落とし込むことが大切です。なぜなら、チーム全体で学びを共有することによって、組織力の向上につながるからです。
実践とは、概念化・抽象化して得られた気づきを実際に試してみることです。
概念化・抽象化した段階ではまだ仮説にすぎないため、実際の現場で試行し、さらなる改善点や課題を抽出します。
実践で大切なのは、着手するまでの時間を短くし、素早く取り組むことです。なぜなら、素早く実践することによって新たな具体的経験が得られ、経験学習モデルのサイクルを早く回せるようになることで、ビジネスのような早い変化が求められる現場にも対応できるようになるからです。
振り返りの適切な書き方につながる具体的手法
振り返りの書き方において重要なのは、結果につながった原因と課題をきちんと把握できる書き方をすることですので、そのために有効なフレームワークを見てみましょう。
ここでご紹介するフレームワークを使うことによって、的確に原因と課題を発見するために活用することができます。なぜなら、どのような振り返りの書き方をすればいいか分からない状態で検証を行うと、本質から外れた部分に原因と課題を見出してしまい、よりよい改善にはつながりにくいからです。
したがって、正しい振り返りの書き方できちんと改善効果が得られるよう、書き方の具体的なフレームワークを4つ確認しましょう。
KPT(Keep・Problem・Try)
KPTとは、「Keep:成果がでており継続すること」「Problem:解決すべき問題点」「Try:次に挑戦すること」の頭文字をとった言葉で、個人やチームの問題点や改善点を洗い出し、分析したうえで次のアクションにつなげるための書き方です。
言い換えると、うまくいっていることと直したいことをそれぞれ確認し、どうやって解決し改善するかを考えるための書き方と言えます。
KPTの具体例・効果
KPTでは「Keep」「Problem」「Try」のそれぞれの項目に分解して書き出したうえで振り返りを行い、実践していくことによって、前向きな反省をしながら問題を客観的に整理できるという効果が期待できます。
まずは、紙・ホワイトボードなどに大きく四角形を書いたうえで、「Keep」「Problem」「Try」の箱をつくり、「Keep」から順に記入しましょう。色付きのペンや付箋を使うと後で整理しやすくなります。
書き方の順番は、最初に「Keep」の欄から入りましょう。なぜなら、「成果がでており継続すること」、つまり、「よかったこと」から振り返ることになるからで、その後の項目についてもポジティブな気持ちで取り組みやすくなります。
つぎに、「Problem」の欄を同様に書きだしましょう。このとき、先ほどの「Keep」とは違う色のペンや付箋を使用すると見やすくなります。
さらに、「Try」の欄に「Keep」「Problem」を踏まえて、新たに実践することや問題に対する解決策、やるべきこととやめるべきことを整理しましょう。
KPTを用いることで、たとえば、ホワイトボードにチーム全員で課題を書き出し、それを解決するための方法を一緒に考えるという構図になるため、メンバーそれぞれの認識を可視化したうえで客観的に分析することができ、チームの一体感をもってに次のアクションを検討することが可能になります。
PDCA(Plan・Do・Check・Act)
PDCAとは、「Plan:計画」「Do:実行」「Check:評価」「Act:改善」の4つのプロセスを繰り返すことにより、管理業務を円滑にすることができる書き方です。
まず、「Plan」で、5W1Hに沿って、いつ、どこで、だれが、何を、どうして、どのように行うのかを検討します。
つぎに、「Do」では「Plan」で策定した計画を実行します。その際、計画した内容や方針に従うこと、結果を数値化することがポイントです。
「Do」の後は「Check」により、行動した結果を振り返りましょう。ここでは客観的に問題点や課題を検証することが大切なので、データ・数値に注目し判断することが必要です。
最後に、「Act」で「Check」によって見えた課題について考え、改善するためのアクションを起こします。
そして、以上の4つのプロセスを繰り返していくことで次の業務を円滑にするのです。
PDCAの具体例・効果
PDCAは数値や計数目標を用いて定量的に分析することによって、目標や課題、問題点を明確化することができ、サイクルを回していくことによって、より具体的な業務改善に取り組むことが可能になります。
たとえば、顧客の訪問件数を何件にするのか、効果的な面談にするためにいつ訪問するのか、どのような活動がどのくらいの効果をもたらしたのか、といった点を具体的な数値や計画に落とし込んだ書き方によって、改善策が明確になるため、より効果的にPDCAを回していくことができます。
ちなみに、PDCAの活用で有名なのがトヨタ自動車です。トヨタ自動車では、「5W1H」を使っているのが特徴なのですが、「5W1H」の「5W」は「なぜを5回繰り返すこと」であり、最後に「How:どうやって」を考えることによって、3M(ムリ・ムダ・ムラ)をなくし、効率的な生産を可能にしているのです。
つまり、PDCAを効果的に回す書き方とは、定量的に計画を立てて検証すること、「5W1H」を使って具体的に考えることが大切だと言えるでしょう。
YWT(やったこと・分かったこと・次にやること)
YWTとは、「Y:やったこと」「W:分かったこと」「T:次にやること」の頭文字を使った書き方です。
先にご紹介したPDCAより経験を重視した理論であり、行動はするけれど振り返りをしない、あるいは振り返りはするものの次の行動に活かされていないような場合に、YWTを活用することによって改善に向けた気づきを確認し、次の行動につなげることができるようになります。
YWTの具体例・効果
YWTを進めるための書き方の手順は、「Y」から「W」、「W」から「T」につなげて振り返りを行うことです。それによって、チームで得た気づきをつぎのアクションに活かすことができます。
まずは、「Y:やったこと」を書き出しましょう。たとえば、セミナーの開催に向けた集客のように、取り組んだことについて思い返します。慣れないうちは思いつくままにとりあえず書き出せば大丈夫です。
つぎに、「W:分かったこと」を確認しましょう。たとえば、集客を図ったけれども参加者が集まらなかった、といった具合に、経験を通じて学んだことを書きましょう。注意点としては、「Y」と同じような事実だけを拾うのではなく、「Y」からの気づきを抽出するということです。
最後に、「T:次にやること」を検討します。たとえば、集客のための告知の方法やタイミング、参加者がアクセスしやすい会場選び、などです。「W」を踏まえた改善策についてメンバーで意見を出し合いましょう。
YWTについてもプロセスを繰り返すことが大切です。特に、「W」に基づく「T」を考え、次の「Y」につなげていくことを継続しましょう。
4行日記
4行日記とは、「事実」「発見」「教訓」「宣言」の4項目を1行ずつ書き出す書き方です。
「事実」は、その日にあった客観的な事実、「発見」は事実からの気づき、「教訓」は「発見」からの学び、「宣言」は将来の自分のありたい姿に向けた次のアクションです。
上記の4項目を4行で振り返り、気づいたことや次につなげることを検証します。
書き方は、1行あたり20文字、合計80文字程度でまとめるというシンプルなものです。
短い文章でまとめることから、課題発見力や問題解決力だけでなく、表現力や論理的思考力も育む効果が期待できます。
4行日記の具体例・効果
初回公開日:2022年08月24日
記載されている内容は2022年08月24日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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