【業界研究】医薬品業界の現状・動向・課題について
業界の現状
医薬品業界の現在地
医薬品業界は現在、世界では100兆円の市場規模を誇り、命を守るという使命を持つだけに景気の変動に影響を受けない堅実産業とも言われています。
「2010年問題」と言われた大型新薬の特許切れの影響を製薬会社各社がしのいだことで、市場全体がプラスに転じました。
医薬品市場を牽引するのはアメリカで、ただ一人の独走状態にあります。次いで、中国、日本と続きますが、中国はそのほとんどがジェネリック(後発医薬品)市場なので、新薬(先発医薬品)市場のみに限って言えば日本は2位を維持しています。
そして日本では、高齢化にともなう国民医療費の増加が問題になっています。政府は、その引き下げのため薬価の引き下げやジェネリック医薬品への切り替えを推進しており、医薬品業界は、収益確保のため大きな改革をせまられています。
苦戦する日本の医薬品メーカー
武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、中外製薬は東証一部に上場していることもあり、医薬品製造業大手4社とも言われています。
しかし、2015年度の医薬品売上高で国内有数を誇る武田薬品工業も世界では17位にとどまっており、医薬品製造業大手4社を足しても世界1位の米ファイザーには及ばないというのが現状です。
日本の製薬会社は高い水準にあるものの、外資系企業の水準はそれ以上に上がっており、日本企業がその優位性を発揮することはますます困難になっています。
基本情報
- 市場規模:10兆2,509億円
- 労働者数:83,642人
- 平均年齢:41.0歳
- 平均勤続年数:11.7年
- 平均年収:710万円
市場規模が大きく、それに応じて年収も高いのが医薬品業界の特徴でしょう。製薬会社には福利厚生が充実しているところも多く、そして医薬品の不況に強いという商品特性もあり、就職先としてのある業界なのも納得できます。
ただし、薬局やドラッグストアが日本のみの市場であることに加えて、政府が医療費の抑制に動いていることもあり、市場規模が大きく成長する可能性は少ないようです。
仕事内容
医薬品業界には、さまざまな職種があります。
バイオテクノロジーなどの最新技術を用いて新商品を開発する仕事になります。企業の使命は最終的には利潤の追求になるので、研究者はその企業の都合に合わせた上で、開発に取り組む必要があります。
工場において医薬品を製造する仕事になります。ほかの製造業に比べれば生産量の規模は小さくなりますが、取り扱うのは医薬品であり、高度な技術が要求されます。
新製品を含めた自社製品を卸業者や小売店に売り込む仕事を基本としますが、医薬品業界の営業職の1つである「MR(医薬情報担当者)」は、それ以外にも大切な使命を持っています。
MRは、自社製品に関する安全性や的確な使用基準などを医師や薬剤師に伝えると同時に、一企業の社員という枠組みを超えて、医薬品や医薬品業界の最新状況についての情報を提供しなければなりません。医薬品の販売促進活動ではなく、高い倫理観に基づいて医療の一端を担うことが求められるのです。