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【業界研究】ガラス業界の現状・動向・課題について

ガラスは、建築、自動車、ディスプレー、生活用品(ガラス瓶など)などさまざまな用途で使われています。ガラス業界各社の資料によると、世界でのガラス用途の割合は建築物が83%、自動車が7%、太陽光発電などの特殊用が10%となっています。

複層ガラスが4.6%の減少

経済産業省「窯業・建材統計」によると、2015年の板ガラスの生産数量は前年比1.9%増となりましたが、住宅の窓に使われる複層ガラスは同4.6%と減少しました。

複層ガラスは、2枚以上の板ガラスの間に空気やガスの層を設けて断熱性を高めたもので、さらに熱を反射する特殊な金属膜をガラスの表面に塗布するなどの工夫を重ねることで、夏は太陽からの熱を抑制し、冬は室内熱を外に逃さない効果があります。

複層ガラスの生産量は年々減少していますが、ガラス業界の各社は流通を改善することで、複層ガラスの受注増加を図っています。板ガラス市況は複層ガラスの受注数次第とも言われており、今後の複層ガラスの動向に注目が集まっています。

旭硝子は自動車用ガラスに販路拡大

液晶テレビ市場の成長鈍化により、液晶テレビ用ガラス基板を主力商品としていた旭硝子が苦戦に陥っています。

液晶テレビ市場はその営業利益をピーク時の6割にまで減らしており、旭硝子は紫外線を約99%カットする自動車用ガラスを販売するなどして業績改善を図っています。旭硝子によると、今後はビルや住宅の窓、車のフロントガラスなどに使うことができる薄くて軽い科学強化ガラス製品の開発に注力していくとのことです。

市場動向

ガラス業界の市場規模は3兆1,435億円

現在のところ、ガラス業界全体についてのデータは存在していませんが、ガラス大手12社の売上高合計から市場規模を推測すると、その市場規模は3兆1,435億円となります。

各社を売上高別でみると、
1位:旭硝子(1兆3,262億円)
2位:日本板硝子(6,292億円)
3位:HOYA(5,057億円)
4位:日本電子硝子(2,511億円)
5位:セントラル硝子(2,500億円)
と上位5社で国内市場の約94%になり、国内の寡占も高くなっています。

業界の課題

海外市場、国内市場ともに不透明

いくつかの要素が重なり、ガラス業界全体で先行きが見えなくなっています。

国内市場では、消費税増税による駆け込み需要が期待されていましたが、増税が延期となったため、自動車用ガラスと建築用ガラスの数字は伸びませんでした。各社とも高付加価値化製品を発売するなど対応を強化していますが、収益は上がっておらず、先行きに不安を抱えています。

海外市場では、英国のEU離脱決定が、主力市場の欧州や北米にマイナス影響を与えるのではないかと懸念材料になっています。また、スマートフォン市場の減速から、液晶ガラスの販売価格が下落する恐れもあり、こちらも今後の見通しが不透明となっています。

中国企業の台頭

中国でのガラス生産量は世界の約半分を占めていますが、中国国内での建築ラッシュでガラス需要が増加するとみた中国ガラスメーカーが、設備を増やして勢力を拡大しています。

中国大手のフーヤオは米素材大手のPPGインダストリーズの買収を機にシェアの拡大を狙っており、日本勢にとっては脅威となる可能性があります。旭硝子は高級車向けの板ガラス販売を強化し、日本板硝子はより軽量化した自動車用ガラスを開発し、増産するなど、ガラス業界大手は対応に迫られています。

値上げの影響

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