正しい引用の書き方と例・文中での引用の仕方・引用と参考の違い
更新日:2024年10月27日
正しい引用の書き方とポイント
さまざまな仕事を文章でやり取りする現代社会において、「引用」を正しく活用できるスキルは非常に重要です。どのような論考やアイディアであっても、作者が考えたまったくのオリジナルということは、まず、ありえません。その論考やアイディアの元になった、あるいは参考にした、土台となる他者の著作物が必ずあります。
例えば、仕事で、企画書を書くことになった、会社のオウンドメディアの記事を書くことになった、といった場合に、どこからもデータや図解、論考などを引用せずに作成しようとすれば、非常に困難に感じるはずです。
むしろ、権威や実績のある人物や会社の著作物を利用して、自らの論理や構想を展開していった方が説得力と信頼感が増すため、他者の著作物を正しく活用するということは必須と言えます。
著作権法における引用の範囲とは
例えば、何か文章を執筆して、有力者が作成した文献や、有名な教授の論文を紹介して、自分自身の主張を裏付けたいと考える際に、問題になるのが、「著作権」です。他者が作った文章などの著作物には、その著作者が著作権を有するため、許可なく利用することはできません。
しかし、そうは言っても、レポートや企画書を書くたびに、参考にした著作物の権利者に都度許可を取得するのは、物理的に不可能と言えます。そこで、「引用」のスキルが必要になってきます。正しく、「引用」することができれば、著作権者に許可を取らなくても、自身の著作物に、他者が作った文章や図解などを利用することが可能になります。
それでは、どこまでが「引用」の範囲として認められているのでしょうか。著作権法には、下記のように記されています。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、
出典: http://www.cric.or.jp/db/domestic/a1_index.html |
その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の
目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
引用の三原則とは?
著作権法の解釈を踏まえ、一般的な慣習として、引用には、下記の3つが必要だと言われています。
1)主従関係
2)明瞭区別性
3)必然性
1)は、あくまでも自分の文章がメインであり、引用先の文章などの素材は参考情報として記載する、ということです。
2)は、自分の文章と、引用した文章が明確に区別されている、ということです。
3)は、自分の文章を支える情報として、その引用が必ず必要だと言える正当性がある、ということです。
この原則を踏まえて、具体的な引用の書き方やコツについて、これから詳しく解説をしていきます。
論文における引用の手法
大学教授や、研究者でない限り、論文を書く機会はまずないでしょう。しかし、アカデミックな世界では、引用がまさに基本中の基本であるため、論文でどのように引用が活用されているかを知ることは、他の職業にも役立ちます。
通常、論文の基本的なフォーマットでは、文章内で引用を示す「」をつけたり、段落を分けて文字フォントや色を変えることによって、引用文と自身の文章を明確に区別します。その上で、論文の本文の最後に、参考文献情報として、それぞれの引用先の文献情報を記載する流れとなっています。この時の文献情報には、文献の名前の他に、作者や出版日、出版会社などの情報も詳細に記す必要があります。
また、論文における引用は、直接引用と間接引用の2つの種類があります。この2つの引用の方法の違いについて、解説していきます。
直接引用とは?
直接引用とは、他者が作成した論文や出版物などから、文章をそっくりそのまま抜き出すことです。実際に直接引用の手法を使う際は、主従関係、明瞭区別性、必然性の3つの原則を思い出しましょう。例えば、下記のような例文となります。
この文章における引用のポイントは、直接的に引用する文章を鉤括弧でくくることによって、明瞭区別性をしっかりと提示していること、また、この例文のグラットン氏の言葉のように、あくまでも自分自身の文章を補足したり、強化するために参考とすべき情報という位置付けで、参考情報として紹介しているということです。
それでは次の見出しで、実際に直接引用している例をご紹介します。
直接引用の例文
まず、人生が長くなることによって、仕事に与える影響について、キャリア構築の方法と、生涯賃金の計算の2つの視点から考えてみたい。この問題における第一人者であるリンダ・グラットン氏は、著書で次のように述べています。
『人が長く生きるようになれば、職業生活に関する考え方も変わらざるをえない。人生が短かった時代は、「教育→仕事→引退」という古い3つのステージの生き方で問題なかった。しかし、寿命が延びれば、二番目の「仕事」のステージが長くなる。』
(「100年時代の人生戦略」リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著、池村千秋訳、東洋経済新報社出版)
グラットン氏の主張をベースにすると(後略)
間接引用とは?
間接引用とは、文章をそっくりそのまま抜き出すのではなく、参考とする資料や出版物の要約を自らまとめ、その参考先を文献情報として明記する方法です。間接引用を使った文章の例文を下記に記載します。
間接引用においても、守るべき3つの原則は同じです。他人の著作物の内容を要約して自分の言葉でまとめていても、その考え方や着想の元になった資料や文献については、明記しなければいけないことに注意を払いましょう。
こちらも、直接引用と同様に、実際に間接引用をしている例を次の見出しでご紹介致します。
間接引用の例文
この問題における第一人者であるリンダ・グラットン氏は、ベストセラーになった著書「100年時代の人生戦略」において、これまで主流だった学生時代 / 仕事現役時代 / 引退時代の3つのライフステージが一変し、そのような単純でない、さまざまなライフステージを取り込んだ多様な人生が実現する、と主張している。※1
この「ライフステージの変化」ということについて、私の研究成果から証明できることを発表したい。
(※1 参考文献:「100年時代の人生戦略」リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著、池村千秋訳、東洋経済新報社出版)
初回公開日:2017年12月26日
記載されている内容は2017年12月26日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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