【業界研究】繊維業界の現状・動向・課題について
繊維業界の仕事は、事務職と技術職に大別することができます。
まず事務職には、営業と管理という2つの職種があります。営業は、販促活動を基本としながらも、企画やマーケティングを行ない、素材開発のプロデューサー的役割を担います。そして管理は、会社が事業を円滑かつ健全に運営できるように間接的な支援を行います。
一方、技術職は主に研究、開発、生産に細分化されます。研究によって課題や技術を深化させて可能性を広げ、その成果を開発が製品というカタチにし、生産がプラント等の生産設備を駆使して大量生産するというのが基本的な流れになります。
業界シェア上位3位
1位:東レ:7,554億円
2位:帝人:3,777億円
3位:旭化成:1,208億円
平均年収上位3位
1位:旭化成:845万円
2位:ダイワボウホールディングス:761万円
3位:日清紡ホールディングス:701万円
業界の動向
業界再編が加速
近年の繊維業界縮小の流れを受けて、大手繊維各社によるM&Aが相次いでいます。
旭化成は、2012年に約1,800億円で米救命救急機器メーカーのゾール・メディカルを買収し、2015年にはリチウムイオン電池向けセパレーター大手の米ポリポアインターナショナルを約2,600億円で買収しました。
東レは、2013年に炭素繊維大手の米ゾルテックを約600億円で買収すると、繊維・水処理膜大手の韓国ウンジンケミカルも約400億円で買収しました。さらに2014年には、米サウスカロライナ州に総額1,000億円で炭素繊維工場の建設構想を発表しています。
クラレは、2013年に米デュポンのビニルアセテート事業を約650億円で買収しました。
東洋紡は、2014年にタイ繊維大手と共同でエアバック用糸を生産販売する独PHPファイバーズの買収を発表しています。
東レの炭素繊維
東レの展開する炭素繊維が、ホンダが2016年に発売した新型燃料電池車(FCV)に採用されました。
炭素繊維は、FCVの心臓部分にあたる燃料電池本体の電極基材用カーボンペーパーや、高圧水素を貯める貯蔵タンクに使われています。炭素繊維によってカーボンペーパーのガス拡散性や耐久性が上がり、燃料電池本体の性能向上や省スペース化も可能となりました。さらに、貯蔵タンクには高強度炭素繊維「トレカ」が使用されています。トレカは航空、自動車、船舶などさまざまな産業で利用されています。
東レは、日本の繊維業界の最大手というだけではなく世界有数の炭素繊維メーカーであり、FCVや電気自動車など環境対応車向けの材料開発を積極的に進めています。