【業界研究】印刷業界の現状・動向・課題について
その2社の次には、トッパン・フォームズ、共同印刷、日本写真印刷、光村印刷、廣済堂印刷、共立印刷と続きますが、売上高や企業規模といった面で対抗できる企業は今のところなく、現実的には2強の寡占状態となっています。
凸版印刷と大日本印刷の大手2社は以前から多角経営路線をとっていましたが、業界全体の長期的な下落から脱却するため新規事業を次々と開始しています。
凸版印刷は、トッパン・フォームズや図書印刷に出資し、BookLive(電子書籍)、フレーベル館(児童書出版)、東京書籍(教科書出版)を傘下におさめ、液晶テレビ用のカラーフィルタや半導体などのエレクトロニクス分野にも積極的に進出しています。
大日本印刷は、中古本・中古家電のブックオフへ出資したほか、丸善(書店)、ジュンク堂(書店)、モバイルブック・ジェーピー(電子取次)、主婦の友社(出版)などを傘下におさめました。
こういった経営の多角化による戦略は2社とも必ずしも好調とは言えませんが、各社の収支を見る限りでは安定した業績をおさめているようです。
トッパン・フォームズより自治体のマイナンバー関連業務を大幅に簡易化する「PASiD」が発売され、凸版印刷もNTTデータとともに保険会社が行うマイナンバーの収集を代行するサービスを開始しています。大手にとってはマイナンバー制度が追い風になっており、各社受注獲得に向けて動いています。
市場動向
不況の影響を受けにくい堅い商売と言われてきましたが、1990年代のバブル景気が崩壊するに伴い、出荷額は下降線をたどる傾向にあります
1991年には8.9兆円あった市場規模も、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災による景気の悪化で5兆円程度にまで落ち込み、それ以降は不況を脱して回復を見せたものの依然として5兆円半ばの横ばい状態が続いています。
日本印刷産業連合会は以前、業界の市場規模は2010年に7.9兆円、2015年に7.6兆円になるとの予測を出していました。
しかし、大手2社の多角化経営の牽引役となっていたエレクトロニクス分野が、日本の家電メーカーの国際的な競争力の低下とともに売上を大きく減らしたことで、その予測を大きく下方修正しました。
今では、市場規模はさらに年々減少の一途を辿り、2020年には4.6兆円まで縮小するとの予測を改めて発表しています。
業界の課題
伸び悩む紙媒体の印刷需要
印刷業界の低迷の原因は大きく分けて2つあります。
1つは出版物のデジタル化です。これまで出版物が担ってきた役割がコンピュータや通信技術の発達によりそれらのメディアに置き換わりました。とくにWebにおいてそれは顕著になっています。
多くの企業が情報発信をWebで行なっているように、安価で迅速なWebというメディアが今日においては印刷物よりも有用となっているのです。
そして、オフィス機器の進化や普及も印刷業に少なからぬ影響を与えています。コピー機やプリンタのカラー化、高速化、低価格化、そして印刷の質も印刷機に引けをとらないレベルになっています。
つまり、少量の印刷物であれば各企業とも社内で対応するため、従来のように印刷発注されることが少なくなっているのです。
2つ目は出版不況です。インターネットやスマートフォン(スマホ)といったメディア環境の変化の影響を最も受けているのが出版業界です。出版不況とは、1996年に出版業界が最大の売り上げを記録して以来、そこから長く続く右肩下がりの年月のことを指します。