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【業界研究】印刷業界の現状・動向・課題について

この世の中にあふれる、書籍、雑誌、新聞の折り込み広告、チラシ、製品パッケージといった色とりどりの印刷物を生み出しているのが印刷業界です。1990年代のバブル景気の崩壊とともに市場規模が縮小していることから不況業種であるととらえられていますが、だからと言って魅力がない業種ではありません。

雑誌市場はこの10年間で半分にまで縮小し、従来は収益部門と言われたコミック雑誌も今やほとんどが赤字となりました。その結果、出版業界は印刷費などのコストカットを余儀なくされ、それはとくに体力のない中小の印刷会社を苦しめる事態を招いています。

つまり、印刷業界は、紙媒体の印刷そのものが伸び悩んでしまっているのです。

大手は印刷に続く柱を模索中

凸版印刷と大日本印刷は印刷技術の応用に取り組んでいます。凸版印刷は2016年に透明バリアフィルムの新工場を米国に竣工しました。この工場は凸版印刷のフィルム事業において海外初の生産拠点となっています。

世界最高レベルのバリア性能により、食品、飲料、医療医薬、産業資材など様々なニーズに対応するのが目的で、北米をはじめ、欧州や今後市場の成長が見込まれる中南米などに向けての提供を見越しています。

大日本印刷は2015年に自動車部品の田村プラスチック製品(愛知県小牧市)を買収しました。田村プラスチックは自動車のドア窓の上に取り付ける雨よけの「サイドバイザー」で国内首位を誇っていた会社です。

大日本印刷のフィルム加工技術と田村プラスチックの樹脂成型技術を組み合わせることで、傷が付きにくく、デザイン性も高めたサイドバイザーなどを開発する考えとのことです。

そして大手2社は、スマホやタブレットを使った販促サービスや、書籍や雑誌の電子販売といった電子コンテンツにも引き続き力を入れていますが、依然として印刷に続く柱を模索している最中であることに変わりはありません。

中小の歪んだ構造

印刷業界は、凸版印刷と大日本印刷の2社による寡占、次いで数社の準大手、それ以下の中堅、そして圧倒的多数の小規模零細企業という構図で成り立っています。

多くの会社が凸版印刷と大日本印刷の下請けや孫請けになっており、分業体制による階層もできあがってしまっているというのが今の現状です。これは、業界全体が良くも悪くも凸版印刷と大日本印刷という2社の影響下にあることを意味しています。

業界の今後の将来性

大手2社は変わり続けられるかどうかが鍵

市場規模が大きな業界であるがゆえに、絶えず成長曲線を描くのは難しいでしょう。例えば、人口の減少によるマーケットの縮小といった問題はそう簡単に解決できる問題ではありません。

ただし、これは印刷業界だけに限りませんが、大切なことはその時代に合わせて事業内容や会社の構造を柔軟に変化させるということです。

凸版印刷と大日本印刷の大手2社は前述した通りに印刷に続く柱を模索中ではありますが、それは印刷という枠組みに縛られることなくチャレンジしていることの証でもあります。

自分たちの印刷技術という強みを活かして、派生事業を展開させているのです。これは印刷不況にあえぐ中小印刷会社にはできない芸当です。

経営者が先頭に立って新しい戦略を考え、それを実行に移しています。そして新しい事業をやれるだけの人材と潤沢な資金があります。業績が落ち込まないように、常に走り続けているのです。

鍵は生き残るために、変わり続けることです。環境や時代の変化に合わせて、対応していくことです。凸版印刷と大日本印刷は、変わり続けることで生存を果たしている企業の典型例と言えます。そしてその大手2社のリードがあれば、業界自体の存続も十分に可能になるでしょう。

中小は高付加価値戦略が必須

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