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ICT教育のメリット・デメリットの事例|問題点/課題/効果

初回公開日:2017年11月11日

更新日:2017年11月11日

記載されている内容は2017年11月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

近年、タブレットやパソコンを授業に導入したり、それらの活用の仕方を学んだりするICT教育が注目を集めています。この記事では、ICT教育のメリット・デメリットや実際の教育現場での活用例、ICT教育に関する論文や書籍を紹介しています。

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ICT教育のメリット・デメリットとは?

近年、パソコンやタブレットを使ったICT教育が注目を集めています。ICT教育とは「ICT機器を活用した教育」と「ICTをうまく活用するための教育」に大きく二分されます。タブレットなどを授業に取り入れるのが前者、プログラミングなどを学ぶのが後者です。また、ICTとは Information & Communication Technologyのことであり、「情報通信技術」と訳されます。これらの活用により、従来以上に質の高い授業の提供が期待される一方で、ICTによる弊害も指摘されています。

ICT教育のメリット

授業が効率よく行える

先生が板書をする間、生徒たちは何もすることがなく、時間を持て余してしまいます。パソコンとプロジェクターを導入し、パワーポイントなどを用いた授業をすると、その時間をなくすことができ、他のことに時間を使えます。また、先生も授業のスライドの準備さえすれば、授業はスムーズに行うことができるでしょう。これは、事務作業に追われている先生にとっても、少しのことで集中が切れてしまう子どもたちにとっても、好ましいことです。

他にも、普通なら先生は教室を歩いて回って、生徒たちの課題への取り組みの度合いを見ますが、ここにもICT教育を応用できます。生徒たちが先生に出された問いの答えをノートでなく、タブレットに書くようになったら、先生は手元の端末で生徒たちの理解度を知ることができます。また、消極的で進んで発表しないがゆえに理解していないと思われてしまうこともなくなるでしょう。

授業が楽しくなる

小学校高学年くらいになると徐々に勉強を苦と感じる生徒が増えてきます。紙の教科書を眺めているだけでは、どうしても眠くなってしまうという生徒も少なくありません。彼らに勉強をさせるには、勉強は楽しいと思ってもらうことが重要になります。

特に小中学生は、紙の媒体とむきあうよりもデジタル機器のほうが楽しむことができます。楽しい授業は生徒たちの意欲を向上させ、自発的な学習に結びつきます。自分から勉強すると成績が上がり、それがうれしくてまた勉強するという正の循環にはまる生徒も出てくるでしょう。

授業が分かりやすくなる

例えば、数学の立体の問題で、空間的に捉えられずに苦労する子は一定数います。デジタル機器を用いてその図形を動かすことで、彼らも平面にあらわされた立体を空間的に捉えられるようになります。

他にも、社会のような暗記が求められる教科ではICT機器を用いて、写真や動画を生徒たちに見せるといった工夫ができます。こうすることで、話題をより身近なこととして捉えられるので、記憶の定着度を高めることができます。

座学だけでなく、体育では動画撮影によって運動技能の向上を促進することができます。自分の動きとお手本の動きを比較し、どうすればうまくいくかを考えることは体育の授業で求められる力に加えて、分析力を養うことにもつながります。

ICT教育のデメリット

考える力がなくなる

日本人は考える力が劣っていると言われているため、近年の教育では自ら考え、それを伝える力を養うことがしばしば目標とされてきました。考える習慣、話し合う習慣をつけさせることで考える力を高めようとするアクティブラーニングが流行ったのもこのためでしょう。しかし、ICT教育を用いるとその逆のことが起こりえます。

これまでは自分で考えるしか答えを得るすべはありませんでしたが、端末を用いたICT教育ではかんたんにインターネットで答えを知ることができます。それにより、生徒たちの自分で考えるという習慣がなくなる恐れがあります。そうすると、自分の頭で考えるという能力が損なわれてしまうでしょう。

活字離れが進む

最近の若者は本を読まなくなった、とよく言われるように、若者の活字離れが重大な問題として指摘されています。活字離れとは、新聞や書籍などの紙に印刷された文字媒体の利用率が低くなることです。これによる問題点としては、話を読んで理解する能力の低下などが挙げられます。

ICT教育が導入され、デジタル教科書が普及すると、ますますこの活字離れが進むことは想像に難くありません。教科書すら読まなくなれば、印刷された紙の媒体を使うことはほとんどなくなるでしょう。デジタルの媒体にも優れたところはありますが、紙媒体を完全に捨てることのないように対策を練るべきでしょう。

文部科学省はICT教育をどうみるか?

文部科学省はICT教育を推進する立場をとっており、実際にICT教育の効果などを実証しています。文部科学省はICT教育の展開を推進するうえで、以下のような理由を述べています。

・分かりやすい授業を実現するため
子どもの学力低下が叫ばれる中、「確かな学力」を育成するためにはICTを効果的に活用した授業が必要であると文部科学省は考えています。

・情報活用能力を身につけるため
情報化が急激に進んでおり、情報に対し主体的に対応する力が求められるようになっています。現代日本のような情報があふれた社会の中で、情報や情報手段を取捨選択できるような力の育成を目指しています。

・校務の効率化をはかるため
教員が事務作業に追われ、生徒一人一人と向き合う時間がないことは大きな問題点とされてきました。その解消のため、ICTを活用することで校務の負担を軽減し、子ども主体の教育を取り戻そうとしています。

・情報社会において適切な行動をとれるようにするため
インターネットは匿名を基本とするため、犯罪に使われることもあります。学校でその側面や対処法をあらかじめ学ぶことで、コミュニティサイトに起因する犯罪などを回避することができます。また、情報がたくさんあるがゆえに、生活習慣が乱れるほどインターネットを使う人も出てきましたが、事前に知識があれば防ぐことができるでしょう。

ICT教育の問題点・課題とは?

先生に対する教育が必要

情報機器は、近年急速に普及したものであるため、40代、50代の先生の中には扱いに慣れていない人もたくさんいます。また、彼らは紙の教科書と黒板での授業スタイルを長年かけて完成させてきていますが、ICT教育に関しては全くの初心者であると言えます。

生徒にICT教育の恩恵を受けさせるには、まず第一に先生たちがどのようにすればよいかというICT教育のノウハウを学ぶ必要があります。年配の先生の中には抵抗を示す方もいるでしょうし、先生の教育にも大きな費用が掛かります。ICT教育において先生の教育というのは一つの大きな問題になっています。

機械が不具合を起こすかもしれない

ICT教育においては、機械が不具合を起こさないというのは前提条件にすぎませんが、機械の不具合を100%なくすことは不可能です。機械の不具合によって、授業のために用意したデータが消えてしまったり、プロジェクターに映し出せなかったりすると、その授業はスムーズに行えず、その後の授業でも予定の変更を余儀なくされてしまいます。

機械の不具合を毎回考慮するくらいなら、ICT教育を導入しないほうがはるかに効率的です。ICT教育を導入する際は、不具合を考慮した授業準備は不要でしょうが、万が一不具合が起こった場合の対応について事前にマニュアル化しておく必要があるでしょう。

教育格差が生まれてしまう

お金の豊富にある私立学校と一般的な公立高校が同じレベルのICT教育を提供できるとは思えません。やはり私立のほうがより充実したICT教育が行えるでしょう。また、都会のほうが地方よりも充実している、といった地域間の格差も生まれる可能性があります。

これらのことは教育機会の平等の観点から良くないことだといえます。私立の学校と公立の学校は学費が違うので仕方ないとしても、地域間の格差はなくさなければなりません。何かしらの対応策を講じない限り、教育に限らず経済など多方面で、都市と地方の格差は広がっていくばかりになってしまうでしょう。

企業で行うICT教育の問題点とは?

情報漏洩の恐れがある

総務省によると、不正アクセスの件数は年々増加しているといいます。また、不正アクセスの被害は気づかれないことも少なくなく、実際に確認された被害以上に隠れた被害があるのではないかと考えられています。

ICT教育ではネットワークを用いるため、不正なアクセスによる情報漏洩の恐れがあります。特に企業では、研修の際も企業秘密が取り扱われることも多いので、情報が漏れた場合は大変な問題となります。企業でのICT教育では、しっかりとしたセキュリティ環境の整備が求められます。

コストがかかる

ICT教育を行うためには、学校教育同様に教育者を育成する必要があります。単にディスプレイとしてICTを用いるだけなら問題でしょうが、タブレット端末を使ったり、反転授業を取り入れたりするには、教育のノウハウが必須です。

それぞれの企業においてICTを活用した教育を研究し、最善の研修を行うことは現実的ではありません。それを踏まえるとICT教育のノウハウは長年その研究を行ってきた企業に頼ることになるでしょう。そうなるとどうしてもコストがかかってしまいます。また、もともとICT機器がない企業は、その導入にも大きなコストがかかります。

ICT教育から得られる効果とは?

・情報活用能力が身につく
これは、文部科学省がICT教育を推進する理由の1つになっています。情報化社会といわれる現代において、自ら主体的に情報を取捨選択する力はもはや必須と言えるでしょう。小さいころから、学校で情報機器を用いることで、その力をつけることが容易になるでしょう。

・生徒の成績が上がる
ICT教育の導入により期待されている、分かりやすい授業が実現されると、生徒の成績向上が望めます。そのためにはICT教育を導入する学校の教員を育成しなくてはいけない、といった問題もあり、これは単純にうまくいくとは言えない状況にあります。

ICT教育についての論文

・反転授業 ICTによる教育革新の進展(重田勝介)
近年、注目を集める反転授業に関する論文です。反転授業とは、スマートフォンなどの機器を用いて予習をし、学校または塾での授業を復習にするという新たな形の授業です。定着度の向上といったメリットもある一方、インターネット環境の整備などが課題になっています。

・中学校教育におけるICT活用の実践事例(中橋雄、戸田就介ら)
中学校でのICT教育の事例を集め、次の3つに類型化しています。教師が授業準備・授業の内容の解説にICTを活用する事例。学習者が学習の質や効率を高めるためにICT活用を行う事例。学習者が情報活用能力を高めるためにICT活用を行う事例。論文ではこれを踏まえて、ICT教育の可能性と注意すべき点について述べられています。

ICT教育を行う学校はどんなところ?

現在では、程度の差はあれどもほとんどの学校でICT教育が行われています。黒板とプロジェクターを組み合わせるという既に普及がかなり進んでいるような取り組みに加え、その学校ならではのICT教育を行っている学校をご紹介します。

ICT教育を行う小学校

・立命館小学校(京都)
体育・社会・英語などにICT教育を取り入れている学校です。体育では、自分の動きを動画で確認できるので上達を早められます。社会・英語では、文書作成能力やプレゼンテーション能力をつけることができます。また、小学校としては珍しくプログラミング学習を行い、ロボット作りの授業があるのも特色の1つです。

・荒川区立尾久小学校(東京)
教育委員会の指定を受け、実践研究としてのICT教育が行われている学校です。電子黒板やタブレットパソコンなどのICT機器を導入し、それらの機器を素早く適切に操作できるようになることを目指しています。他にも、情報モラルの向上や調べる学習でのタブレット端末の有効活用も見込まれています。実践の成果としては、生徒たちの興味関心がより高まったこと、自分の意見を伝え相手の意見を聞くという力が身についたことなどが挙げられます。

ICT教育を行う高校

・宮崎日本大学学園高校(宮崎)
宮崎日本大学高校には、ICTコースが設置されており、エンジニアやwebデザイナーの育成に力を入れています。これまで述べてきたICTを他の科目でも活用するというのとは異なり、情報活用技術やプログラミング学習に特化したICT教育が行われています。卒業後はすぐにでも一般事務やコンピュータ関連業者として就職できるのが強みです。

・北海道立高校
北海道立の高校では、主要5教科に加え、体育、音楽、美術、家庭科と幅広くICT教育が行われています。イメージをつかみやすくしたり、グループでの作業に生かしたり、と各教科でねらいをもってICTを活用しています。教育委員会が主体となってICT教育を普及させている1つの例になります。

タブレットで行うICT教育の問題点とは?

・タブレット端末に依存してしまう
近年、若者のスマートフォン依存が問題となっていますが、学校で幼いころからタブレット端末を用いたICT教育を行うことは、その風潮を助長する要因となりかねません。簡単に時間が潰せてしまうので依存性は高く、依存から抜け出すのは極めて困難です。タブレット端末の活用と同時に、依存対策を講じることが求められます。

・授業が成り立たなくなる恐れがある
先生に聞かなくても調べればわかるということになると、授業を聞かない生徒が出てくる恐れがあります。授業を聞かない生徒が1人でもいると授業の質は低下し、さらに先生の存在や授業の価値が下がっていきます。いずれは新たな形の教育として成り立つことも考えられますが、現状としては授業の形は維持するために何かしら工夫しなくてはいけません。

ICT教育に関するおすすめの本

・日本のICT教育にもの申す!(関島章江)
2013年に出版された本ではありますが、状況はさほど変わっていないように思えます。日本のICT教育は遅れている、という筆者の危機感があらわれた本です。国内の事例を海外のとを比較し、これから日本のICT教育がどうしていくべきかを論じています。

・ほんとうにいいの?デジタル教科書(新井紀子)
この本も出版は2012年で少し時間がたっていますが、今でも議論されるポイントとなっています。ICT教育の中でもデジタル教科書の導入について、メリット・デメリットをそれぞれ挙げたうえで、その導入の危険性を述べています。

・デジタルで教育は変わるか(赤堀侃司)
ICT教育に関する本を多く出版している東京工業大学名誉教授赤堀氏による一冊です。最先端の教育現場での話を交えながら、ICT教育によって変わる教育についてまとめています。現場での取り組みや実際の効果も書かれているので、ITC教育を学び始めるうえで読んでおいて間違いはないでしょう。

ICT活用でより良い教育を

ここまで述べてきたとおり、ICT教育にはたくさんのメリットとそれと同じくらいのデメリットがあります。メリットが大きい以上、有効に活用することが求められますが、デメリットを小さくする工夫も必要となります。

さまざまに対策をとったICT教育は、生徒たちに分かりやすい授業を提供し、考える力をつけさせ、同時に先生の手間を削減する、というように素晴らしいものになります。問題点にしっかりと対処した上で、ICTを導入することが今後の教育に求められているでしょう。

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